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#小説
0429:小説『やくみん! お役所民族誌』[7]
第1話「香守茂乃は詐欺に遭い、香守みなもは卒論の題材を決める」(7)
<前回>
野田彌(のだ・わたる)。澄舞県生活環境部生活環境総務課消費生活安全室長という長い肩書きを持つこの男は、身長190センチの巨漢だ。いかなるスポーツで鍛えたものか、首が太く体格もがっしりしている。年嵩は五十代半ば、両脇を刈り上げた短髪は半分ほどが白い。
「よおこそ! ささ、みんなに紹介しよう!!」
彼が深く響く声を
0421:小説『やくみん! お役所民族誌』[6]
第1話「香守茂乃は詐欺に遭い、香守みなもは卒論の題材を決める」(6)
<前回まで>
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朝の澄舞県庁前バス停は、多くの人が降車する。いつもなら、みなもはぼんやりその様子を眺め、そのまま澄舞大学前まで移動するところだ。今日は初めて、澄舞県庁前でバスを降りた。
道路から広い前庭を挟んだ向こう、コンクリート打ち放しの6階建てビルが、澄舞県庁本庁舎だ。上下に軽く押しつぶしたサイコ
0293:小説『やくみん! お役所民族誌』連載前口上
(1)はじめに 小説『やくみん! お役所民族誌』は、架空の自治体・澄舞(すまい)県の消費生活センターを主舞台にした公務員小説です。
消費者行政という仕事は、法律によって与えられた行政調査・行政処分の権限を武器として悪質業者に立ち向かい、消費者の被害回復を支援する、いわば正義の味方。そこには住民から日々さまざまなトラブル相談が持ち込まれ、その解決に向けてドラマが生まれます。
筆者は某県庁に2