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オーケストラを見た。『パラサイト』みたいな経験をした。あと、踊る指揮者がよかった。

*若干の『パラサイト』ネタバレがあります。

先日、知り合いの招待で、若者が主役のとあるオーケストラの演奏を見に行った。見るのは2回目だった。普段全く縁のない世界に触れられる数少ない機会だと思って行かせてもらっている。

そんな中、僕が毎回(といっても2回だけだけど)困ってしまうのが、チケット受け取りだ。「受付の人に名前を言えばもらえる」と聞いてなんとかなるだろうとその場ではなるのだが、実際に行ってみるとどうもうまくいかない。

1回目に行った時は、ホールの受付ではなく劇場の総合案内みたいなところでそれを聞いてしまって恥をかいた。

しかし、今回は2回目だ。うまくいくはずだ、そう僕は思っていた。

実際に当日、ホールの前まで行ってみる。するとどうだろう、全くわからない。ホールの正面玄関には何個も列があって、さらにどれが何の受付なのか全く書かれていない。

不親切だなと思いながら僕は、何となくそれっぽい受付の一つに並んだ。なぜそれっぽいと感じたかというと、子供連れの親子がいたからだ。これはきっと家族に団員の人がいて招待されたのだろうと。

二、三組待って、やっと僕の番になった。受付のテーブルを見ると、1回目に見た光景とは全く違う景色が広がっていた。それを見て困惑していると、受付の、スーツを着たおばさんが僕にこう言ってきた。

「団員のご招待の方はあちらですよ。」

僕の頭の中は「?」で埋め尽くされた。ん、なんでわかるんだと。なんで俺が団員からの招待だとわかるんだろうと。

確かに、今思えばその列は明らかに、ちょっと高貴な雰囲気が流れている列ではあった。でも、そんな一瞬で見抜かれるとなるとなんか悔しくなる。だって僕は何も、一言も口に出していないのに。

僕は、「ああ、そうなんですね、ありがとうございます。」みたいなことを言って、そそくさとその場を後にした。人混みの中に隠れていた「団員招待客受付」は、優しい感じの、セーターを着たお姉ちゃんが受付をしていた。確かに、あんなきついおばさんが団員招待の受付をしているはずがない。

といった感じで、別に恥もかいていないし、誰にも迷惑をかけていないから1回目よりは成長したと思うのだが、しかし、どうも納得がいかない。それは何かと言えば、僕から『パラサイト』でいう「匂い」みたいなものが出ているんじゃないかと思ってしまったのだ。

確かに髪の毛は茶髪と金髪の中間みたいな意味のわからない色をしているが、そんなことで判断されたわけじゃないように感じた。もう、僕の雰囲気自体の問題だと思う。そして、その受付の人は、高貴なお方たちを見まくっているため、僕みたいな田舎もんを一瞬で見分けられるのだろう。

中に入ってみても、白シャツに高そうなセーターを着た子供や、おばさま集団、おじさま集団を多く見かけた。この空間は割としっかりまじで高貴な空間らしい。

そんなこともあったが、二階席の端っこでオーケストラの演奏を2時間ほど鑑賞した。指揮者がとってもツボだった。その指揮者はたまに自分でヴァイオリンも弾くという方だったが、素人の僕から見ると、それはもう完全に踊っていた。クリスティアーノ・ロナウドがゴール入れた時の、脚と腕を開いて吠える奴を絶対やってた。

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また、とても不思議だったのが、演奏が終わると指揮者が一度去ってから戻ってくる、みたいなことを3回くらい繰り返すことがとても不思議だ。しかし、自然と拍手をしてしまう自分もいて、なかなかその2時間を楽しんだのだろうなと思った。

オーケストラを鑑賞して過ごす2時間というのは、とても贅沢な時間の使い方だと思う。自分は何もしていないし、何か知識や知見が増えるのかと言われれば、そんなことも、あまりない。

ただ、パンフレットに書いてあった言葉を見て、この行為には相当な意味があるなと感じた。

「気が付くと居場所が無くなってしまうような変化の激しい時代にあって、そして何よりテクノロジーに支配されがちな現在、ものごとに実際に触れて感じることができるオーケストラは、若者たちにとって以前にも増して重要な体験の場となっています。」

めちゃくちゃいいこと書くなと思いました。演奏している若者たちは、その、ある意味旧時代のものを駆使して、今を生きているのだなと。

今僕も部屋に音楽を流しながらこの文を書いていますが、実際に音を、生で聴く機会というものは減っていく一方でしょう。そんな時代の中で、このような機会を恵んでくれた僕の知り合いに感謝が絶えません。

僕もいつかお金持ちになって、いい服を着て、株主かなんかになって、その会社が協賛している演奏会を見に行きたいです。

最後にお金持ちになりたいって夢を掲げる若者をどこかで見たことがありますね。

では。



本もっとたくさん読みたいな。買いたいな。