『フランチャイズの失敗』その5「営業開始」
「営業開始」
研修も終わり、まずは本部からの紹介(もちろん有料)で資格者を雇った。しかし、資格が「整体師」の方が良かったところ(医療項目が多く治療費も高額になるため)「鍼灸師」のみしか持っていないとの事でかなり迷ったが(医療が針治療のみ)、家も近いという事だし、後に整体師も雇えば良いと思い、とにかく資格者がいないと商売にならないので、とりあえず雇用した。
ちなみにどんな人物だったかというと、40代の独身男性で親と同居。なんか非常に大らかというかのんきというか、ガツガツした感じが全くなく、同年代のサラリーマンなどとは明らかに雰囲気が違った。給料は月20万としたが、考えてみれば親と同居で20万ももらえば御の字であろう。資格取得にはそれなりに費用は掛かるようだが、まあ、世の中こういう生き方もあるんだなと勉強になった。
治療院には、立川駅周辺だと家賃が高いので自宅近くの物件を借りようとしたのだが、タッチの差で借りられず、結局西国立駅近くの10坪7万という事務所を借りた。
パーテーションと施術用ベッドはネットで購入して自分で設置し、難なく保健所に治療院として認められた。
そして2015年11月頃になんとか営業開始にこぎつけた。
しかし、オーナーが営業で回る事になる拠点から半径10㎞くらいの範囲でのケアマネージャーがいる施設、事務所のリストをてっきり本部から提供されると思っていたのだが、実態は外部のサイトから自分で調べなければならないというかなりお粗末な状況で、いきなり出鼻をくじかれる事となった。
また、フランチャイズのシステムとしてスタート時から数回「開業支援」として、いわゆる「スーパーバイザー(SV)」からの指導がある。しかしスーパーバイザーなんて言うと聞こえが良いが、実態は20代そこそこの若者がほとんどという、何とも頼りない状況であった。一応開業に必要な知識や経験は身に付けさせられているようだったが、指導内容もほぼケアマネージャーへの営業に同行するといった、とても開業支援と呼べるようなシロモノではなく、早くも行く先が心配になってしまった。
そして最も納得いかなかったのは「チラシ」について。ケアマネージャーへの直接営業以外の営業活動というと、とにかくチラシを近隣にポスティングしまくるのだが、当然配るチラシは本部から購入する。
しかし、最初に配る分について、なんと問い合わせ先が本部になっているものを配るよう指示されたのだ。たぶん大量に余っていたから無理矢理買わせたかったのかと思うが、どこに出来るのかもワカラナいようなチラシを見て立川から都心の本部に問い合わせなんてする訳が無い。後に自分の拠点が問い合わせ先のチラシを配ったらかなり反応があっただけに、余計に腹が立った。
最も注力すべきケアマネージャーへの営業にはマニュアルがあり、同じところを3回営業に回るまでのやる事が決められていて研修でも何度も実践させられた。話す内容だとか、似顔絵入りの名刺を渡すタイミングだとかをマニュアル通りにやれば確かにそれなりの反応はある。この辺はフランチャイズとしての根幹の部分なので、反応があって当然といえば当然だったのだが、今回のフランチャイズ事業で感心したのは、正直これだけであった。
そして反応と言っても、興味は示してくれるものの利用者の紹介までは到底無理な感じだった。それも最大の理由としては、立川周辺のエリアは競合他社が多く完全なる供給過多であり、市場が既に飽和状態に陥っているという事であった。
開業に当たっては本部による市場調査は一応行われる。しかし、それは単純に商圏内の人口と年代構成を調べて基準と比べるだけで競合他社の状況は全く考慮されていないのだ。
また、3回目以降の営業はマニュアルも無く「自分で考えろ」的な状況で、競合が多い場合の差別化などは、全く的確なアドバイスなどもらえない状況だった。
一応他のオーナーの事例などを参考に出来るような資料もあるのだが、地域性にかなり影響されるため、なかなか当てはまらないモノばかりだった。
しかし、その資料は別の部分でもっと参考になったのであった。もちろん悪い方向にだが…