見出し画像

振り向いて。

まただ。なんだろう、この感じ。うしろから誰かの視線を感じる。神経が背後に引っ張られて振り向きたくなる。でも見ないほうがいい。そんな怯えるような感情も湧いてくる。

私は動けなくなって、じっとその場に立ち尽くす。首筋に一筋の汗が流れる。でもこの汗は真夏の太陽に照りつけられているからだと自分を納得させる。

足音は聞こえない。だけど、誰かが確かにうしろから私に向かってやってくる気配がする。ゆっくりと、確実に。振り向きたい。見たい。怖くても振り向いて、自分の目で誰もいないと確かめて、安堵したい。

じっとりと胸元にも汗が流れてきた。暑い。気持ち悪くて吐きそうだ。このままだと倒れてしまうかもしれない。

私は意を決して首をうしろに回しはじめる。

ギリギリという音が耳の中で響く。振り向いてはいけないと感じる恐怖が振り向こうとする首を押しとどめようとして、音が出ている。

ギリギリ・・・。

ギリ・・・。

力づくで180度、回った頭。私は自分のまうしろを見た。

その目に映ったものは、恐怖におののく人の顔だった。見てはいけないものを見てしまったと目を見開くその人は微動だにできなくなっている。

その人がそれほど怯えている理由は私にははっきりとは分からないけれど、もしかしたら、私は、私の頭が、私の頭だけが、完全にうしろを向いているのかもしれない。



お気持ち嬉しいです。ありがとうございます✨