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リコピン教

リコピン教。教祖は鬼頭光司という人物らしい。その宗教活動内では別名で活動している。
布教活動の際に、団体名、その代表者の本当の
名前を伏せて行われることが多いため、鬼頭光司の名前は知られていない。
リコピン教の実態はカルト宗教のそれだったので、そのままを喜多さんに説明した。
宗教は抽象的な話になるけれど、救いや赦しに繋がれば意義があるとは思う。
しかし、その方法や目的が本来の宗教の在り方から外れた団体があって、それらが実際に及ぼした被害もあり、日本人という国民の宗教への無関心や防御姿勢に繋がるのだろう。
……洗脳という手段で、信じる人の人生を奪うなんてことはあってはならない。解散には加担する。

「……さて、喜多さん。私の力を使う前に考えていただきたいことがあります」
「はい。なんでしょう?」
「私の力は……竜巻のようなものです」
「竜巻ですか?」
「そうです。あなたが一つお願いをすれば、私はその通りのように魔法を使います。それは喜多さんがどんな形でお望みであっても叶えることができます」
本題はここからだ。

「ただ解散させるだけとか、法の裁きを受けてもらいたい、という形も可能ですし……もちろん、あなたがあなたの手で鬼頭光司とその一派らに裁きを下すことも可能です」
そう……喜多さんは最初は後者を望んでいた。
「あなたの手で裁きを下すとして、私はピストルであれ、毒であれ……警察の捜査で証拠にならないよう作れます。『魔法』で作ったものですから。竜巻の被害を裁けないでしょう?」
だから、如何様にもあなたの都合のいいように力が振るえる。
「バタフライエフェクト……『ブラジルで蝶が羽ばたくと、テキサスで竜巻が起こる』あなたの小さな願いが大きな影響を及ぼしてしまう可能性もあります。喜多さんのの思わない結果を招くこともありますし。願いが果たされた後、喜多さんの解放感までは残念ながら補償できかねます。その都度、帳尻合わせの願い…‥というのも、残念ながら全ては叶えることはできません。私はここにずっとはいられませんから」
言葉を切ってから
「後悔のない選択をお願いします。もう一度考えてから魔法を使っていただくようお願いします。私はここにいる間はいくらでも待ちますし。もちろん、今既に答えが決まっているならお聞かせ下さい。私は喜多さんの願いの是非を判断することなく言われるがまま叶えますよ」
希望的観測として何もない可能性もあれば、その副作用たる現象が10年後、20年後思わぬ形で現れることもある。人ならざる力とはそういうことで……だから、人は歴史において魔法を捨てたのかもしれない。
予測できない事象に、より混乱をもたらす力だから。

「……チャーミーさん。あなたのお話をのろっち……野呂君から伺った時から、ずっと魔法という力がどう言うものなのか分からないなりに考えて、どういうお願いの仕方、自分の本当の気持ちと向き合ってきました。ですので、その願いは心に決めています」

「私は………………」

2024年 文披31題 day19 トマト

後書き
リコピン教はテキトーに考えただけですので、そこにたまたまトマトのお題に当てはめられて、今回のようなお話になるとは私も思っていませんでした。
行き当たりばったりの進行といえど、1ヶ月31題という期間のそれなりの長さを感じました。
喜多さんが具体的に何を願ったのかは伏せますが、鬼頭光司氏なる人物の結末は、明日をお待ちください。

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