バイト先のトラブル


バイトを始めた時の意味が分からないトラブルを紹介します。

近所の親方に頼みバイトを始めた。
当時、お金に困っていた僕はバイトを始めたく親方に電話すると

「好きな時に来い!」

という二つ返事でOKだった。
親方は1人で建設業を営んでおり今は1人で自分のペースでやっているらしい。
近所のおじさんで友達感覚だった。
仕事は家の外構工事全般で、主にコンクリで駐車場、コンクリ塀、家の基礎を作ったりしていた。
取引先の人も仲良くしてくれてとても居心地がいい会社だった。
それは冬は寒く夏は暑く、過酷な一面もあったがそれなりにできることも増えてきて、楽しくもあった。


そんなある仕事終わり、親方が言った。

「来月から新しい人来るから」

詳しく聞くとこの道30年の大ベテランでなんと親方より年上。
別の会社を辞めて前親方と働いたことがあるらしい。
正直、嫌だった。
だって、そんなすごい人が来たら僕なんていらなくなる。
やっと道具の名前を覚えかけた腕もない素人も素人。

「え?それって僕もこれからも来ていいの?」

「いい!いい!ちゃんと仕事はあるから気にすんな!」

ならいいけど。

そしてその新メンバーのおじさんと初対面の朝。
僕が来ると会社の前で談笑する2人がいた。

「おうよろしく~」

ニコニコと握手を求められる。
そのおじさんは通称Mさんは髭ボーボーでロン毛と清潔感はあまりなかった。
だが、いつもふざけながら話すMさんはなかなか面白い人でいろんなことを教えてくれた。車やバイクにめちゃめちゃ詳しく釣りやキャンプも好きで多趣味な人だった。

しかし、恐れていた瞬間がきてしまう。

やることがないのだ。

親方とMさんが職人作業中、どうしても手空きの時間ができてしまった。
ただ立って2人を見ているしかないのが辛かった。
そしてボソっとMさんに言われてしまう。

「なんか考えて動かなきゃだめだぞ。お前が立ってる時間も給料が発生してるんだぞ」

「はい・・・」

しかし、段々とそれはエスカレートしていく。

「本当にお前は何もできねぇな!」

とはっきりものを言われたり

「何やってんだ!」

何か段取りをわかっていなければ怒鳴られるのは当たり前になってくる。
例えば

「ダンプに乗っている荷物を全部降ろせ」

「はい」

文字通り降ろすと

「なんでアレまで降ろしちまうんだ!」

と、怒鳴られた。

「え?全部降ろせと言われたので・・・」

「今からやる作業に必要なものまで降ろしやがって!」

Mさんは
これから必要なもの以外全部降ろせ、というレベルで指示を出していたわけだ。
バイト始めて数か月の自分にとってはまだ次何をやるべきかは指示がないと動けず、

段取りが分かってないダメなヤツ

というレッテルを貼られてしまい、毎日のように怒られていた。
もちろん、僕が毎日のように怒鳴られちることは親方は見ている。

「今日もMさんに気合入れられたのか?」

「今日はこれこれこういう理由で・・・」

「気にすんな。はいはい、ってうまく流しとけ。あの人は誰にでも怒鳴るし俺にも怒鳴る。お前がだめなわけじゃない」

正直、辛かった。
が、やめるわけなにはいかない理由は別記事に。

そんな中、バイト先に動きがあった。

3人で仕事をしているある日の休憩時間、Mさんは誰かと電話をし出した。

「今から息子が来る」

と言うのだ。
相当なチャラ男が来るのかなと覚悟をしていると来たのは髪の毛こそ金髪だったがニコニコした愛想のいい感じの青年が自転車に乗ってやってきた。
よく見ると釣り竿を持っていて、それを親父に渡しに来たらしい。
堂々とタバコをふかしながら現場にドカンと腰を下ろしながら親父、さらには親方とも知り合いらしく雑談が始まった。

「このやろ、堂々とタバコ吸いやがって」

親方は軽く息子の頭を叩き一瞬笑いが起こった。
なんと、年齢は

16歳

だというのだ。
タバコは自己責任という考え方なのか親父は全く注意しなかった。
話は釣りからバイクの話になったが、相当な知識量だった。
親父も好きで僕自身、バイクの免許は持っているのでそこそこ好きだがその話には全くついて行けなった。
前乗ってたバイクなんですよーと、写真を見せられたがまさに暴走族のそれだった。

学校に行ってない息子はバイトをしているのだが、それまで時間があるなら仕事手伝って行けとなんと親父が言い出した。
えー!と思ったがなんと息子は親方と知り合いどころか昔この会社で働いていたことがあるというのだ!

以前、Mさんがこの会社に来ていた時、一緒に手伝いをしに来ていたことがあるらしい。
それ故、Mさんからはっきり言われた。

「お前より仕事できるぞ」

たしかになれた仕事ぶりでそれは受け止めた。
が、どういう話の流れになったのか、なんとその日を境にその息子が毎日来るようになったのだ。
親方も人が欲しかったのか、親父が勝手に連れてくるのかわからないが、自分と同じようにこの会社のアルバイトとして正式に働くことになっていた。

確かに年齢が故、車の運転はできないがそれ以外は道具の使い方は上手だし、仕事も早く、しっかり戦闘力になっていた。
話せばくだらない冗談を言い合ったりと仲も深まっていった。
そして嬉しかったのが

Mさんから怒鳴られることが減った。

というのも会社自体、忙しいらしく常に現場をいくつも抱え、二手に分かれて作業する日が増えたのだ。
もちろん
・Mさんと息子
・僕と親方
組になる。
Mさんは息子を乗せて現場に直行直帰でき、WINWINな感じだった。

そんな職場環境は、冬を境に大きく変わってしまった。
外仕事の宿命なのか

冬になり仕事が激減した。

とは言ってもゼロではなく、正社員のMさんは毎回行く。
だが、ちょっと気に食わなかったのは息子を毎回連れて来るわけだ。
つまり3人でいいところは、4人目の僕は仕事ないから休みでいいよということになる。
たしかに息子の方が仕事ができるのはわかるけど、少し納得がいかない状況になってしまった。
そしてついに

春まで休みでお願いします

というメッセージが届いてしまった。
しかし、裏でLINEすると毎回息子は行っている。
そしてバイトを辞めるわけにいかない状況・・・。
バイトを変えようかなと思い始めた頃だった。

事件は起こる。

バイトの面接の予定まで立てていた頃、息子から衝撃のLINEが届く。

親父が逮捕されました。

えええええ!
何やったん!?

公務執行妨害
飲酒運転
児童虐待

の疑いだという。そしてその事情聴取で息子も警察署にいるらしい。
事件の詳細は
ある夜親父が飲みに行った。
しかし酔って家の鍵を落としてしまう。
子供たち、(3人兄弟)は夜遊びに行く。
そんなことも知らない親父が帰ってきて鍵がないことに気づき一番下の弟に鍵を開けろと電話をする。
しかし、今家にいないから急いで家に帰ると説明し一番下の弟だけ帰宅。
寒い中待たされたことに激怒し、帰ってきた弟を容赦なく何かモノで額を殴り気絶させてしまう。
それで親父は冷静になったのか兄に電話し息子を車に乗せ合流を図る。
近所のコンビニで合流したのだがやはり兄にも怒っていてまた店内で大暴れ、警察が来て、連行されたとのことだった。

殴られた息子は縫うほどの怪我。
少しでも場所がずれていればやばかったという。
さらに手で殴ったという親父だが何かの破片も傷口から見つかったとのこと。
当然、飲酒運転もあるし、駆けつけた警察官は5人がかりで取り押さえるほど暴れたらしくそれが公務執行妨害にあたるとのことだった。

これは大ごとだ。
大きさでいえばテレビで扱われるような事件じゃないかもしれないが会社的にはとんでもないことだろう。
そして、素直に喜んでいいのかわからないが必然的に親方から電話が来る。

「明日から来れるか?」

もちろん答えはYESだが

「Mさんのこと聞いたけどいつから来るんだろう」

「いやもうわかんないよ。何週間なのか数年なのかこればっかりは・・・」

久しぶりに会社につき、仕事が始まる前に詳しく聞きたいとMさんの話をした。
なんと、Mさんの逮捕は

初めてではなかったのだ。

前の奥さんに暴力を振るったり、トラックの運転手をやっていたのに飲酒運転で免許はく奪になったりどれもお酒に飲まれたトラブルばかりだった。

Mさんの復帰が全くわからない中でも仕事は待ってくれない。
しかし、ひとつの問題がある。

息子の存在だ。

今まで仕事には親父の車で送り迎えをしてもらっていたわけだ。
その親父がいない今、仕事に行く手段がなくなる。

「悪ぃんだけど息子の送り迎えしてくれるか・・・」

親方の頼み、断れない。
別に息子は嫌いじゃないしいいんだが、家は反対方向で極端に行きが早くなって帰りが遅くなるのは気になった。
その分のガソリン代はしっかり親方はくれた。
待てよ?バイク乗り回してるとか言ってたけど今はバイクないんだっけ?
すると衝撃の事実が発覚する。

「あのバカ野郎、無免許でバイク乗ってたんだ」

親も親なら子も子だな。
Mさんが復帰するまでか・・・。

「親父もいつになるかわからないんだから春になったら原付の免許とれと言っといた」

さすがに息子もかわいそうと思ったのか親方は息子に原付のお金を渡し、少々早い気もするが原付は買ったらしい。

送り迎えの最中、息子と2人だけの時間を長く過ごすことになるのだが話題はもっぱら今回の件だ。
息子も裁判所に行ったりと大変そうだったが親父の処分は

・罰金
・免許取り消し

のふたつだった。
詳しい額は聞いていないがつまり懲役はないらしくすぐ出てこれるという。
出てきたところで免許がないんじゃ話にならない。
すぐに仕事復帰はなさそうだ。が、

「もう仕事は辞めると言っています」

まじか!
正直、嬉しい気持ちはあった。
あんなに怒鳴られることはもうない・・・。
だけど送り迎えは春まで続く。。。複雑だった。
ただ辞めるって次のあてでもあるのだろうか。
別に親方はクビにしたわけじゃない。
罰金があるならお金は必要だろうに。

ま、止める気はさらさらないが。
というかもう親父とはもう一緒に暮らす気はないと、兄弟でアパートで暮らすと言うのだ。
だから仮に親父が会社を辞めなければもう俺が辞めると話していた。
まぁ無理はないか。

春になって送り迎えも終盤(の予定)になる。
残念ながら一回目の原付免許の筆記試験は失格。
原付免許が近い将来なくなることが決まった今日、試験も週一回いか行われず、また試験は来週になる。

「作業着いります?」

そんなこんなでまだ送り迎えを継続することになったこと申し訳なく思ったのだろうか。
実は僕は外仕事をやるからとつなぎを二着買ったのだが実は職人で何故かつなぎを着ている人はいない。

着なくなった作業着が大量にあるらしくまだ着れるし体格的にもちょうどいいからぜひ僕に着てほしいとのこと。
それは嬉しい話だけど・・・

「え?いいの?本当に着ないの?」

「はい!僕はもう作業着の好みも変わっちゃったんでもう着ません。一着2万くらいしたんですけどもう売ってないんですよ」

「そんなにいいやつならメルカリかなんかで売ればいいんじゃないの?」

「いえいえ知ってる人に着てもらいたいんで」

「そうかそれならありがたくもらうよ」

そしてその通り、迎え行ったある朝、袋ふたつパンパンの作業着を持ってきてくれた。

「こんなに!しかもめっちゃきれいじゃん!本当にもう誰も着ないんだね?」

「はい!絶対に着ません!」

僕はその言葉を信じ、ありがたくいただき、実際その服を着て仕事をした。

しかし残念ながら、月日が流れるも原付の免許取得のニュースはやってこない。

・寝坊して試験に遅刻した。
・会場まで送ってくれる人が寝坊して受験不可になった。
・試験会場で喧嘩になり強制退場になった。
・普通に落ちた。

等、嘘か誠かわからない話までされた。

ある仕事の休憩中、なんと息子から信じられない話をされる。

「先週、この辺で路上強盗事件あってニュースになったの知ってます?」

「いや、知らないけど」

「その犯人、兄貴なんですよ」

息子は笑いながら話した。

「マジかよ!」

「友達と飲んでおやじ狩りしようぜってなったらしくて。分給数千円すよ!」

「いやいや、捕まるだろ」

「大丈夫じゃないですかね」

しかも、直近で2回。信じられない。
犯行は中年男性に金を出せと言い、断られると容赦なく殴り、骨折させたという。
もし自分が身内なら通報するに決まっている。

「親方には一応言わないでくださいね」

しかし、数日後だった。
休みの日の朝、息子からLINEが入る。

「昨日、家に警察が来て兄貴が逮捕されました」

言わんこっちゃない。

「馬鹿なことしましたよね!」

お前も一緒になってへらへら笑ってただろうが。
同罪まで言わないが、通報するべきだったと思う。
結果、罰金+懲役数年。
被害男性も許す気はないと、徹底的に動いたらしい。

ある日、親方は別の現場へ一人離れ、僕と息子で仕事をしてあとで親方が合流する予定の日があった。
現場では二人、息子は張り切っていた。

そんな中ひとつ親方に聞いてみたいことができ、息子が電話をした。
指示を仰ぐだけのつもりが何故か電話を切った息子は

「なんか怒ってるんですけど」

と言う。

「え?なんで?」

「よくわかりません。段取りが違うだろとか」

「えええ」

そしてしばらくすると親方から電話がかかってきて息子は出ると、

「なんか意味わかんないこと言ってるんで帰ります」

といい、荷物をまとめて帰ろうとしだしたのだ。

「おいおいおい」

「いやもう帰ります。親父に電話して近くのコンビニまで迎え来てもらいます。あとは頑張ってください」

「ええええ?」

本当に現場を去ってしまったことも驚いたが親父に電話?と思った。
もいういやで縁切りたいくらいのこと逮捕直後は言っていたのに・・・。

と、まぁ仕事は分かるがバイト1人になってしまった状況を親方に伝えなくてはとすぐに電話をした。

「えええ?なんだって!?わかった、ちょっと息子に電話するわ」

それから2時間後、親方は1人で現場に到着した。
どうやら朝話してた段取りと順番を変えて作業したことを親方が指摘、
でも息子的にはその段取りの順番を変えたところで作業的には問題ないと主張するも親方の注意の仕方に頭が来たらしい。
そんなにきついものの言い方をする人ではないはずだが・・・。

しかし、深堀をして行くとかなりショックな話をされた。

「そよたろうが仕事遅すぎて段取りを変えざるをえなかったってさ」

つまり僕の仕事が遅すぎるのがいけないことが全ての原因かのように言われた。
悔しいが遅いことは事実、早くやろうとしても職人のそれにはかなわない。
息子とだって数年の差がある。

「とにかくお前が遅くてだめだ遅くてだめだってさ。でもそんなこと言えば息子だって遅いぞって言ったんだ。でも遅いなりに頑張ってれば遅いなんて言わないし遅いって思うなら手伝うなり教えるなりしろって言ったんだ」

結局、話はまとまらず親父が電話越しで俺が何とかすると言って話は終わったらしい。
今後、もしかしたら息子は来るのか。それすらも怪しくなってしまった。
偉そうなことを言えばちょっと仕事で頭が来たから怒って辞めるなんてどこいっても続くはずがないと思った。
実際息子は過去のアルバイトでは長続きはしなかったらしい。
なんか遅刻の注意されたけどその注意の仕方が気に食わなかったとか・・・。

次のバイトの前日、親方から

「明日は直接会社来てくれ」

と、言われた。
つまり息子を拾っていく必要がない=休みということか。
本当にこのまま辞めてしまうんだろうか。
しかし、

「会社から現場行くとき息子拾っていってくれ」

会社から、トラックで現場に向かう途中で息子を拾っていけという。
たまたま、現場が息子の家の近くだったかららしい。
しかし、息子の家に向かっている途中、親方から着信がある。

「予定変更!息子休み!直接現場来てくれ!理由は後で話す」

「はああ?」

理由はなんと

「そよたろうさんが来るなら僕は行きません」

と言ったらしい。
どんだけ嫌われてるんだ!?
ってかそもそも言い合いなんてしたことないしむしろ仲良くやってたつもりだったのに・・・。

「現場で問題起こしたくないので」

っていきなり襲い掛かられるのか?本当にどれだけ僕の仕事ぶりが気に食わなかったんだろう。

それから結局本当に次の日も休み、次の日も休んだ。
おいおい・・・。本当に僕が辞めたら来るのか?
LINEも今までしてたけどそんな話を聞いてしまえばもうできない。すでにブロックされてるんじゃなかろうか。
バイトが終わった時間に親方が、顔をしかめて話してきた。

「お前、息子から作業着もらっただか借りたのか?」

「ああ、これこれ。あいつがくれるって言うからもう着ないならじゃあもらうよって言って」

「全部返せ」

「ええええ」

急に親父から親方に電話があったらしく、そよたろうに貸している作業着を全部返してほしい、と。

「貸してるって・・・。もらったんだけどな」

「もともとその服は親父のでそれを息子に貸してるってことだったらしいんだ。それをお前に渡しちゃったからややこしくなっちゃって」

「大体服のレンタルって有り得ないってw」

「悪いなぁ、だめだ親父うるさくて。多分、親父金欲しいんだよ。自分の飲酒運転の罰金に兄貴の強盗の罰金でとんでもない金額になってる。その作業着、もともと高いらしいじゃねぇか。売って金にするんじゃねぇかな」

迷惑な話だ。
そもそも一言も欲しいなんて言った覚えはないし、つなぎで僕は満足していたわけだ。

そして、言われた通り作業着を持って出勤すると、なんと会社には親父の車があるではないか!

そこにはすでに親方、息子、親父がいてこっちを見ている。

「レンタルありがとうございました」

皮肉を込めて言うと親父はマジな顔をして睨んでくる。

「お前これで済むと思ってんのか?」

「これで全部ですけど?」

「人から服借りてタダか!」

怒号が会社に響く。

「え?だから息子からもらったつもりでいたんで」

「証拠はあんのか!」

「いやないですけど」

息子は黙っている。
自分が一方的にあげた、とは言ってくれない。

「普通はお礼に何か持ってくるぞ。常識内にもほどがあるぞ!」

親方が割って入る。

「いや、もらったって思うじゃないですか!」

「いやいや、その証拠がないんじゃだめでしょう、とにかく借りたものを返してタダでってのが常識がなさすぎる。もっとご教育をお願いします」

常識がないだと!?
自分はこの間何した?
お前の息子はこの間何した?






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