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移乗介助のときに気をつけていること


介護士として5年目が経ち、
経験をさせていただいた施設は
バイトも含め約15施設。

特養、有料、障害者支援施設、デイサービス、グループホームを経験いたしました。

携わった利用者様の数は
大まかに数えて600名以上。

理由は様々ですが、
だいぶ転々としてきたなと思います。

移り変わりが多いことで
新しいことを覚えるのが大変では?
と思われるかもしれません。

確かに、大変でないとは言い切れないです。
それぞれの施設で細々とした違いがあるし、
利用者様一人一人のこだわりも違うので、
臨機応変に対応するのに時間はかかります。

ただ、あるポイントをおさえておけば、
どの施設へ行ってもOJTの段階で
「丁寧に介護ができる人」と
大方の利用者様や職員から
信頼感を持たれます。

そのポイントとは、新卒の時に学ぶ、
「気をつける点」と「基礎」を固めること
です。

実際に私は、新卒の時、
「本当に何もできない使えない人」
だったけれど、

基礎が身についた瞬間から
一気に周りからの信頼度が上がり

最近では「規範となる人」と
もてはやされるまで昇進しました。

今回はそんな私を変えてくれた
「気をつける点」と「基礎」について綴りたいと思います。

今回は「移乗介助」での
気をつけている点と基礎をお伝えします。



★移乗介助とは

基礎や注意点をお話しする前に
「移乗介助とは?」というところに
簡単に触れていきます。

「移乗介助」というのは
その名の通り、移り乗りのお手伝いです。
ベット⇄車椅子など、移動前と移動後の平面が変わる移り乗りのことを指します。
(※マイナビ介護職の文言引用)

似たような言葉で「移動介助」というのがありますが、これは「居室」⇄「リビング」
「リビング」⇄「トイレ」など、
今いる場所から目的の場所へ移動すること
を指します。

言葉は似ているけれど、
意味は全く違うので注意が必要です。

また、新人段階で最も苦戦するのが
この移乗介助です。なぜなら、介助者の身体に最も負担のかかる介助で、最も利用者に危険を及ぼすからです。

基礎を学び、コツを掴まないと
介助者だと、よくあるのが腰痛を発症します。最悪ヘルニアになり、歩くこともできないほど辛い状態になってしまいます。
それだけ、身体への影響がある介助です。

さらに、ご利用者様目線から見ると、
移乗介助はかなり怖いものです。
失敗すると一緒に転倒してしまったり、傷をつけてしまうこともあります。

そんな危険性が背景にあることを念頭に置き、
移乗介助へ挑むようにしています。


★移乗介助の気をつける点

さていよいよ本題の一つ目。
「気をつける点」についてです。
今回は移乗介助でよくある車椅子⇄ベットの移乗介助について特に気をつけている
ポイントを2つお伝えします。


★2つの気をつける点

①移乗する前の
環境整備、基本姿勢ができているか

②無理をしない、できないなら協力を求める


①移乗する前の環境整備、基本姿勢ができているか


移乗介助を行う際にはまず、
「移乗介助を行う前の状態」に気をつけています。
経験を重ねるにつれ「大丈夫でしょ」と
この工程を省く方がいますが、

実は、この準備をおろそかにしているベテラン職員こそが、これが原因で事故を起こすケースが多々あるのです。

それでは、移乗介助を行う前に
気をつけることとは何か。それは…

「環境整備」「基本の姿勢を作る」ことです。


【環境整備】

まず移乗介助に入る前に、
必要最低限の環境整備を行います。

①車椅子をベットに近づけ、アームレストを上げる
②ベットの高さは車椅子の座面より少し高めにしておく
③移乗介助ができる広さがあるか周辺を確認
④床が濡れていないか確認する

①、②は数をこなしていくうちに
自然とできるようになります。 

見逃しがちなのが③と④です。

③と④で起こり得る
リスクを考えてみましょう。

居室に物が多かったり、
またはトイレ内がもともと狭いのに
さらに物が置いてあったりすると…

支持基底面(体重を支える面積のこと)を
十分に取れません。
言い換えると介助者が、移乗介助をするのに十分に足を広げられないのです。 

こうなると、移乗介助で必要な、
「腰を引く動作」ができないため、
利用者様を持ち上げるような
介助になってしまいます。

持ち上げの介助は、利用者様の肩を脱臼する可能性が非常に高まります。
また、私たち介助者の腰痛リスクも高くなります。
これが③のリスクです。


続いて④の床濡れに注意ですが、
これは実際に事故が起きています。

床が濡れている状態で移乗介助を行い、
移乗途中で介助者が滑ってしまい、
利用者様と一緒に転倒したというものです。

移乗介助でなくても、
床は特に注意しなければいけないと思っています。氷で滑るのと同じ現象で、転んだ時の衝撃もかなり強いので、骨折のリスクも十分にあります。

場合によっては頭を打って死亡する可能性もあるので、特に④の床濡れは十分注意しなければいけないです。

………………………
環境整備は思っている以上に、 
介助に影響があります。
自分も相手も傷つけないよう、しっかりと準備を行い、介助に入るよう気をつけています。

【基本の姿勢を作る】

続いて「基本の姿勢」についてご紹介しますが、今回は
「起き上がり前の姿勢」
「起き上がった後の座位時の姿勢」

について綴っています。

………………………………………………………
※ちなみに他にも移乗介助では様々な
基礎的な動きやコツなどがあります。

しかし、大体それらは直に教えてもらって身につくものです。絵や文字では理解を得るのが難しいので、敢えて書いていません。
………………………………………………………

「起き上がり」
「起き上がった後の座位時の姿勢」は
移乗介助の土台であり、要(かなめ)です。

移乗介助の一連の流れの中で
一番気をつけている工程です。

かなり確認する点が多いのですが、
一つ一つ見ていきましょう。

⚫︎起き上がり前

HP介護アンテナさんから画像引用


まず起き上がり前ですが、
絵にある通りです。

・完全な側臥位(横向き)
・股関節を90度に曲げる
・かかとを下ろす
・顎を引く
・膝をベットの端から出す

5つのポイントをざっくり言うと
足を曲げて横向きにする。
そして足を下ろす。

これが、
「ご利用者様が起き上がりやすい姿勢」
となります。

私たちも自然とベットから起き上がるときは
横向きになって、足を下ろしています。
それは自然な起き上がりの形です。

その自然な姿勢を作り、
ご利用者様が起き上がるとき、利用者様自身が起き上がる力を出しやすいようにします。

また、「股関節を90度に曲げる」というのもかなり大事です。これをしていないと座った時に足が伸びっぱなしなので、滑り落ちてしまうのです。

私はこの曲げることを
ストッパーだと思っています。

滑り落ち防止ストッパー、
「これがないと落ちる危険性大」と
常に自分に言い聞かせています。



余談ですが、
施設を転々としていると、色々な職員に出会うのですが…

上向きのまま起き上がりの
介助を行う職員を多く見かけます。

これはNGです。
自然な起き上がりの動きができないため、
ご利用者様も介助者も身体にかなりの負担がかかります。

意外にもこの方法で介助をしているのは
ベテランスタッフに多いのです。

時間短縮のため姿勢作りの過程を
すっ飛ばししてしまうのです。

どこを丁寧に行うか、どこに効率を向けるか
よく見極めたいものです。

私は、特に利用者、介助者双方の身体に影響を及ぼす介助に関しては丁寧さを重視するよう心がけています。

⚫︎起きた時の座位(座ったとき)の姿勢

HP介護アンテナさんから画像引用


次に起きた後の座った時の姿勢ですが、
上の絵の通りです。

・足底がついている
・立ちやすいように足を開く
・膝よりお尻は上の高さになっている
・浅座り
・足を引く(上からみて膝と土踏まず一直線)

この5つはまさに、
ご利用者様の「立つ力を促す姿勢の作り方」
なのです。
これが一つでも欠けていると、
ご利用者様が立つときに
十分に力を発揮できないのです。

そうなると、介助者に全負担がかかります。

自分の体を守るためにも、ご利用者が立てる準備をしっかりとしておきます。

また、ここまで説明して理解されている方もいるかと思いますが、基本姿勢を作ることは、
「自立支援」に繋がります。

ご利用者様の残っている力を活用することで、
廃用症候群などのリスクを防ぐこともできます。

この過程はメリットしかないので、
面倒だと思わず、これからも気をつけていきたいと思う点です。

…………………………

ちなみに、これらの絵の通りの姿勢にするのが厳しい利用者様もいます。(骨折、短時間でも座ることができないなどの理由で)
そんなときは2人介助にできないか
リーダーや他のスタッフに相談をかけます。

大体は相談しなくても、あらかじめ2人介助で対応している施設が多いので、そこまで心配はいらないのかなと思います。


②無理をしない。できないなら協力を求める。

もう一つのポイント、それは
「無理をしない」です。

これは実際の私自身の体を
例えてお話しします。

………………………………………

私の体型はかなり小柄で、
身長は150センチあるかないか。
体重も痩せ型で、健康診断で痩せすぎでB判定をもらったくらい貧弱者です。

まさに、介護をするのに適さない体だなと
自分でも思います。

しかし、こんな体だからこそ、
自分と相手の体格差をよく見て、考えてから
介助に入るか決めるようにしています。

あまりにも体格差が大きければ、
もう1人スタッフを呼ぶようにする。
絶対に無理はしないと決めています。

新人の頃は、助けを呼ぶのをためらい、
申し訳なさと自分のできなさと非力を嘆き、
自身を諦めるような思いでいました。

しかし、経験を積んでいく中で、
「できないこと」自体が重要なのではなく、
「できないこと(=許容範囲)を理解し最善の策を立てる」ことが大事なのだということに
気がついたのです。


身体的な問題でできないことがあるのは
仕方ない。
これはもうどうすることもできません。 

だけど、諦める必要はない。
無理に1人でやる必要もない。

私ができることをすればいい。

それは最善の策を考えること。

最善の策を立てるとはどういうことなのか
例を挙げながら説明します。


(例)
①体格差を知る
→身長168cm体重70kg以上の男性の利用者。
介助者の私は150cmの小柄体型。この人の介助に携わった回数は1回のみ。

②危険性を考える
→1人ではできないことを理解する。

③ヘルプで誰を呼ぶのが適切か考える

→できれば力のある大柄な男の人がいい。
→男性スタッフはAさんと Bさん。

→Aさんは180cmで、がたいもいいが、
新卒で、まだ移乗経験が浅い。

→身長178cm程で、がたいのいい
介護経験10年以上ベテランのBさん

→Bさんが適任だ。

④ご利用者様の残されている力を考え、2人介助の方法を考える

→ご利用者様の状態。体重はあるが、まだ足の力がありギリギリ立つことができる。

→少し立てるのであれば、私も後ろで手伝うことができそうだ。

→私はお尻側の介助に回り、Bさんには前で抱える側を担当してもらう。このやり方で2人介助の提案をしよう。

⑤ヘルプ者に介助方法を提案し相談する。


こんな風に無理だ!と感じた時は
ご利用者様の残存能力や、介助者の身体的な面や能力を考え、一番良い介助方法を考え導き出します。そして、ヘルプの方に相談できるようにしておきます。

新人や新卒の時は、
その場で介助方法を立てるのは
難しいと思うので、
最初からヘルプをしてくれる介助者に相談するのもいいです。

ただ、経験上、ある程度年数が経つと
「どうする?(どうやって介助する?)」と聞かれることが多いです。

新人期間を終えたら、自分で介助方法を考えられるようにしておいた方が良いのかなと思います。


なるべく利用者、介助者双方に大きな負担がかからないよう常に意識づけるよう心がけていきたいです。

また、「できないことはダメなことではない」と自分によく言い聞かせるようにして、
無理をさせないように自分で自分にセーブをかけることも大事にしています。


★介護はチームワーク

以上が移乗介助で「私が気をつけている2つのポイント」でした。長々とここまで読んでいただいてありがとうございます。

こう見ると、これだけでも移乗介助は確認することがものすごく多いです。
新卒の頃は覚えるのに苦労しました。

移乗介助に入る前に
メモを読んで、一つ一つ確認しながら
やっていたことが懐かしいです。

そういえば、移乗介助が苦手すぎて、
新卒の頃はよく先輩や同期に練習台になってもらい何度もトライさせてもらっていました。

そしていざ、ご利用者様の介助をやるとなった場合には、自信がつくまで先輩に何度も見てもらっていました。

あのときは先輩の時間を奪いに奪ってしまいましたが、それが今に生きているので良かったです。

……………………

無理をしないという点では
先輩に遠慮して助けを呼ぶのをためらい、
よく無理をしていました。

しかし、あるとき
介護は…特に施設ではチームワークが鍵であることに気がつきました。

当たり前のことですが、
介護は1人で乗り切っているのでなく、
職員みんなで、一日を乗り切るものです。

助け合い、支え合いながら
ご利用者様の一日の介護をしています。

できないことは補い合う。
それでいいし、それが当たり前で理想。

助けてもらったときは、その分は
次その人の分を他で支えればいい。
ということを多くの経験から実感し、学びました。


★新人・新卒の特権

最後に、これから介護に初めて携わる
新人・新卒の方へ、

新卒・新人の特権を思う存分使ってください。

この特権には期間があります。

期間は徐々に薄れていきますが、
最初の3ヶ月は確実に期限有効です。


新人期間の特権。それは
「できなくて当たり前」です。

だからこそ、
ある程度失敗をしても、
ゆっくり動いていても、許されます。

この期間中であれば、
「遅い」と急かしてきたり、失敗したことに対して激怒してくるような先輩に遭遇したとしても、上に報告すれば先輩に指導が入ります。

まさに、この期間中は
できなくても許される。

「先輩の目が優しい期間」なのです。

この与えられた権限を活かして、新人・新卒さんは、確実に、安全に介助をできるようになってもらいたいです。

この期間は質問もしやすいし、
「こんなこともわからないの?」と怖いことを言われることも基本的にはありません。
今の時代の介護施設は、人手もなく、会社も必死なので昔よりかは優しいはずです。

新人・新卒さんはできない、わからない
が当たり前です。

だからこそ
たくさん学び、取り入れ、練習を重ねて、
基礎を叩き込むことに専念してほしいです。

移乗介助では特に
それが大事になっていきます。


基礎を叩き込む方法として、最初のうちは
視覚、聴覚に叩き込むよう意識して、メモを見ながら声に出して一つ一つチェックするのがおすすめです!

面倒だなと思うかもしれませんが、
これを繰り返していると、自然と身体に染み付いていきます。

こういった「面倒なこと」を新人のうちにやっておくと、後でその恩恵がもらえます。

今5年目となる私ですが、そのメモが嫌なほど頭に染み付いているので、自然と丁寧さが身についています。

そして、介護士としての信頼度が高まり、
どこに行っても臨機応変に対応できるようになりました。

また、もう一つおすすめとしては

先輩たちからしつこいと思われるくらい
アドバイスを聞いてください。

もう同じこと何度も聞いたよ。
と思うくらい、聴いてください。

その恩恵は
独学以上に強いもので、
最強の武器になります。

何度も、何度も繰り返し聞くことが大事です。

ぜひ、嫌というほど聞いてください!笑


以上、
新人さん、新卒さんに
お伝えしたいことでした。

こんな偉そうにつらつら書いていますが、
私もまだまだ先輩や同期の方、新人さんから教わることがいっぱいです笑

それもまた助け合いということで
よろしくお願いいたします。

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