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身内に要介護者がでたとき本職は意外と無力だ

夫の伯母の認知症が進んできた。
私たち夫婦にとってはあまり交流のある家ではないが、義母はよく連絡を取り合っているらしい。
いとこも伯父伯母も多い家系だ。
コロナ禍も相まって冠婚葬祭以外での交流はあまりないせいで、人数が多すぎて毎回誰が誰だかわからない。
新参者泣かせだ。

誰か顔写真入りの親戚名鑑作ってくれ……

伯母の身の回りを取り仕切るいとこはわたしよりいくらか年上で、子どもたちも一世代上だ。
夫妻共に社会福祉とは縁遠い職業で、伯母を施設に入れる段になって戸惑うことが多いらしい。

  • 誰に相談する?

  • どこの窓口に行けば良い?

  • 費用の目安は?

  • 母(わたしにとっては伯母)に合う施設とは?

  • 年金と貯蓄で足りるの?

  • 施設の種類が多すぎてわからない

などなど……

わたし自身、曾祖母が介護施設に入ったくらいしか身内の介護経験はない。
それも祖母や大叔母が主体でわたしは横から口を出した程度の経験だ。

老人介護の現場に立つ人間が、在宅から施設介護を検討している人に対してできるアドバイスというのは限られている。

というのも、現場の人間は心身の介護・援助を行う。
そこに相談業務や経理や家族とのやりとりはあまり含まれていない。
あくまで現場は現場だけ見ているので、自分の施設の入居料や諸経費、日用品の単価を知らないことも少なくないのが現状だ。
重視されるのは施設のなかでどう過ごせるかであって、在宅から現在までのプロセスはケアマネージャーや相談員を通じて必要な分だけ現場に提供される。

つまり、在宅から施設入居までの過程を、多くの介護士は知らないまま働いている。
知ったほうがいい。然るべく。

だが、伯母の介護施設を検討していると義母から聞いたとき、わたしがいとこ対してなにができるのか考えて無力感に襲われた。
入居まで段階がすすめば必要な物品のアドバイスはできると思う。

子ども用のお名前シールやスタンプがあると良いよ、とか。
クリーニングが必要な衣類は持ち込まないほうが良いよ、とか。

介護士ワンポイントアドバイス

でも施設介護に従事していると、基本的に選ばれる側だ。
自分から施設を選ぶのは転職するときくらい。

あれ、わたし、意外と役に立たなくね?

ヤヴァイ。無力だ。
相談業務に従事していないと、外部窓口との接点もない。
なあんにも知らない……

15年も居座って酸いも甘いも噛み分けてきたつもりだったが、介護の世界は広かった。
わたしが知っている世界はほんの片隅の一雫だけ。
家族の葛藤も悲しみも不安も安堵感も知りたいことも、わたしたちは深く知らない。

介護って、深い。
どこまでも深い。
そりゃそうだよね、人ひとりの行き先を決めるんだから。
人ひとりの人生の終焉を支えるってことなんだから。

夫とふたりで考えて、義母にいとこへの伝言を頼んだ。
夫も広い意味で社会福祉系の仕事で、施設やケアマネージャーには顔が利く。

相談する相手がいなかったら声をかけてね。
心細いと思ったら呼んでね。
一緒に考えることはできるから。

いとこへの伝言

これでいいんだろうか?
いやぁ。まだまだ、足りなかった。
介護にこれでいいは、なかった。
誰を主役に考えるのかで物の見方が反転することに今ごろ気づく。

わたしはきっと自問自答するだろう。

この介護は──
利用者本人の目線から見る?
家族の目線から見る?
ケアマネージャーの目線から見る?
第三者の目線から見る?

自問自答する綾瀬

どの目線から見ても正解はない。
多角的な介護とはよく言うが、当事者が利用者だけではないことを、伯母といとこを通して改めて感じた。

本職は、案外、マジで、無力だ。




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