ニジェールの深層 砂漠を行く少年(下)
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ニジェールの深層 砂漠を行く少年(下)

この少年、取材時は年齢推定16歳。母親と弟妹3人がアルジェリアに向かう途中、砂漠でなくなった時は13歳だった。いずれも推定で、取材先との約束で住んでいる村などが推定できないように、書き込まない約束になっている。(上)では、少年の父親が、知人を向かわせる形で少年だけを連れ戻すことが出来た。その後、父親はアルジェリアに向かい、首都アルジェで生活を始めた。はずだった。だが、父親は逮捕勾留されていた。

逮捕容疑は密入国を手引きするネットワークの関係者、言い換えればニジェール南部ザンデールからアルジェリアへの密入国を手引きするブローカーだった。事情通の話である。言われてみれば、節目節目で父親の影が必ず少年に良いタイミングで見え隠れしていた。だが、勾留されて3年、少年は父親とは会えないままだ。

実は父親の関わっていたとされるアルジェリアへ向かうルートは古くからあったもので、このほかリビアへ向かうルートもある。こうしたルートを使ってヨーロッパへ向かう移民・難民が大移動をしているが、実際には「複数のルートと目的がある」と現地の関係者は言う。ここニジェールからアルジェリアやリビアへ向かい、また戻ってくるルートはほとんどが「物乞い」目的で向かう。物乞いの際には、同情をかおうという狙いか、子供が矢面に立たされる。子供も一緒にアルジェリア入りする場合おもに3つの形がある。1つは父親は村に残り、母子がアルジェリアに行くパターン。2つめは両親が渡航の金を準備して子供だけをアルジェリアに入れるパターン。そして3つめは知人などの小さな子供を「借りて」、もしくは「貸し出し」て一緒にアルジェリアに入り、物乞いで得たお金を手数料としてその家族に支払うパターンだ。いずれもニジェールに戻ってくるために「サーキュラー・イミグレーション」と呼ばれている。これを手引きするブローカーが居て、バスまで手配するわけだから、有力な調整役がいるという事情通の話にもうなずける。また、この動きには必ず子供が強制的に関与させられていることから、国連などは「チャイルド・オン・ザ・ムーブ」と呼んで、子供たちのトラフィッキング、誘拐などに極めて強い懸念を示している。

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ニジェールには他にもこうした移民・難民のルートがある。これは幾度となく伝えられる地中海・ヨーロッパ・ルートというもので、西サハラからニジェールへとつながる幹線道路、さらには国境を越えて流入、東側の国境からも同じく流入、さらに南部からはナイジェリアの過激組織ボコハラムの混乱から逃れようとして北上して流入する動きがあるが、これはニジェールにはとどまらず、そのまま北上してアルジェリア、リビアへと抜け、さらに地中海を渡ってヨーロッパを目指すものだ。移民・難民の移動を巡る問題はニジェールでの対応を失敗すると保護できるものも出来なくなる危機的な側面がある。2019年4月以降、ディファ州やアガデス州などは特にひどい状況となり、取材当時は現地入りは禁止されていた。

そして、ニジェールにはもう一つ意外な、移民・難民の動きがある。ニジェール国内から、もしくは周辺国からニジェール経由でリビアやアルジェリアに向かい、わざと保護される例がある。彼らの目的は、わざと保護されたあと、ニジェールへ移され、施設やキャンプで生活を始めている間に人道的な配慮から各国が自国への受け入れを行っている国からの受け入れられるのを待つのだ。ヨーロッパの国も受け入れており、わざわざ地中海を渡らなくても、ニジェールで待っていればその枠に入れてもらえるというものだ。受け入れには審査などがあり、通常は年単位での待機が必要になる。そして決定を待って受け入れ国へ出発することになる。こうした一時的な滞在をする事からニジェールが移民・難民の「トランジット・カントリー」と呼ばれる由縁だ。

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手元に地図があれば見て欲しい。ニジェールはアルジェリア、ベナン、ブルキナファソ、チャド、リビア、マリ、そしてナイジェリアの7カ国と国境を接している。国土の面積の3分の2が砂漠地帯である。ニジェールが古くから砂漠を通って移動する人たちの通過点になっていたのは言うまでも無い。しかし、現地の貧困生活を目の当たりにすると、アルジェリアでの物乞いよりもヨーロッパへ向かう方がよりよい生活が待っている、そうした期待がさらに高まれば、砂漠を行く少年家族のように死の危険を冒してヨーロッパを目指し、それがヨーロッパの難民問題に拍車を掛ける事は間違いない。

ニジェールの深層、ヨーロッパへ向かう移民・難民問題の根源がここにもあった。

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”百聞は一画像にしかず” お知らせするような肩書きも経歴もございません。大昔の従軍記者。現在はTVです。