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野呂野呂亮の振り返り

一年365日を半分に割ると、7月上旬にあたるらしい。それはとうに超えているし。初めての大学生活も春学期という半年を終えてしまった。
長い長い夏休み。僕の予定といったら、バイトと集中講義くらいだと野呂亮がぼやいていた。
そんなこと言いながら、バイトにそんなに精を出さないのは
「僕、夏の間は吸血鬼みたいに陽に当たると死ぬんだ」と言って、週4程度にとどめているらしい。

「いや、正直、大学に入れば、彼女が出来ると思っていた」誰もが通る?道かもしれないな。うん。知らんけど。
「そういう事言っている人って『高校に入れば彼女ができると思っていた』って言っているもんだよね」
図星だったのか遠い目をする野呂亮。
「そういえば、チャーミー。覚えているか?」
「何を?」
「初めて出会った時。『素敵な一夏を提供する』うんぬんのくだり」
作者でも死に設定と忘れていた件……と天の声。
「あー。でも、魔法使わないとか言ってなかった?魔法使わないと無理かも。使う?使っちゃう?使えば、彼女の1人や0人くらい土下座すれば出来るかもよ?」と使うよう煽ってみる。
「土下座って、そこまでプライド捨てないとダメ?」あ、聞こえていたようだ。
「いや、なんていうかね……」言動があれじゃん?って言葉は飲み込んだ。
「そういえば、身近な女の子って言ったら、君、喜多さん以外いるの?」
「まー、ゼミの人はその場限りのお付き合いだし?いないんだよね。僕友達少ないし」
「喜多さんをそういう目で見たことは?」
「んー、ないなー。そういう関係になったところで羊がい辛くなるだろうし。『僕に気は遣わなくていいよー』とか言って、黙って去りそうだし。それは嫌だよね」
そこら辺は健全で助かったし、喜多さんの意見を否定する形でもなくて良かった。
「まぁ、喜多も僕をそういう目で見たことはないだろうし。適当にうまくやっていきたいところだね」と続けた。
「そっか。今まで、そういう関係になりそうだった経験とかはある?」
「うんにゃ、ない」アッサリと答える野呂亮。
「それはよろしくないなー。恋愛なんて一歩踏み出さないと、どうしようもならん……よ……な?」
自論を展開しようと思ったけれど歯切れが悪くなったのは自覚している。サヤちゃんの一件を思い出す。一歩にとどめて欲しかった。
「なに?そのハッキリしない言い方。魔法で誰かの心を操るのって大丈夫なの?消費期限みたいなのないの?」
「魔法は生ものじゃないんだぞ?」
「何にしろ使わない。自分で育まないと意味がない」どーした?今日はまともじゃないか?

野呂亮は思い出す。
魔法と言えば、喜多と羊の2人がチャーミーと初めてあった帰り道。
魔法があったら何に使うか?
「僕は使わないかな?使ったら、きっと依存してしまうから」と答える羊。
「私は……色々思い浮かぶわね。優しい彼氏とか」とか答えていた喜多。
その喜多がチャーミーにだけ話したい用事があるとLINEを送って来たこと。
秘密にしたいことなど誰にでもある。それを深掘りしたい趣味はない。
おどけて話した彼氏が欲しいくらいだったら正直に話すだろうし、言いたくないと言っていたってことは嘘はつきたくないのだろう。
でも、チャーミーには話すらしいし。そのチャーミーが僕に何も言ってこないのだから、黙って見守ることにしている。
それが正しいかは今は分からないけれど。

年初めはこんなことになるとは思ってなかったし、入学時は彼女ができると思っていたのに、妖精がいるし。
今年のこの短い夏が濃すぎるなー。

2024年 文披31題 day17 半年

後書き
このお題はあっさり終わらせます。はい。

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