雑感~J2第20節 ジェフユナイテッド千葉 VS ファジアーノ岡山~

スタメン

両チームのスタメンはこちら。

画像1

4-4-2を攻略するには(前半)

 千葉は尹晶煥氏が監督になったこともあって、分かりやすく4-4-2でブロックを敷いて守るチームとなっている。どんなときでもハイラインハイプレス(プレスできているとは言ってない)なおじさんが監督をやっていたときが懐かしい。

 この試合でも千葉の川又と山下の第一ライン2枚は、濱田や後藤あたりが後ろ向きでボールを持ったとき以外にボールを奪おうとするようなプレッシャーに行くことはあまりなく、基本的に自分たちの背後のスペースを消しつつ岡山のボールを外回りさせるようにセットしていた。千葉の守り方はCH(田口と小島)とCB(チャンミンギュと鳥海)の4枚で中央のスペースをまずは埋め、岡山が後方からボールをサイドに出したときに全体をスライド、サイドで追い込んだらSHとSBのサンドイッチで取ろうとする、4-4-2のオーソドックスな形に忠実なやり方であった。

 これに対しての岡山のボール保持攻撃。狙いとしては千葉のCHとCBの4枚で埋めている中央のスペースを広げて、そこにボールを入れて崩していくこと。これは前半と後半の90分間で変わらなかったと思う。ただ、それを行うためのアプローチを前半と後半で変化させようとした。そのアプローチの変化は、45分で一変した2トップの組み合わせの特徴の違いが大きかった気がする。

 前半の岡山の2トップは赤嶺と上門の沖縄コンビ。どちらも背後を取ったり空中戦だったりで何とかするタイプではなく、まず足元でボールを受けてそこからアクションを起こしていこうとする選手。かつての赤嶺はペナ内の住人(ワンタッチゴーラー)みが強い選手だったが、年を重ねて、まずは足元で起点を作るという感じの選手になっている。上門は言わずもがな、足元でボールを受けて気持ち良く右足を振ってナンボな選手である。

 前半の岡山の狙いは、まず赤嶺をバイタル中央(⇒前述した千葉が埋めたい中央のスペース)での中継点にして、近くにポジショニングする上門、SH(関戸と野口)、走り込んできた白井あたりとのコンビネーションで中央を崩そうとすること。もしくは徳元や下口の両SBをサイドの高い位置まで押し上げて、そこからクロスを入れさせることだった。

 千葉のCB前のスペースを作るためにやろうとした岡山の前段階の作業は、まず主に関戸や野口のCHが千葉のCH-SH間のスペースに入り、後方からのボールを引き出そうとすること。そこでボールを受けてそのままターンできれば一番良いが、一度後ろに下げたり横に戻したりすることになっても、千葉の中盤のラインに縦横のスライドをさせて、千葉のCB前のスペースを使えるようにできるという意図があったように思う。

 まずその狙いが見えたと感じたのは5:40あたりのシーン。下口→白井へのパスで小島を引き出し、上門とのパス交換で田口も引き出してできたCB前のスペースに関戸が入り込み、赤嶺にスルーパスを出した一連のプレー。赤嶺が中継点になったプレーとは違うが、千葉のCH2枚にスライドを強制させてCB前でスペースを作り、前を向いてプレーする形を作れた良いシーンであった。

 33分には白井の縦パスに野口が千葉のCH-SH間で受けに行く動きを見せてのスルー、スルーしたボールを赤嶺が受けてシンプルに右サイドの下口に叩いてそのままクロスまで持って行く。また38分には千葉のセットプレーからのカウンターで野口がドリブル、赤嶺が一度ボールを受けて走り込んできた白井に渡してのシュートがクロスバーを叩くなど、赤嶺が中継点となれた時には千葉のゴール前にスムーズに迫れるシーンを作れていた。赤嶺の中継点となれる、味方の押し上げを助けられるプレーは、ただの「円熟味のある」で済ませたくない、清水や山本、斎藤あたりにも是非体得してほしいプレーである。

 ただ狙いはうかがえるものの、その形自体を多く作れていたとは言いがたい前半であったのも事実。岡山のCB-CHでのボール保持で千葉の第一ラインを動かす展開をあまり作れず(⇒相手が来ていないのにボールを早く離してしまう、スペースがあってもボールを持ち運べない、体の向きを変えられないで相手の寄せを受けてしまうetc)、関戸や野口が千葉の中盤よりも低い位置まで下りてボールをピックアップせざるを得ないシーンが目立っていた。また、逆足で起用された関戸と野口の両SHも窮屈そうにプレーしているシーンが多かった。

4-4-2を攻略するには(後半)

 野口と赤嶺に代えて清水と山本が入った後半の岡山。2トップは清水と山本となり、上門はいつもの左SHに入る形となった。

 前述の通り、後半の岡山は前半とアプローチを変えて攻撃に出る。前半の2トップだった赤嶺や上門の時と違って、山本に積極的に相手最終ラインの背後を狙わせ、そして千葉の最終ラインの前で清水が競り合いを行なってボールを収めようとする縦関係の2トップに対して、ポープやCBあたりから後方からダイレクト気味に前線にボールを入れていく回数を増やしていった。ダイレクト気味に入れたボールをそのまま清水が競り勝ってフリック、山本が背後に飛び出す形でゴール前に運べればベスト、それができなくても中盤の4枚がバイタル付近に集まってセカンドボールを回収して押し込んでしまおうという狙いである。

 千葉のチャンミンギュと鳥海のCB2枚はこのダイレクトの形に結構手を焼いている印象であった。シンプルなボールでもCBがなかなかクリーンに弾き返すということが難しくなると、千葉のCHが最終ラインに吸収されるという展開も増えることになる。千葉のブロックが自陣深くに下がるようになることで、後半の岡山は敵陣でセカンドボールを回収するシーンが増えて、千葉のCHが最終ラインに吸収されることでできたバイタル中央のスペースからシュートを狙うというシーンも増やしていった。

 CB-CH間が押し込まれることで千葉はサイドを捨てて守るようになるのだが、ここで面白かったのは左サイドからフリーになることの多かった徳元のいくつかのプレー選択であった。例えば59分のアーリー気味で前線にボールを上げるシーンで、最終ラインの背後に飛び出そうとする山本を狙う素振りを見せて、手前の清水にボールを入れてポストプレー→山本が抜け出してシュートに持って行ったり、71分には大外でボールを持ったシーンで上門が左ハーフレーンからペナ内に侵入したことでできたバイタルのスペースにグラウンダーのボールを入れて上田のミドルシュートを演出したり。

 一矢報いる84分の山本のゴールもセットプレーの流れからの徳元のアーリークロスからであった。この試合では千葉のニアの壁に跳ね返されることの多かったクロス攻撃であったが、この場面ではニアの壁を越えることができて山本が身体を投げ出して飛び込むタイミングと一致した。岡山にとっては2トップで起用された選手が得点を取ったのは久しぶりな気がする。というより得点自体久しぶりな気がする。

 前線にダイレクト気味にボールを入れていき、そのセカンドボールを回収して押し込んでいくという、ここ最近の形に戻して敵陣深くにまで運ぶ回数を増やせた後半だった。ただ千葉も、最後を跳ね返せばいいんでしょというような割り切りがうかがえているようで、相手を焦らせる展開に持ち込めていたかと言われれば、そこまでではなかったように思う。

 上手く行ったかどうかは別にして、岡山は前半、後半ともにチームとしての意図がうかがえる攻撃をやろうとしており、その点は悪くなかったと思う。

15分で気前よく与えた2失点に思うこと

 4-4-2のブロックで相手ボールを引っ掛けてからのショートorロングカウンター以外での千葉の攻め手というのは、基本的に川又か山下にロングボールを当てる→回収したボールをサイドに展開する→サイドの選手(SHまたはSB)が時間を作り、2人目(上がれる時は3人目も。基本的には2人で何とかサイドを攻略しようとする)が上がってフリーの状態でクロスを入れる、というものであった。

 開始2分で与えた千葉の先制点は、右サイドで本村と矢田で時間を作って岡山の左サイドを引き付け、スペースができたところに山下が飛び出して折り返しのクロス、クロスに川又が押し込んだ形。14分に与えた千葉の2点目は左サイドのリスタートから安田と為田がパス交換、安田が左大外でフリーになってクロスを上げたところに鳥海が合わせた形。特に1点目の起点になった本村は、ボールを動かせる良いSBだなと随所に感じた。

 いずれも千葉としては狙い通りサイドからのクロスで得点できたということになるのだが、1点目は矢田→山下が抜け出したところで濱田が山下の動きを確認できずにあっさりと抜け出されており、山下が折り返した時には川又のマークを誰も確認できていなかった。また2失点目も、サイドでのクイックリスタートで面食らった部分はあったとはいえ、十分に安田のクロスにブロックに入る時間はあっただろうし、鳥海を含めてファーサイドの選手たちへのマークに誰も入れていないのも問題。ゾーンで守っているなら、スペースを埋められていないのでゾーンとしても問題。失点にはならなかったものの、これも千葉の左サイドから安田が折り返し、ファーサイドの山下が完全にフリーでシュートを打たれるというシーンもあった。

 正直濱田と後藤という、一番ゴール前で守ることに対してプライドを持っていそうなCBの組み合わせで、得点力の深刻な不足、1点を取るのにも汲々としている現状のチーム状態を理解しているのかと言いたくなるような非常に「あっさり感の強い」「軽い」守りを立ち上がりの15分間で行い、その結果として2点も与えてしまったという事実は、かなり頭の痛い事実である。

総括

・前線から走れる選手を起用するようになったことで、90分守るという尹監督のベースができつつある千葉。特にお互いに走れてターゲットになれる川又と山下の2トップはなかなかよさげである。川又のコンディションがかなり上向きになっていそうなのも好材料。安田と本村のSBを上手く使ってクロスを上げる形を増やせれば安定して得点を量産できそうな気もする。後半はあまりにポジトラでミスが目立ち、岡山にボールを渡してしまうシーンが多かったので、もう少し田口を上手く利用して自分たちのボール保持を行なう時間、ポジトラから自分たちの攻撃に繋げる時間を作れればと思う。

・岡山は、現状でやろうとするサッカーにはやっぱり色々なポジションで埋まり切っていないピースが多いなという印象。上手く行っていない、相手に捕まっているからと、もっと速くしなければと焦って逆にミスが増えているシーンが特に多い。そんな中でも白井の相手のラインを一列越えて付けるパスからのスピードアップする攻撃であったり、徳元の相手にとって危険なプレー選択であったり、バイタルで受けての上門の右足であったり、スポットではピースが埋まったときの完成形、輝きを見せるシーンは確かにある。20試合目の現在地としてはなかなか厳しいところ、もどかしく感じることは多いが、今季は幸いにして降格がない。このもどかしさがどう先に繋がるのかをできる限り見届けていきたい。

試合情報・ハイライト


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?