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ブラックパンサー/ワカンダフォーエバー【映画感想】

 この記事に興味を持って頂きありがとうございます。まずネタバレなしの感想はこちらです。

■どんな映画?

  • MCUフェーズ4最後の一作。「ブラックパンサー」の続編であり、主演であるチャドウィック・ボーズマンの逝去による影響を大きく受けた作品。

  • 作中でもティ・チャラは亡くなり、喪失感と無力感に苛まれた妹シュリがワカンダの新たな問題に向き合う物語が展開される。

  • 新キャラとして、海底帝国の王「ネイモア・ザ・サブマリナー」と自作のパワードスーツを駆使する少女「リリ・ウィリアムズ」が登場し、物語の中心として活躍する。

■良いところ

  • ストーリーは重く陰鬱だが、どこへ向かうのか分からないハラハラ感やテーマ性は良い。

  • 水中の描写は見事でネイモアも面白いキャラクターに仕上がっているし、全体的なアクションも良かった。

■良くないところ

  • 状況から仕方がないとは言え、少し浅慮な登場人物たち。

  • 強いて言うならのレベルだが、「ブラックパンサー」の登場シーンが少ない。

■あらすじ

 サノスとの決戦からしばらく、ワカンダは節目の時にあった。国王であり守護者ブラックパンサーでもあるティ・チャラが病に倒れたのだ。妹であるシュリは兄を助けるべく失われた「ハートのハーブ」の再現を目指すが奮闘虚しく彼はこの世を去ってしまう…
 一年後、王不在のワカンダに埋蔵されたヴィブラニウムを狙い大国が暗躍を始める中、アメリカはこの鉱物を探知する機器を入手し海底に反応があることを知るが、それを危惧した何者かに襲撃を受け調査隊は壊滅する。
 それと時を同じくして、ワカンダで一周忌の儀式を行うシュリとラモンダ女王の前に、水中から異様な男が現れる。ヴィブラニウムを身に着けたその男ネイモアは、件の機器を開発した科学者の確保と受け渡しをワカンダ側に求める。明らかに危険なネイモアを前に守護者を欠くワカンダは要求を飲むしかなかった。
 ワカンダに恩のあるCIA職員エヴェレット・ロスから情報提供を受けたシュリと親衛隊長オコエはその科学者、正確には工科大学の学生である「リリー・ウィリアムズ」の技術力の高さに驚かされつつ説得にあたるが事態は予想外の展開へと進み出す。国家、民族、家族、様々な因縁が渦巻く中、ワカンダは、そして残された人々はどこに向かうのか。

■感想など

 チャドウィック・ボーズマンの逝去という現実を前に、この映画の制作は色々な苦労があったのだろうなぁ。なんて思ってしまうほど、今回の物語は重苦しかった。
 正直なところ、本作はいままでのMCU作品の中で、一番ヒーロー映画というものから離れているような気がする。そもそも序盤からしてそのヒーローが死ぬところから始まるわけで、英雄も才媛も結局のところ死からは逃れられないという、当然とは言え辛い現実を改めて突きつけてくる。
 ただ、それが悪いことなのかと言われれば、決してそんなことはなくて、本作の独特の雰囲気。喪中の悲しさと、悲しみに暮れる暇すらない慌ただしさというのをよく表現できていると思う。

 そう、喪中というのは本当に慌ただしい。悲しんでいる暇もなく、様々な書類を書いたり出したり、お役所でたらい回しにされつつ手続きをして、保険金や預貯金を動かすのには委任状とか戸籍謄本とかが…
 まぁそれはいい、だって、大国に秘密裏に攻め込まれたり、そのせいでこれまで隠れていた海底帝国のの怒りを買ったりしたわけではないからね。

 ただ、そのせいで前作までは割と明るい一面を見せていた主要人物とワカンダという国が、かなり落ち込んだ暗い印象になってしまった。

 まず、兄妹の母であるラモンダ女王はこれ以上の犠牲を出したくないという気持ちや、国を守り抜くという思いからやや暴走気味になっている。
 シュリも兄を救ってくれなかった伝統への反発を深める一方、その根幹にある自身への無力感に苛まれているうえ、中盤でラモンダがネイモアの手にかかると、その無力感と悲しみは怒りに転換されてしまう。
 そしてもう一つ、ネイモアという人物自体も大きな爆弾と言える鬱屈とした思いを抱えていて、この3つの爆弾がどのように因縁の根を深め、絡めていくのかというのが見どころと言えるだろうね。

 このネイモアというキャラクター、本作のヴィランにして影の主人公とも、キルモンガーとは別の観点からもう一人のティ・チャラとも言える面白い存在に仕上がっていると思う。
 ティ・チャラとの大きな違いはその動機で、彼が様々な騒動の末に独立的地位を確保しつつも協調、相互援助を重んじたのに対して、ネイモアは王として数百年を生きてなお、地上人類への怒りを捨てきれず、いまだに憎悪を静かに燃やしている。
 その点に関してはキルモンガーとも似ているかもしれないが、生まれながらの権利や地位を放棄させられたキルモンガーと、生まれたときから帝王たるネイモアとではやはり話が変わってくる。

 だから仮にキルモンガーがワカンダを手中に収めていたとしても、ネイモアとワカンダはぶつかっていただろうな、なんて考えてしまった。
 もしくはティ・チャラならばネイモアと激突しつつも、最終的に彼の凝り固まった憎しみを解いていたかもしれない。彼がいればそもそも大国に狙われることもなかったかもしれない。

 彼がいれば…         
  ティ・チャラが生きていれば……
      ブラックパンサーが健在ならば………

 我々がそう感じるように、きっと登場人物たち、そして演者の皆さんも脚本書いた人(この人は特にそうだろう)もそう思ったに違いない。だが、いないものはいないのだ、これはそういう物語なのだ、と先に進むしかない。  出来ることと言えば、故人の足跡を追い、想いを馳せることだけ。その点においては母を失ったネイモアも、他の登場人物と同じと言えるのかもしれないなんて考えたり。
 とそんな感じで、主要な登場人物の殆どが「死者への想い」という同じものを原動力にして、親しい人を守る為に動いているのだが、まぁー噛み合わない。この噛み合わなさはちょっと笑えてくるレベル。

 その点が本作の良くない点の一つに繋がってくる。なんというか、全体的に浅慮的な行動が目立ってしまうんだよね。

 まず、ネイモアに関してはやることなすこと場当たり的というか利己的というか、とにかく視野が狭い。
 ヴィブラニウム探知機と発明者を生かしておけば、これまで秘密を守り通してきた海底の帝国の存在が露見する。という悩みは確かに分かるし、同じ悩みを持ちつつ表舞台に出たワカンダに発明者を確保するように依頼するというのも分かる。
 ただ、実際に確保したワカンダ勢を不意打ちで襲って、説明もなく殺しにかかるってのはどうだろう。ただでさえワカンダに警戒されている状況で、そんなことをすれば成功しても失敗しても戦争という最悪の結果になるって普通に考えれば分かると思うのだが。
 結局、シュリが直接相手のところへ出向き交渉するというギリギリの手段(これも悪手だとは思うが)を取ったことで、少しだけ開戦まで時間が出来たけど、とにかく自身の力を過信しすぎている。

 本作はそこからどんどんと怪しい展開が続いていく。上に書いた通り、一国の王女であるシュリが何も相談なく(まぁ相談する余裕もなかったが)敵国に出向く、というか捕虜になるわ。
 そのせいでラモンダ女王は大荒れして、ワカンダの最高戦力であるオコエを軍部から問答無用で追放するわ(大見得切っての失態だから分からんでもないけど)。
 救出に向かったナキアは敵国の民間人に発砲したうえ、手当をしようとするシュリの言い分を聞かず引き剥がして見殺しにするわ(単身潜入で余裕はなく、オコエが勝てなかった相手とは言え。短絡的ではないだろうか)
 そしてネイモアはシュリを味方に引き込もうとする一方、時間稼ぎのために打って出たラモンダを恫喝するわ(味方につけたいのか喧嘩売りたいのかハッキリしてくれ)。
 その割に女王を殺したあとに、味方につくかどうか一週間で選べと中途半端な選択肢を提示してくるわ(どう考えてもこの状況から味方にはならんでしょ)。

 主要人物が取るあらゆる選択が、最悪の結末への道を突き進むように誰かにコントロールされている。そんな違和感がある展開が続いていくんだよね。なんかもういっそのこともう一人黒幕がいて、そいつが裏を引いていてくれたほうがまだマシだった気がする。
 この「思考よりも感情を優先する」登場人物の行動には問題もあるのだけど、上に書いたように本作の独特の不穏な雰囲気を構築することに一役買っているとも思う。
 それに大切な人が亡くなり、次の危機が迫っているという切羽詰まった状況だから、ある程度の説得力はあると言えなくもない。だからこそもう一人、この状況をかき回している黒幕がいても良かった気がするんだけどね。大国関係も殆ど外様だったし。

 登場人物の暴走については、そもそも根本的な問題として、リリちゃんは仮に作れるのだとしてもヴィブラニウムの探知機なんてものは作るべきではなかったのでは?というのもあるのだけど、これはこの作品のコンセプトというかテーマに関係があると個人的には考えていたりする。

 そのテーマというのはちょっとカッコつけた言い方だけど「意志の継承」なんだろうなと思った。
 まず、リリーちゃんの自身の才能や制作物がどういった結果を生むのか想像できていないというのは、インセンと出会う前の才能に酔っていたトニー・スタークと本当にそっくりだと思う。彼女が自身の持つ才能と責任に対してどう向き合っていくのかは楽しみではある。
 そしてシュリに関しても父親の復讐に燃えるティ・チャラを彷彿とさせる部分があって、彼が気高い王になるまで紆余曲折あったことを反映したように、本作は「ブラックパンサー」という象徴が登場するのが非常に遅い。

 その点を考えると、ネイモアもまた発展途上のキャラクターということになるんだろうけど、うーん。今回の所業を考えると、どう転がっても正統派のヒーローにはなれないだろうなぁ。という謎の安心感があるのがいっそのこと面白い。この面白さはロキさんにも通ずるものがある気がする。そしてハルクに通ずるかませになれるポテンシャルもありそう。ネイモアくん、カーンと戦ってみる?

 いやぁ、さっきも書いたけど、このあんちゃんとにかく突っ込みどころが多いんだよなぁ。ラストに関しても、ワカンダがピンチになったらこっちを頼ってくるだろうっていう推測はちょっと考えが甘い気がするし。ブラックパンサーは陸の世界では最強という旨の台詞も少し首を傾げざるを得ない(個人としては超人の中では並、国家という規模感で言えば強いが、それでも大国と対等の力は今は持ち合わせていないよね)。
 国家規模ではともかく、個人規模では大国からの介入を受けそうなワカンダを助けてくれる連中は結構いるはずで、恩があるホワイトウルフさんもそうだし、今のキャプテン・アメリカだって立場はあれどその信条からすればワカンダを見捨てはしない。リリちゃんだって今後どうなるかは分からないけど黙ってはいないはず。

 そもそも、サノスの指パッチンがあったときこいつらは何してたのよ?っていう疑問もあって、ネイモアが基本的に自国民のことしか興味ないスタンスだったとしても、サノスと戦いもせず地上と宇宙の人々が問題解決するまで指くわえて待ってましたはダサすぎるよね。一応言い訳していたエターナルズがまだマシに見える。
 まぁ、ブラパン最強!ってなっていたのを見るに、ネイモア自体が消えていたと考えるのが妥当だろうか。完全にワンマン経営の国だから、トップが消えたら大混乱だろうし。
 ここまで空回ったネイモアがなにかの拍子に地上人へのわだかまりを解くようなことがあれば、それはそれで面白いとは思うんだけど、まぁしばらくは無いだろうなという謎の安心感もある。

 話を少し戻すけれど、結局ネイモアの傲慢な行動により母親をも失ったシュリは、ようやく復元できたハーブを使いブラックパンサーとしての能力を得る。
 ハーブの効能で一時的な臨死状態になり、そこで祖先、会いたい人と束の間の語らいをする。という前作でもあったシーンなのだけど、ここからが本作最大のサプライズになる。
 出てくるのが母親であるラモンダでも、父親や兄ですらなく、よりにもよってワカンダに騒乱をもたらしたキルモンガーだったのだ!

 キルモンガーはシュリが復讐、それもネイモアだけではなく世界への復讐を望み、その点で一番近い自身を呼び出したのだと告げ、シュリはそれを否定する。
 否定したものの、臨死から復活したシュリはこれまで以上にピリピリとした雰囲気を纏い、パンサーのスーツも兄のそれではなく、どことなく従兄弟のものも彷彿とさせる金色の装飾が施されたものを選択する。
 おそらく、ここまでに観客が感じてきた不安はここでピークに達するはず。どんどんと悪い方向に流れてきた物語が最終局面になり、シュリは兄と同じヒーローへの道を進むのか、それともまさか本当に復讐の鬼に堕ちてしまうのかと心配にならざるを得ない。

 これはこの映画のエンターテイメント性というか、どこに進むのか分からないハラハラ感の極地だと思っている。登場人物の暴走で悪い方向に進む本作の物語をジェットコースターだとするなら、上がりきってこれから落ちる直前といったところ。
 そこからのシュリはエムバクからの忠告を撥ね付け、アイアン・ハートMk2やミッドナイトエンジェル(真夜中の天使ィ!?)を作りあげ、しまいにはネイモアの生理的特徴を分析し、完全に殺すつもりで対策を取る。
 そして実際の戦闘においても、容赦なく兵士たちを薙ぎ倒して、ネイモアをドライサウナに閉じ込め、足の羽を引き千切り(オレちゃんあのときのネイモアの顔はしばらく忘れられないね)、火炙りにして、とヒーローらしからぬ残虐ファイトが続いていく。
 お互いに満身創痍になりながらも、遂にシュリはネイモアの槍を持ち、倒れた彼にトドメの一撃を…刺すところで、どこからかラモンダの声が聞こえ踏み止まる。ジェットコースターは速度を落とし、観客はほっと胸を撫で下ろすような気持ちになるわけだね。

 本作の良いところとしてこの「ハラハラ感」を挙げた手前、ここまでギリギリのラインを攻めた事は称賛すべきなんだろうけど、個人的にはもう少し立ち直りが早くても良かったかなとも思う。
 だってこれはブラックパンサーの映画であってパニッシャーではないのだから、復讐の為にどんな手を使うヴィジランテではなく、異文化世界ワカンダの王である高潔なヒーローを見たいのよね。
 結局、本作で超人としてのブラックパンサーが登場するのは物語の後半にようやくで、本当の意味、つまりヒーローとしての登場という意味なら終盤の一瞬でしかない。だからちょっと物足りない思いがあるのも確か。

 例えば、周囲の説得に耳を貸し、殺すためではなく、対話のための時間稼ぎとして、科学的なアプローチで彼らの弱点を突き行動を阻害する。
 一対一の状態に持ち込んだのも、あくまで交渉のため、だから例えそれが難しくとも、不殺の立ち回りを目指す。ただネイモアも手強く、戦ううちに復讐心が再燃し…
 とかだったらシュリちゃんの成長が見られるし良かったかも。まぁ尺が足りないな。ただでさえ長い映画だし。

 繰り返しになるけど、本作はチャドウィック・ボーズマンの逝去によって、おそらく当初の予定とは大幅に内容が変わっているのだと思う。
 その影響で、本作独特の雰囲気が作り出され、残された人たちが、愛する人のいない世界でその人たちの足跡を辿る。という特別な物語に仕上がっているのも確か。
 だけど、シュリもリリーもネイモアも、まだまだ道半ばという印象で、これからどう転ぶのかという不安もまだまだ残されているし、アメリカなどの大国の動きというのも本作では解決されず大きな懸念事項になっている。  だから、その不安感を少しでも拭い去るためにも、シュリはもう少し早く復讐を捨ててくれても良かったような気がするんだよね。

 メタ的な話をすると、サム・ウィルソンがキャプテン・アメリカとして主役を張る次の映画に繋がるのだろうかね?「ニューワールドオーダー(新世界秩序)」という副題からしても、本作のワカンダ関連の動きは見過ごせないような気がする。

 さて、ここまでこき下ろしてきたネイモア及びタロカン帝国に関しては、悪いことばかりではなく、アクションや水中撮影は素直に見事だったと思う。
 ここで本来比較として出すべき材料はDCの「アクアマン」なんだろうが生憎未見なので具体的な話はしにくい。だけど、きらびやかな熱帯の海にあるサンゴ礁に囲まれた王国というあちらのイメージに対して、静かな深海に沈む神秘の帝国といったように異なる印象を作ることが出来ているんじゃないかな。
 ある程度CGによる補助はあるんだろうけど、ボールを蹴って遊ぶ子どもたち、活気のある市場、意外とフレンドリーな住民、こういった要素の中にある異国感たっぷりの営み。これを水中でやっているというのは見ごたえもばっちりだった。

 ネイモアのアクションに関しては、足首の羽を使った躍動感のある飛行、いわゆる空中ジャンプ的な動作は素直に面白いと思う。確かマントのないストレンジが同じような動きをしていた気もするけど、あれは空中に足場を作ってるし少し違うよね。
 まぁ、ベースは良いと思うのだけど、本領発揮であるはずの水中戦というのは本作では描かれなかったし、武器も槍と水爆弾だけと少なく地味なのも否めない。
 何か色々と権利関係の問題があるらしいとも聞くんだけど、やっぱりもう少し活躍を見たいから単独映画ないしドラマで再びフォーカスが当たる日を待つしかないかなぁ。

 地味とはいったものの彼らが多用する「水爆弾」、これは手榴弾サイズのボールにおびただしい量の水が圧縮して内包された兵器だと思われるのだけど、これに関してもスローモーションを併用した見せ方は素晴らしいし、私達日本人も特によく理解しているであろう水の恐ろしさをよく表現している。
 溺れるというのは、本能的な、あるいは原始的な恐怖であって、その点で言えば、水というのは生きるのに必要と同時に危険なものでもある。一方で彼らにとっての水は陸生動物以上に生命の源でもあって、最大の味方でもあるわけだ。
 そういうスタンスの違いとしての表現だったり、水を陸の人に対する兵器として運用するまで練り上げたという、タロカンの強さと地上に対する底知れない憎しみをよく演出していると思う。

 その他のキャラクターの動きに関してもワカンダ勢やタロカンの精鋭などフィジカルで戦う者、アイアンハートやミッドナイトエンジェル(真夜中の天使ィ!?←吹き替えのこのセリフ本当に好き)などのテクノロジーを使う者と分かれて入り乱れるので、これは見応えがあって面白かったかな。

 と、ここまでが鑑賞当時の感想。ここからが「アクアマン」を見た上での感想になる。記事はこちら。

 あちらでも触れたように、優劣をつけるべきではないけど、比較してみること自体は面白いことだと思っている。なので、幾つかの面から改めて振り返ると、同じ海を舞台にしているとはいえ全く異なる表現がされていたね。

 海中の描写に関しては、確かにあちらはきらびやかなんだけど特殊なフィルターをかけて覗いている感覚で、こちらは暗闇の中を懐中電灯で照らしながら見るような感覚に近い。
 街全てが煌々と光り輝くアトランティスと、ネイモアが作り出したとされる人工太陽しかおそらく光源がないタロカンという対比も面白いね。インカ文明の太陽信仰の名残なんだろうな、なんて考えてみたり。
 ほとんどすべての国民が地上人類以上のフィジカルを持ち技術的にも優れているのに、あえて地上に干渉しないアトランティスと、ヴィヴラニウムとネイモアの存在で優位には立っているものの自国の繁栄と生存を第一目的にしなければいけないタロカン。絶対的な君主の有無という点でも違っているね。

 街並みや国家としての在り方など比較してみることで、改めて浮き彫りになるものがあって面白かった。「アクアマン」自体も想像以上に面白い映画だったのもあって有意義だったと思う。

■まとめ

 シリーズの象徴であるチャドウィック・ボーズマンの逝去という前代未聞の事態に見舞われた本作からは、その影響を様々な面で強く受けている印象を改めて受けました。
 現実の私達と同じように、作中人物も悲しみに暮れ、それでも進まなくてはいけない状況にあるわけですが、こういった感情を抱え過ぎると人は中々冷静な判断ができなくなってしまうものです。シュリやリリー、そしてネイモアすらも死者の意思を引き継ぎ、周囲を守るために戦っているのですが、上手く噛み合わない本作のやや暴走気味なストーリーはその事を表しているようにも思われますが、この独特な雰囲気は特出したものであり、物語を特別なものに仕上げています。
 ブラックパンサーの登場があまりにも遅いなど、物足りない部分も多々あるのですが、彼女たちはまだ死者の足跡を追う道半ばですから、再登場と活躍にも一層期待したいですね。  あ、そうだ、最後にこれは言っておかないと。

ワカンダ・フォーエバー!

ワカンダ・フォーエバー!

ワカンダ・フォーエバー!


■余談

 ここまでお読み頂きありがとうございました。ここからは余談です。

 素朴な疑問ですが、海に落ちたヴィブラニウムは、ワカンダに落ちたものより強靭なんですかね。
 というのもネイモアの槍はワカンダの建物や戦闘機、おそらくヴィブラニウム製のものをやすやすと破壊している描写が多々あるんですよね。
 確かキャップの盾にティ・チャラが爪を立てたときは塗装こそ剥げたものの傷は付いていなかったような。それに前作でもヴィブラニウムで作られたパンサーのスーツ同士での戦いになったせいで互いに決定打がなかったんじゃないっけ。ヴィブラニウムにはまだまだ謎が多そうだ…

 あと、今回の見出し画像については…色々と試行錯誤したんですけど、なんかあまり上手くいかなかったので、それっぽいフォントにそれっぽい色合いのパターン画像を背景に置きました。省エネ仕様。
 一応「ティ・チャラの死」という本作最大の要素を念頭に、あまり派手すぎないものにしようという意図があります。

◆MCU全体としてのポイント

・ティ・チャラ、未解明の病によって死亡。どうか安らかに。
・その妹シュリ、ハートのハーブによってブラックパンサーの力を得る。 NEXT→?
・タロカンの帝王ネイモア登場。他のタロカン人と異なる「突然変異」の可能性が語られる。 NEXT→?
・リリ・ウィリアムズ、ワカンダに身を寄せるも事件後帰国。制作したスーツはワカンダ預かり。 NEXT→「アイアンハート」
・エヴェレット・ロス、ワカンダとの内通による国益侵害で逮捕される。NEXT→?
・オコエ、なんだかんだ気に入った「ミッドナイトエンジェル」を装備してロスを救助。 NEXT→?
・これまで暗躍していた謎の女性こと「ヴァル」、CIAの人間でありロスの元嫁であると判明。NEXT→「サンダーボルツ」?



・ナキア、故国ワカンダを離れ、ティ・チャラの遺児と静かに、そして穏やかに暮らす。

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