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分譲マンションを購入検討するとき「売主は重視すべきか?」と聞かれれば、半分正しいがもう半分は正しくない、と答えます。理由はそれ以上に大事な要素は「担当者」だから。

建物の「質の良し悪し」は何で決まるか?

最近は、資産価値を重視して物件選びをする人が増えました。とくに分譲マンションはその傾向が強いといえます。資産価値と言えば、「最寄り駅までの距離」や「周辺環境」といった「立地」が真っ先に頭に浮かびます。それは大筋間違いではないです。

しかしながら、半年、1年後といった短期のうちに転売するつもりならまだしも、パートナーや子どももいるご家庭なら、10年から20年住む可能性も高いはず。さらに、そのときになって不動産市況がどうなっているかはわかりません。思いのほか30年、40年と結果として長く住み続けることも十分考えられます。

その際、時間の経過とともに違いが出てくるのが耐久性やメンテナンスのしやすさといった「建物の質」です。さらには、故障や不具合が生じたときの問い合わせ先や対応の早さといった「サポート体制」も無視できません。つまり、「分譲会社(売主)」や「施工会社」はどこか、といった要素は建物(不動産)を購入するときの最重要事項のひとつといっても過言ではないのです。

そもそも住宅業界は「クレーム産業」と言われた時代が長かったです。

質は底上げされ、参入障壁が上がった!?

構造や地盤といった目に見えにくいところが大事なはずが、そういうところほど欠陥が絶えない。悪質な業者の仕業であればそれは論外ですが、誰もが一度は聞いたことのある知名度の高い企業でも欠陥がゼロかと言えばそうではありません。人間のすることに完璧はないのです。

では、生活者が住宅の欠陥問題から解放されるには何が必要か。売主が対応すべき事項を客観的に明示し、判断するに相応しい人(組織)は誰か。保証の範囲はどこまでか。

現時点で、住宅はクレーム産業だと声高に叫ぶ人は(以前に比べ)かなり減ったと思います。

それは、(マンションに限っていえば)2つの大きな出来事があったからだと推察します。ひとつが「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(通称「品確法」、2000年施行)、もうひとつが「リーマンショックで競争力の劣るデベロッパーが淘汰されたから」。競争力とは「信頼性」「資本力」だと、ここでは解釈してください。

なかでも「品確法」の「新築住宅売主への10年間瑕疵担保責任義務化」と「紛争処理機関への依頼が手数料1万円」は、悪質業者を撤退されるに十分効果があったと考えますし、「住宅性能表示制度」は、市場からの信頼構築にコストをかけたがらない企業の事業意欲を削いだと思われます。参入障壁が低いといわれていたマンション事業は「腹をくくらないとできない商売」になったのです。

「実績」の重み

つまり、多少費用が上がろうが、それが顧客からの信頼につながることなのであれば先行投資と捉え、長期的に住宅分野でゆるぎない地位を築き維持するという経営判断と、それに参加したいと志した人たちが安定した住宅供給を継続している、と見るべきなのです。

したがって、1964年(昭和39年)「東京オリンピック」から高度経済成長期が終わるまでの間に分譲マンションを手掛けはじめ、現在も直近10年間供給上位に継続して名を連ねているデベロッパーは一定の評価がなされてしかるべきだと考えます。

たいてい、その様な企業が分譲したマンションは、中古流通の際アピールポイントとして「分譲会社は〇〇〇〇」といった宣伝文句が記載されているでしょう。それは少なからず、資産価値に寄与することを意味します。そのように捉えれば、実績のある売主を重視して選ぶことは、資産性を重視することと決して相反はしないのです。

では、次に分譲マンションの質は「事業環境によって変化しやすい」という特異性について述べておきたいと思います。あくまで基準を満たした上で、の話です。グレード毎のレベルといった方がわかりやすいかもしれません。じつはここがマンション(建築物)ならではの特色でもあるのです。

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