現在の話(日本の成長力を産み出す日本人という存在)

　父や母は、ただその身を目の前にあることに投じてきた。彼らは、何を考えているのだろうか。
　独白の舞台が幕を開けるかのように自分の意識の中に問いかけること数回、私の答えは、分からない、である。
　父と母の人生を間近で見てきたつもりであった。しかし、小難しい専門書を読んでいるように分が理解できても、文と文からなる文章が理解不能であった。父や母の立場からすると、彼らの中ではそれぞれに感情が働いているおかげで論理的な断線は見当たらない。しかし、私は、父と母の子でありながら彼らを知らない。彼らの人生に対して鮮明な部分と不鮮明な部分が現れる。
　個と他は、違う。しかし、共通項が道を照らす。いろいろな角度からスポットライトが私を照らす。私の全方位にスポットライトの数だけ影が伸びる。父と母の近くに寄ってみると、彼らに向けられたスポットライトと私に向けられたスポットライトが交差し、影が消える。