螺旋と螺旋

すごくすごくゆるやかな螺旋がある。私たちはそのどこかに立っている。自分自身の螺旋上のどこかに。

立っている位置からは、螺旋には見えない。螺旋はあまりにもゆるやかで、直線にしか見えないくらい。

ずっとずっと上の上から私たちの螺旋を眺めたら、その線はたしかにくるくると巻いている。

私の螺旋、あなたの螺旋。世界中のすべての人の螺旋が見える。

直線のような螺旋を少しずつ進みながら私は生きていて、どこかで誰かの螺旋と交わる。

交わった誰かと挨拶をかわす。

「こんにちは」「さようなら」

そうしてまた進んでいく。

だけどときどき交わった箇所が絡まるときがある。

あなたとの出会い。

あなたの螺旋と私の螺旋が絡まった。

人はそれを運命というかもね。

運命のめぐりあわせであなたと私は出会った。

ほかの誰かと同じように挨拶をかわしたあとに、何かどこかが惹かれあい、手が触れあった。心が震えて求めあった。螺旋が絡まっている間のひと時。

一瞬でも離れたくない愛を知る。

このまま絡まったまま、進めなくてもいいから、私をここにとどまらせてほしい。

くるくると絡まりあいながら抱き合う。大切に優しく、ほどけないように気をつけて手を繋ぐ。

大好きなあなたに出会えてよかった。

ねぇ、神様、

ほどかないで。

彼と私の螺旋をほどかないでね。


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