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第六回 転職活動で刺さるエピソードをつくるコツ。「私は優秀な人材である」とダイレクトに語ってはいけない。

おはようございます。みなさんはアメンボボートって知っていますか?軽井沢にタリアセンってデッカイ池のある公園があるんですけど、そこで自転車みたいなボートがあるんですね。下北のあひるボートがダイレクトに自転車のかたちでボートになってて、池の上を漕げる新感覚な乗り物をアメンボボートっていうんですけど。

すんげー前に大学時代の友達がFacebookに載せてて、「面白そうだなー、やってみたいな」と思ってまして。その頃は誰と一緒にやるとか考えてないですよ。たまたま今回は友人夫妻と軽井沢に行くことになったから予定にねじ込んだだけです。アメンボボートを知った頃は、友人夫妻に出会ってすらない。

そうそう、俺以外はみんなタリアセンに着いたときはテンション低かったですからね。「えっ、何すか。アメンボボート?(まぁ付き合うけど……)」みたいな。始める前からアガッてたのは俺だけでしたから。ADHDがひとりではしゃいでいる状態。でも俺の頭のなかでは画が出来てますから。みんながこの快晴で、陽が反射した水面のうえを漕ぎまわれば盛り上がらないはずがないって。結果は大盛り上がりですよ!

でね、俺はSUPに近いと思ったの。パドルで漕ぐのが、自転車になったような感覚。でも友人は自動車に近いと捉えていた。たしかに自転車なんだけどアメンボボートはバックできる(!)し、そのときに切るハンドルの方向は自動車と一緒。同じ乗り物に乗っていても、捉える感覚体は人によってまるで別物なんですよね。俺や妻はスーパー・ペーパー・ドライバーですから。免許取ったとき以来、ハンドル握ってないからその感覚が立ち上がってこない。

そうなんです。同じ事象を経験したとしても、それをどういう風に捉えているか?そして、その体験をどういう風に消化するか?って人それぞれなんですよ。

もっと言えば、その消化した体験を、どんなふうに魅力的に語れるか?っていうのはテクニックが必要です。そしてそれは人生においてすごく大事なことです。自分の経験をどこかの誰かにお裾分けして、世界の幸福を広げることに繋がるからです。どっかの誰かのワクワクを広げていく。そういう風に生きていたいじゃないですか。

さて、転職活動においても「自分の何を語るか?」というのはテクニックがいります。これは俺が新卒の頃に掴みきれずに漠然とした苦手意識を持ってしまった部分であり、今回の転職では自然と掴めていた部分です。まぁ新卒の頃とはちがって職歴がありますからね。語るネタが自分自身でなかったのが大きなちがいでした。

「あなたの良さを語ってください」

レベルの漠然とした解像度で考えたら失敗しますよ。転職市場はあなたという人間の価値をはかる場ではないですよ。こんな茶番にあなたのすべてを委ねる必要はない。

企業に査定をされてはいけません。査定をしてやるのです。その企業に入れてもらうのではない、入れてやるのです。恋愛は別ですよ。女の子にそんなことを思っちゃダメ。恋愛はいつだって女性の立場が上ですから。関係を結ぶ前も、関係を結んだ後も、いつだって女性が判断のイニシアティブを持ってますからね。

転職においては「市場価値」です。市場価値とは、「あなたという商品をなるべく高く売り込む場」ということです。市場価値が高ければ年収が上がります。これはどんどん深掘りしていける部分です。

たとえば営業経験がある人は強いです。信頼関係がないところにポッと足を運んで、人柄に好感を持ってもらいながら売り込みたい商品をクロージングに持っていく。その商品自体は明確に優位性がないものでも、顧客が最初に語るニーズではなく、ヒアリングしたうえで推測したニーズとすり合わせをして、なんとか接点を持たせる。その過程で「誰かに頼むなら、この人に頼みたい」「この人なら失敗しても何とかしてくれるだろう」と思わせた人が、売れるわけです。そして価格は足切りをくぐりながらも、なるべく高く売らねばならない。もし営業経験がない人は、機会があれば営業同行だけでもしてみてください。可能ならばドアノックからクロージングまで一連のプロセスを見てみてください。面白いですよ。

そしてあなたの人間性は重要だが、商品としての最優先事項ではないという点です。そりゃ誰だって性格がいい人と働きたいですよ。でもそれはプラスアルファの部分で、採用とはまず「使い物にならない人をはじく」というのが鉄則です。自分が家電を買うときを考えると「ハズレを引きたくない」って思うじゃないですか。それと同じです。もちろん人は商品じゃないですよ。ですが、そういう文脈(転職市場)で勝負をするならば、徹底的にそれを自覚したコミュニケーション・スタイルで行った方が勝率は上がりますから。

では優秀な人材(ハズレではない人材)と思わせるにはどうすればいいか?

まずはみんな、自分の強みを探し出そうとするでしょう。俺もそうでした。

たとえば俺が日常的な業務で人よりも得意なこと(他人から言われることが多いの)は、

・顧客と受注関係をこえて仲良くなって、上手いこと決着させる調整が抜群に上手い
・必要とあらば顧客にマウントを取って、ヤバい方向に行きかけたのを収束させる力技を辞さない
・複雑な状況をシンプルに整理(あるいはストーリー化)して、人に伝えるのが上手い
・プロジェクトの方向性を決めて、メンバーを牽引することがけっこう上手い
・他人に仕事を振るのが得意
・人当たりが抜群にいい

あたりです。これを面接でそのまま言ってみましょう。

面接官「これまでのプロジェクトでの成功体験を語ってください」
俺「そうっすね。私、顧客と仲良くなるのがめちゃ上手いんすよ。こっちの利益を最大化しながら、相手に損をさせない落としどころを見つけるのが超上手いんすよ」
面接官「ホントかよ……。バチクソうさんくさいな、コイツ」

面接官「これまでのプロジェクトでの成功体験を語ってください」
俺「ういーっす。私ね、顧客は大事だと思ってるけど、神様とは思ってませんから。無茶を言い出したら、妥当な範囲でマウントを取って、こっちの流れに持っていっちゃいますね。場の流れをつくるのと期待値コントロールが超うまいっすから」
面接官「一歩まちがえるとリスキーな動き方をする奴だな、コイツ……」

これらはそれなりにどこでも重宝されるスキルですが、ひとことで言えば「聞こえ」が悪いんですよ(笑)

客観的な証明が難しいですし、どういう状況だったかが分からないと相手も判断のしようがないわけです。

そうなんです、転職において我々は「ダイレクトに個性や長所を語ってはいけない」のです。いけないというか、そういう語り方をしてしまうと面接官に響かないんです。好きではなく、月がキレイですね、と口元から花を咲かせなくてはいけません。

薬効成分だけでは口当たりがわるい。オブラートが必要です。くるっと包み込むエピソードが必要になるわけです。

もう少しわかりやすく言うと、面接官に特定のプロジェクトの状況を疑似体験してもらうんです。こういう困難な状況がありました。そこで自分はこういう風に考えました。選択肢はこれとこれでした。また、お客さんはこういうスタンスでした。この前提を鑑みるとこっちが妥当でした。勝率を上げるために、こういうアクションを取りました。状況を疑似体験してもらうことで「なるほど、自分もそうするな」と思ってもらえれば御の字ですし、「待てよ、何でこうしなかったんだ?」と疑問が生まれれば、質問してくれるでしょう。そしたらそれに対してシャープに打ち返せば、ダイレクトに優秀さをアピール出来ます。

これが作り込んで準備しておく「商品としてのあなた」です。どれだけリアリティを持って、面接官の想像力を喚起できるか。これが勝負といっていいでしょう。あっ、他の人がどうやってるのか知らんよ。俺はこれがやりやすかっただけです。

さて、これまで読んでくれた人は気づいてますよね。だからこそSTARなんです。

S=シチュエーション。状況。
T=タスク。課題、役割。
A=アクション。どういう動きをしたのか。
R=リザルト。結果。

このフォーマットになっているかぎり、面接官は我々の経験を追体験してくれます。そして、判断や行動の妥当性をジャッジしやすいんですよ。

重要なことに、この追体験のエピソードは情報の非対称性があるんですよ。嘘は言っちゃダメですが、その場で提供するエピソードを用意するのはこちら側です。向こうは差し出されたものを咀嚼するだけです。突っ込んで聞かれても、話すとめんどくさくなることは提供する必要もない。重要なことはあるがままの真実を丸ごと欲しがってるわけではないということ。あなたという商品が特定のシチュエーションでどういう考え方、動き方をするかのジャッジをしたいだけなんです、面接官は。

そう、転職の面接で聞かれることは一貫してひとつだけです。

「あなたは弊社の役に立ってくれますか? 売り上げを拡大してくれますか?」

だけです。紙ベースの職務経歴書だろうが、対面の面接だろうが、同音異曲のように繰り返し、遠回しに聞かれるわけです。これに遠回しに答えなくてはなりません。こんな状況でこういうことが出来た私は、もちろん役に立つでしょ? 売り上げを拡大できそうでしょ? という風に。

今日はここまでです。次回はいよいよ職務経歴書のサンプルを公開しようと思います。

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