平均人間である
何もかもが平均すぎて、少しでも平均より上を目指そうと地味なことをしてしまう
舞の海秀平は頭頂部にシリコンを注入して身長を伸ばした
試験に合格するために
私は力士を目指していて、でも身長がギリ足りない、という程切羽詰まってはないのだけれど
健康診断の身長測定のときは、0コンマ数ミリでも伸びないだろうかと、縮んだSをインテグラルにしようと精いっぱい試みる
お陰で平均よりも1センチ位は上乗せがある
微々たるものかもしれないが、この1センチは大きいのである
合否には全く関係ないが、自分の心の問題である
平均よりは少しは上なんだと言う、ささやかな矜持が持てるのだ笑
自分を少しでも大きく見せようとすることは人間の性なのだろう
いや、人間に限らず、ほとんどの動物に当てはまることだ
《大きい=強い》のだから
小さな小鳥も求愛の時は目一杯羽毛を逆立て、羽根を広げる
人間で例えるなら「魅せられて」のジュディ・オングのように
猫同士の距離感を保ったままの去勢の張りあいなんかもそうだ
人間で例えるなら…いや、これは例えられないけど、池乃めだかのネコ芸は国宝級の名人芸だと思う
昔はチビTなんてものがあり、『子供サイズかよ』ってくらい小さすぎるそれを着るという文化があった
さらにタイトなジーンズに足をねじ込みでもしたら…
いやはや考えただけでも息苦しくなるが
おしゃれな人であれば上がピチピチなら下はダボッとさせてバランスを取ることだろう
とはいえ、ファッションには流行りすたりがあるものの、わたしは流行りに乗れないたちなので、ピチピチでもゆるゆるでもなく、つねにほどほどである
「私は大器晩成タイプなんです」と若かりし日の自分は会話の流れで、当時仲の良かった先輩に言った
先輩が冗談っぽくこう言った
「よくそんなこと言えるな だってそれって いつか自分が成功するってことだろ? 自信ないし恥ずかしくて、オレは言えないわ」
「歳を重ねてなんかしら成し遂げる」的な意味で単純に「大器晩成」という四字熟語をつかったのだが、
そうか、自らを「大器」だと言うこと自体がとても大それた表現なのだなと、その時初めて気がついた
本田圭佑なみのビッグマウスっぷりである
こういうことを何の恥ずかしげもなく言ってしまうところが若さのなせるわざなのだろう
ある意味微笑ましいのだが
チビTが流行った頃、厚底ブーツにルーズソックスも流行っていた
ピチピチとゆるゆる
そして、やはり自分を大きく見せるためのアイテム
ビッグボスこと新庄剛志のあの大きな襟は今どこで何をしているのだろうか
襟というか、シャツか
クローゼットの奥でひっそりとまた出番が来るのを今か今かと待っているのだろうか
(改めて画像で見たら、襟だけじゃなくて袖もビッグなのには驚いた)
あれもやっぱり自分を大きく見せるための仕掛けなのだろうか
「ビッグボス」と名乗るからには、それなりに分かりやすく「ビッグさ」を伝えるために考えに考え抜かれた手段だったのかもしれない
で、襟と袖を大きくしたと…
だとしたらスゴイ発想である
なんでもほどほどの平均人間からしたら全く思いもつかない
やはり新庄剛志は大物なのだ
そもそも大器晩成の「大器」とは人間的な心の器のことなのだろう
ゆっくりと懐の深さを歳を重ねるごとに広く深くしていくようなイメージである
懐の深い力士になりたい
もし私が力士になったなら
四股名はもう決まっている
そう、「関の山」だ
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