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【今週の週末ごはん】#37 東北の郷土料理を日本ワインで〜ぬた(ずんだ)の三色和え、いなり煮、味噌かんぷら、焼きねぎ南蛮醤油に小坂ワイン

先週は台風に振り回された一週間だった。
元々木・金と西日本へ行く予定で、帰りの新幹線が危なそうだと判断した週の初めに旅程はキャンセルしたものの、目的の観劇チケットを不意にするのが心苦しく、現地近くの方にお譲りできないか検討したりでほとほと疲れ、私としては非常に稀な「何が食べたいかわからない」状態に陥ってしまった。一大事である。

故に、今回は当日食べたいものをその日ある材料で揃えた週末ごはん。なんだか郷土料理づくしになった。

◆ピーマンと鰆の天ぷら

この日最も「食べたい!」と思ったのがピーマンの天ぷら。
揚げたてジューシーなピーマンの天ぷらは美味しい。ほんのりとした苦味も美味しさの一部。薄めにまとわせた衣がカリッとするまでやや高音で揚げ、中は青みの残る半生ぐらいが最も美味しい。塩だけでも、つゆにくぐらせても良いが、この日はへべすを。最高である。

私は多分、揚げたてを食べられるなら野菜天の中ではピーマンが一番好きだ。揚げたてでないなら他の野菜と好きさ度合いは変わらなくなるが、揚げたてなら断然ピーマン。
何か魚の天ぷらも食べたくて、揚げるとふっくらして美味しい鰆も。これもへべすが合う。

ぬた和え(ずんだ和え)三種

茹でた枝豆をすり潰したいわゆる「ずんだ(じんだ、じんだん)」を、秋田の南部〜山形の村山(特に山形市あたり)にかけては「ぬた」と呼ぶらしい。郷土料理史の本を読んでいて初めて知った。
私の育った秋田県中央地区では現在はずんだの和え物はあまり見ず、郷土料理との認識もなかったのだが、秋田では枝豆がよく採れるので活用されていても全く不思議はない。また、枝豆の和え物は東北に広く分布し、つくり方と味付けの好みに各地の特色が出る。今回はやや秋田寄りのつくり方をした。

和え衣は、茹でた枝豆をさやから外して正味85gをフードプロセッサにかけ、塩大さじ2/3程度と砂糖大さじ半分程度を加えてやや薄味程度に調味。
これを、以下三種の具とそれぞれ和えた。

・焼きなす細め2本(皮をむき、太めの拍子木切り)
・にんじん1/3本(拍子木切りにして塩茹で)
・こんにゃく小1/2枚(拍子木切りにして下茹でし、希釈しためんつゆで軽く下煮)

茄子を茹でるのではなく焼き茄子にして使うのが秋田のみに見られた特徴で、秋田では他にも囲炉裏を活用した郷土料理が多種あったようだ。納豆もかつては囲炉裏の上方で蒸し焼きにしてつくったりしたらしい。今回は普段焼き茄子をつくる時と同様コンロで丸焼きにし、皮をむいて使った。
にんじんと和えるのは秋田・山形、こんにゃくも山形っぽい。秋田の南部、特に沿岸寄りと山形の食文化は似ている。

三種どれも美味しいが、出色はにんじん。彩りもきれいだし、ちょっと驚く相性の良さなのだ。塩茹でがポイントかも知れない。

それにしても、「ぬた」とはてっきり酢味噌和えだと思っていたが、語源は違うところにあるのだろうか。郷土料理も調べていくと面白い。

いなり煮

秋田の郷土料理。
油揚げを先に煮るのではなく、半分に切った油揚げに生のもち米を詰めて醤油・砂糖で煮、全体に味をつける。蒸し煮のようになるので、もち米のむっちりとした食感が活きてとても美味しい。今回は残っていたごぼうも入れた。

今回の分量は、4時間浸水させて水気を切ったもち米一合、ごぼう10センチ、油揚げ5枚に対して煮汁は水2カップ、醤油60cc、砂糖大さじ1。本来の秋田レシピよりだいぶ薄味(本来は醤油80〜100cc、砂糖は60〜80g)にしてある。

レシピではこれらを平たい鍋に重ならないように並べて一時間煮るとあるが、今回は量が少ないので30分。深さのあるフライパンに並べ、蓋をして弱火で加熱。途中一度上下を返して均等に色がつくようにした。

煮えたてより少し味をなじませた方が美味しい

鳥取〜島根あたりにもよく似た「いただき」という郷土料理があるが、そちらは米以外にも野菜やきのこを詰めて煮る。それも美味しい。
鳥取・島根にはなんとなく親近感を抱いている。秋田もそちらも日本海側の隅っこで、全国的にあまり目立たない県…というのと、食べ物の味にもどことなく親しみを感じる。

◆焼きねぎの南蛮醤油

前投稿にて紹介。
簡単だが美味しいので侮れない。津軽はこのようにキレの良い味付けが上手で、郷土料理にもそうした感性のものが目立つ。しょっつるの味も、秋田のよりもシャープな味わい。


きゅうりと納豆の梅肉和え

ここ数ヶ月は自家製納豆を切らさずつくっている。いろいろな豆を試したが、今は最もスタンダードな大豆のひきわり。大豆を茹でた後、ごく軽くフードプロセッサにかけて菌と和え、ヨーグルトメーカーで40℃24時間。冷蔵庫で一日寝かせると食べ頃。

さっぱりする和え物を、と検索していたら、長野の郷土料理としてこれが出て来た。
縦半分に割って斜め切りにしたきゅうりを塩で揉んで水気を絞り、納豆と叩いた梅干しで和えるだけ。ひきわりの方が食べやすいと思う。海苔で巻いても美味しい。

味噌かんぷら(赤味噌バージョン)

時折食べたくなる味噌かんぷら。今回はアクセントになるかと思い赤味噌を使ってみた。やはり美味しい。味噌かんぷらはいつ食べても美味しいが、じゃがいもをじっくり丸揚げすることだけは外せない。

基本のつくり方はこちら。

おしなべて和食だし、最も合うのは日本酒だろうとは思うが、私は今年の初めに胃腸を壊して以来元々あまり体に合わない日本酒を控えているので、日本ワインを合わせてみた。
秋田の小坂七滝ワイナリーの「ワイングランド」。何度か飲んで気に入っているワインのひとつだ。ここの秋田犬ラベルもかわいい。

山ぶどうの味が好きで、山ぶどうワインはいろいろ買って試したが、ワイングランドは風味が柔らかで角がなく飲みやすい。そして秋田のワインだけあって、秋田を中心とした郷土料理にもいたく合う。

最近は郷土料理や日本の素材を活かした料理の時に日本ワインは良いですね。割とレアな郷土料理週末ごはん、美味しかった。

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