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ミヒャエル・ハネケ特集

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ミヒャエル・ハネケの作品についての記事をまとめてあります。彼の映画の意図とそれについての私の批評、また社会に対してどのような意味を持つのかなどについての考察を綴りました。
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2024年1月の記事一覧

城 / ミヒャエル・ハネケ

城 / ミヒャエル・ハネケ

「カフカの小説を原作にしていて、監督がハネケだ、悪かろうはずがない。」という強い確信を持て見た映画であったが、果たして結果はその通り、否、シーンによってはそれ以上と言わねばなるまい。まず1つ目はウルリッヒ・ミューエとスザンヌ・ロタールが初めて出会い寝るシーンである。2人はどこで寝るのか。薄汚い酒場のカウンターの裏の床で寝るのだ。それはカウンターの裏に隠れているミューエの胸の上に、ロタールがハイヒー

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71フラグメンツ / ミヒャエル・ハネケ

71フラグメンツ / ミヒャエル・ハネケ

血はゆっくりと流れる。時はゆっくりと流れる。ほとんど止まっているかのように。死にかかった生き物の呼吸のように。

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主人公が卓球の練習をするシーンがある。背景の壁は、灰色だ。彼はただひたすらにラケットを振る。機械によって一定の間隔で飛んで来る球をひたすら打ち返す。「モダン・タイムズ」でチャップリンは軽やかに面白可笑しくこれを皮肉ったが、彼の表情は変わらない。そもそも卓球は仕事ではなく、学業

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