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ベンチャーCFOに期待される役割

「戦略」という言葉の定義や使い方が複数あって会話が成立しづらいのと同様に、「CFO」という言葉も、話し手の経験量・経験の質によって定義が曖昧になる場面が多いと思っています。「資金調達するのがCFOだ」「上場準備をするのがCFOだ」「何でもやってくれるのがCFOだ」など、話し手により色々な文脈や解釈で語られています。

最近ではCFOについて語られるイベントやそのログも見られるようになり、とても有り難い世の中になりました(私自身も非常に勉強させてもらっています)。ただ、「じゃあ結局うちはどんなCFOを採用すれば良いの?」と聞かれると、パッと答えられないとも思っています。そこで、ベンチャー企業のCFOに期待される役割や、どんな人物を採用すれば良いのかについて、少し整理してみたいと思います。(私自身勉強しながら纏めていますので、ヌケモレあるかもしれませんが、その点ご了承ください。また、本記事は随時update予定です。)

ベンチャーCFOに期待される4つの役割

先に答えを言ってしまうと、ベンチャーCFOは会社の役員構成(強み弱み)による役割設定や、会社のフェーズによって期待される役割が変わってきます。まずはCFOに期待される役割を俯瞰して整理したいと思います。

私は、ベンチャーCFOとして期待される役割例として、以下図の通り①ファイナンス、②戦略、③組織、④管理の4分類があると考えています。

①ファイナンスの側面

「CFO」と聞いて一番イメージしやすい領域です。経営者の1人として会社の企業価値を上げるためにどうすれば良いかを考え、その実現のために必要な金策(資本・借入等)を担い、集めた資金を適切に投資運用することが求められます。また、ベンチャーにおいては、上場すべきか否か、いつ上場すべきか、なぜ上場すべきかを考えるミッションも担います。

②戦略の側面

CEOはその役割から社外の最新情報と触れる機会が多く常に情報がアップデートされますが、そのCEOの意図を汲み取り、どのように実現していくかを考える必要があります。また、CFOとしてはCEOが言うことをただ実行するだけではバリューが薄く、CEOの壁打ち相手として物事や概念を整理したり、分かりやすい表現に変換したり、CEOの代わりに行動することも求められます。

更に、どの事業に資源(人・モノ・金)を投資すべきか、はたまた撤退すべきか、など経営の上段から俯瞰して物事を考える必要があります。常に数字を把握し、思い込みによる判断エラーを起こさない役割も求められます。

③組織開発の側面

CFOには、事業と並び重要である「組織づくり」の役割も求められることが多いです。大概CFOが入社したタイミングではビジョン・ミッション・バリューといった組織上重要な概念が整理されていないことが多く、これらの整備が必要となります。これらは設計・設定すること自体も重要ですが、決定と同時に、万が一組織に合わないメンバーが出てしまった場合に、正しく説明をし理解を促進するなど、人事的な対応も重要となります。

またカルチャー作りのためのコミュニケーション設計や、ビジョン・ミッション・バリューに沿った採用基準や人事制度を整えていくことも重要です。「CFO」にはあまり感じない領域ですが、「ベンチャーCFO」として求められることも多い領域です。

④管理の側面

いわゆる「管理部長」的な役割です。上場準備の実務や、会計・労務・法務・総務といった事務作業をリードする役割になります。またPRによるステークホルダーとの関係性の改善も重要になります。

CFOはどの領域から担うべきか

前述の通りベンチャーCFOには4つの役割がありますが、それらは当初CFOではなく、CEOがその役割を担っている可能性が非常に高いです。何故なら、ベンチャーにとって資金繰り/コストは非常に重要であり、1人採用するのに云百万(しかも採用後は毎年人件費が掛かる)のコストを掛けてまでCFOを採用したいと思わず、CEO自らが手を動かすことが多いからです。事業が成長し、組織の人数が増え、CEOが担えなくなった業務を、CFOが担っていくようなイメージです。

従って、「CFOだからコレが仕事です」という正解はなく、その会社が必要としている役割=弱点を把握し、解決していくことが最優先になります。組織づくりが弱ければ “まず” 組織づくりから、ファイナンスが弱ければ “まず”ファイナンスから、というように、臨機応変に対応していくことが必要です。また、CFOは、あるタイミング・フェーズにおいては、4つの領域全てを担うこともあると思われます。CFOを目指されている方には、「これはCFOの仕事じゃない」と言わずに、何でもトライしていてもらった方が良いんじゃないかな?と思っています。

色々なイベントや記事で語られるように、CFOの仕事は資金調達・経営戦略の立案・組織づくりの全てが対象になり、どれも間違っているとは思いません。ですが、それぞれの領域だけを個別に切り出して「これがCFOの仕事です」という訳でもありません。それはCSOの仕事だろ、CHROの仕事だろ、という話すらあるかもしれませんが、役割の定義の問題で、それぞれの業務量や重要性が増せば切り出すこともあるでしょうし、CEO・COO・CFOが引き続き分担することもあると思います。言葉遊びをせずに、CxOとして、つまり経営者の1人として本質的に何をすべきかを考えてパフォーマンスを出していくことが大切です。(1人で抱えきれないほど役割や責任の重さが増えた場合に、必要な領域に必要な役職と人材を充てれば良いと思います)

ちなみに余談ですが、CFOはCxOである以上、経営者として判断、意見、行動することが必要です。例えばCxO=部長的な扱いで捉えたりする記事が散見されますが、経営者と部長では求められる役割が異なりますので、混同しないようにした方が良いと思っています。CxOは会社の経営を担う責任ある立場として常に組織に縛られない全社的な目線が必要ですし、株主などステークホルダーへの社外的な責任も高く、企業価値を向上させるために何をすべきかを徹底的に考え抜く必要があります。一方で部長は組織を作り、組織のメンバーをリードし、モチベートしながら戦略に紐づく戦術の実現に責任を負う役割です。それぞれ期待される役割が違いますから、混同して仕事や期待値にヌケモレを生じさせないことが大切だと思います。一般的に、ベンチャーCFOは経営者でありつつ、部長としての役割も求められることが多いと思いますので、混同されやすいのかな?とも思っていたりしますが・・

どんな人をCFOに採用すれば良いのか?

では具体的にどんな人をCFOに採用すれば良いのか、以下にそれぞれ分類してみました。有名なベンチャー/スタートアップのCFOでも大概どれかに当てはまるかなと思います(一例で、勿論これが全てではありません)。

役割が多岐に渡ることもあり、それぞれの出身や経験によって得意な領域、不得意な領域が出てきます。CFOを採用したいという場合には、先述したCFOの役割と合わせて、採用候補者の得意領域や不得意な領域がどこなのかを見極めていく必要があります。同時に、会社が現在置かれている状況や採用/評価基準に応じて誰を採用すべきかが変わりますので、正しくフィットする人を採用した方が良いと思います。(例:資金調達に困っていればファイナンスに強いCFOを、とにかく管理的な仕事を全部やって欲しいということであれば管理のオペレーションに強いCFOを、上段の経営戦略から一緒に壁打ちして考えたいということであれば戦略に強いCFOを採用する)

なお、成長意欲が著しく経営者になりたいと思っている人材や経営者になり得るポテンシャルのある社内人材の抜擢など、CxO経験は無いがCxOになり得る方にCFOを託してみるのも悪くはないと思っています。

スキル以上に人物面の評価が当然大切


CxOに限った話ではないですが、CFOを採用/登用する場合は、経営陣との相性や人格、組織へのフィット度合い、成長意欲が高く4つの役割を担う気力があるか、企業価値を高めるために視座を高く持ち続けられる思考力があるか、粘り強い交渉力や胆力を持っているかどうかなど、人物面での評価も大切です。CFOはCxOの1人として重要な責任と立場になりますので、スキルを過信して採用を失敗しないよう、しっかり見極めて頂ければと思います。


以上CFOの役割について簡単に纏めてみましたが、どなたかのお役に立っていれば幸いです。ありがとうございました。

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