見出し画像

【散文詩小説】時代遅れの寵児②過信

「あなたが一番輝いていたのはいつですか?」

もし、そう聞かれたら、
俺は「いつ」
と、答えるだろうか?


7歳上の姉と、
3歳上の兄に続いて、
工場で働く職人の
末っ子として生まれた。

風呂なしアパートの
狭い部屋で家族五人暮らし。

親子で銭湯に通ひ、
兄弟三人、並んで眠る。

一人の時間なんてない。

姉の会話の中で、
兄のペースに併せて暮らす。

いつも身の丈にあってない。

気がつけば、
同級生よりも大人の目線が
身についていた。

そう、俺はガキの頃から、
マセていたのだ。

しかも4月生まれだから、
体力も平均よりはある。

そのまま、ガキ大将だ。

中学生では、生徒会長。
卒業式で、答辞も読んだ。

高校生では、サッカー部の
エースストライカー。
3年間、クラス委員も務めた。

やれば何でも、
そこそこ結果を出せた。

だから、集団に入れば、
常に中心で居られた。

自分が失敗するなんて、
微塵も思わなかった。

そう、ここまでは…。


18歳も過ぎれば、
体はもちろん、
精神的にも成長する。
自律できるようになる。

もう、誰と比べても
俺だけがマセている、
なんて訳がない。

しかし、その時の俺は、
まるで気づいていなかった。

人生の下書きの段階で、
俺はもう、
既に過信していたのだ。

(続く)











この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?