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【全文公開】〈前編〉【堀江貴文×富山浩樹】北海道経済を盛り上げる「宇宙産業」の可能性

2013年北海道大樹町に設立された、宇宙開発を専業とする「インターステラテクノロジズ株式会社」(以下「IST」)。
2020年末にISTの新社屋と新工場が完成、えぞ財団の発起人であるサツドラHD富山社長とえぞ財団のチームが現場取材に訪れました。
今回は、その際に実現した富山社長とISTファウンダーである堀江貴文さんによるトークセッションをお届けします。

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◆過去のインターステラテクノロジズ社の経営者対談はこちら(①〜③)


◆【#えぞ財団 現場取材】インターステラテクノロジズのある大樹町に行ってみた!(①〜③)

堀江貴文プロフ用

◆堀江 貴文(インターステラテクノロジズ ファウンダー)◆
1972年福岡県生まれ。実業家。SNS media&consulting株式会社ファウンダー。インターステラテクノロジズ株式会社ファウンダー。元・株式会社ライブドア代表取締役CEO。東京大学在学中の1996年、23歳でインターネット関連会社の有限会社オン・ザ・エッヂ(後のライブドア)を起業。2000年、東証マザーズ上場。2004年から05年にかけて、近鉄バファローズやニッポン放送の買収、衆議院総選挙立候補など既得権益と戦う姿勢で注目を浴び、「ホリエモン」の愛称で一躍時代の寵児となる。2006年、証券取引法違反で東京地検特捜部に逮捕され、懲役2年6カ月の実刑判決。2011年に収監され、長野刑務所にて服役するも、メールマガジンなどで獄中から情報発信も続け、2013年に釈放。その後、スマホアプリのプロデュースや、2019年5月に民間では日本初の宇宙空間到達に成功したインターステラテクノロジズ社の宇宙ロケット開発など、多数の事業や投資、多分野で活躍中。


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◆富山 浩樹(発起人):サツドラホールディングス 株式会社 代表取締役社長兼CEO◆
1976年札幌生まれ。札幌の大学を卒業後、日用品卸商社に入社し福島や東京で勤務。2007年株式会社サッポロドラッグストアーに入社。営業本部長の傍ら2013年に株式会社リージョナルマーケティングを設立し、北海道共通ポイントカード「EZOCA」の事業をスタートする。
2015年5月に代表取締役社長に就任。2016年より新ブランド「サツドラ」の推進をスタートする。同年8月にはサツドラホールディングス株式会社を設立し代表取締役社長に就任。その他 AWL株式会社 取締役CMO / 株式会社コンサドーレ 社外取締役 などを務める。
店舗や地域の資産を活かして新たな課題解決型ビジネスの創造を目指す。


IST新事務所が完成!大樹町と北海道経済に起きる今後の変化とは?


富山:それではトークセッション形式でお話できればと思います。よろしくお願いします。

堀江:
お願いします。事務所が…やっとできました(笑)。
最初の事務所でもまぁまぁデカいなと思ってたんですけど、全然すぐ狭くなっちゃいましたね。

富山:以前の事務所には何年もいらしたんですよね?

堀江:もともと『Aコープ』だった場所らしいんですけど、最初はそのスーパーだった建物を改装してやっていました。すぐスペースが足りなくなったので横にプレハブを建てて、去年工場を増設して「わー広いね〜」なんて言っていたら一瞬でスペースが埋まってしまった。そこから事務所棟も増設して、それも仮設でずっとやってました。

富山:最初来た時みんなびっくりしてますよね(笑)

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以前の仮設事務所

堀江:そうそう、みんな本当に仮設の会社だと思っている。
ここができてみんな「広いねー」なんて言ってますけど、一年後はめっちゃ狭くなってますよ、きっと。

富山:ここには何人ぐらい入る予定なんですか?

堀江:多分100人くらいまでは入れると思います。でも、すぐ超えるでしょうね。僕自身、会社がデカくなっていく時のことをよく分かってるので。
ライブドアの時は、ITの会社だし東京だったんで事務所をいくらでも広くできて良かったんですけど、ここは事務所を広くしようと思ったら建てなきゃいけないんですよね。

富山:前回お邪魔したとき、代表取締役社長の稲川さんも「住む場所がない」と言っていましたね。近くにある『HOTEL TAIKI』もシーズンになったら満室になってしまうので、「どこに滞在したら良いんだ?」って。

堀江:JAXAの人とかが来るんですよね。

富山:そうなんですよね。この間2021年春から本格化していく北海道スペースポートの構想もお伺いしました。『スペースコタン』というキーワードがでていましたが、ロケットやスペースプレーンの打ち上げができるロケット射場・実験場などが集まったスペースポートの周りにまちができていくように、住む場所や大学との連携を進めていくという構想ですよね。

堀江:これからですね。

富山:ちょうどサツドラ大樹店の裏側が空いてるんですよ。地主さんが店舗と同じ方で、そこを都市開発で指定してもらえないですかと話しているんです。

堀江:あそこは上下水道が通ってないですよね。

富山:でも浄化槽はあるから、大樹町で指定してもらえれば工事できますね。

堀江:なるほど。順調にいけばですけど、本当にデカくなる予定です。

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富山:いまサツドラでもISTさんを応援させてもらっていて、この『超炭酸水』は買えば買うほど、1本につき1円がISTさんに寄付されて、ロケット開発の支援になるんです。

堀江:素晴らしいですね〜しかも売れてるんですよね?

富山:サツドラ全商品の中で一番の売れ筋で、年間4~500万本は売れていますね。

堀江:そんな売れるんですね。

富山:名前が超炭酸なんで、ロケットにぴったりだなと。北海道の企業が一度もスポンサードに付いたことがないと聞いて、北海道経済を応援する立場としてぜひこれをやってみようとなったんです。


堀江:北海道経済という意味でいうと、ロケットや宇宙開発は本当に一大産業になりますからね。あと、サウナとか盛り上がってますよね。

富山:十勝エリアは今めっちゃ盛り上がってます。

堀江:みんな必ず来てますよ、晩成温泉とか北海道ホテルとか。昨日サウナーの秋山さんがそう投稿していて、「じゃあうちの工場も見に来てくださいよ」と言ったら本当に来てくれていたみたいですね。

富山:“ととのえ親方”として有名な松尾さんがこの辺りをみんなプロデュースしていて、『サウナパスポート』と言う複数のサウナを回るチケットを出したりとか、面で取り組んで一致団結しているんです。なのでスペースコタンにもサウナがあったら良いんじゃないかとも思いますね。

堀江:それはすごくいいですよね。

自動車産業や町工場との提携がもたらすもの〜ヒト・技術・経済それぞれの未来〜

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富山:前にお会いした時もお伝えしましたが、大樹町にサツドラを作ったきっかけは堀江さんの記事で、「この宇宙産業が出来たら人口3,000人くらい増えるから」っていう堀江さんの言葉を当てにして建てたんですよ(笑)

堀江:本当になりますよ、絶対なりますよ。こちらもなると思ってやっていますからね。

富山:えぞ財団の団長である成田くんがトヨタ自動車出身なんですが、ISTさんにもトヨタの方が出向で2名くらい来ているそうですね。自動車産業から人が来る可能性があるんですか?

堀江:それはこちらから提案しているんですよ。
産業界として、自動車産業は昔のオフコンみたいな状態で確実にEV化・自動運転化によって産業構造が変わりますよね。

例えばテスラは自動車の会社じゃなくてバッテリーの会社なんですね。バッテリーモジュール・モーターモジュール・コンピューター・NVIDIAとか、モーターだったら日本電産とか…全世界的な寡占の会社ができて、その人たちがモジュールを提供して、組み立てメーカーはもうDellみたいな会社になっちゃうわけですよ。

しかも自動運転化すると必要台数が下がる。

理論的には1/10以下になるんじゃないかって言われてますから、自動車産業が崩壊して、トヨタさんとかは恐らくスマートシティとかの事業にシフトしていきますよ。そしたら地上では“燃焼”をやってる人達は不要になってしまうので、ある程度宇宙にシフトせざるを得ないでしょうね。

もう一つはトヨタさんとかが抱えているサプライチェーンで、そこも崩壊する可能性があるわけですよ。既にEV化によって、かなりのサプライチェーンは打撃を受けています。
そもそもエンジンが要らなくなり、オートマチックのギアボックスもまた不要になる。モーターは可変なんで、別にギアが要らないんです。

既にサプライチェーンは崩壊し始めている状況があるので、そこに携わっていた人には新しい仕事が必要ですよね。
宇宙産業ですべてを置き換えることは出来ませんが、トヨタさんには「そっち方面で結構来れるんじゃないですか」と提案しています。

富山:その反応はどうでしたか?

堀江:「それは面白いね、うちの社員を派遣します」ということになっていて。助っ人エンジニアという制度をつくって、企業や研究機関からの出向という形で人材を受け入れています。トヨタさんの一件があったから他の会社さんからも打診が来ていて、昔からの素材メーカーのでっかい会社とかから「うちからも出向させるよ」とかっていう話もありますね。

さらにもうひとつは優秀な技術者のモチベーションアップです。「うちの会社はロケットに関わっているんだ」っていうところはやっぱり確実にモチベーションアップしますよね。
サプライチェーンの町工場とかは特にそうですよ。それはすごい地味なパイプを曲げる会社だったりとかするんですが、パイプを曲げる技術ってめちゃくちゃ実は重要なんですね。
継ぎ手とかが必要無くなる分、重量軽減できるんで。そういった点でも、すごく地味なんですけど重要な技術だったりするところもありますね。

富山:町工場から転用できる技術って他にも沢山あるんですか?

堀江:めちゃくちゃありますね。例えば鋳物の技術もそうです。燃焼室の『マニホールド』という、元々は削り出しで作っていた燃焼の液体が一旦溜まるような場所を鋳造したり。
いまは『精密鋳造』という技術があって、鋳物でめちゃくちゃ細かい造形とかも作れるんですよ。そういう技術を持っている会社と提携したりとか、パイプ曲げの技術を持っている会社とも提携して配管をお願いしたりとかしています。

地味な話ですけど、配管の継ぎ手を溶接で一個減らすだけで重量何十グラムで減らせるんですね。要はそれの積み重ねじゃないですか。
やっぱり鋳物で作るとコストが安くなるし、量産もできる。日本の自動車のサプライチェーンがあるってことは、僕たちにとってはめちゃくちゃいいことなんですよ。

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IST新事務所

富山:工場は北海道の打ち上げ場所の近くにあった方が良いんですか?

堀江:将来的にはそうでしょうね。だからどんどん立地していくと思います。特に衛星の会社はこの辺に来るかもしれないですよね。
ここはとにかく射場が近いが魅力で、世界中のロケット会社を見てもそんな会社はないくらいめちゃくちゃ有利なんですよ。スペースXだって、ISSに打ち上げる時にはLAの工場で作ったロケットをフロリダまで輸送してますからね。

富山:それだけでかなりのコストですよね。

堀江:そうですね、さらに何か問題が生じたときにトラブルシューティングもしにくい。日本のロケットの『H-IIA』だって、名古屋の工場で作って種子島に船で輸送してますからね。コストもかかるし、不具合が生じたときに名古屋まで持って帰らなきゃいけないから大変なんですよ。

大樹町なら、ここの工場で作ったものも10分で着く。
めちゃくちゃ有利ですよ、土地もいっぱいありますしね。ほんと北海道はいいところですよね。大樹町のあたりは地味に食い物もうまい。

富山:地味にというか…うまいんですよ、すごく(笑)

堀江:大樹の人たちはもっとアピールすればいいのにと思っていて。毛ガニとかもめちゃくちゃうまいし、もったいないですよ。

富山:意外と、地元の人はあまり食わないですからね。

堀江:ししゃもも旨いですよね、すごい良い産地なのに全然アピールしないから、なんなんだこのアピール力の無さはと。もったいないですよ。


大迫力!「ZERO」の模型でロケットが一歩身近に

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ZEROの模型

富山:今後多くの人が大樹町にも来るという可能性があるんですね。

堀江:めちゃくちゃあると思いますね。ロケットってやっぱりワクワクするじゃないですか。だから観光資源としてもいいでしょうし、恐らく観光名所になると思うんですよ。
ZEROの模型ってもう見ましたか?

富山:このあと見せて頂く予定です。

堀江:めちゃくちゃデカいですよ。ZERO用のエンジンのモックも作ったんですけど、逆にZEROのエンジンは「小っちゃ!」と思いますよ、きっと。「こんなんで衛星軌道投入できるんですか?」みたいな大きさです。

富山:エンジンに対して機体がデカいということですか?

堀江:機体は燃料タンクなんで、めちゃくちゃデカいです。だから「新工場が出来てマスコミの人がたくさん来るし、絶対アピールになるから模型作ろう」となって。

「いくらかかるんですか?」「いやー...」という話だったんですけど、風船で出来るところがあったんです。
よくデパートの催事で、でっかい風船で飛行機作ったりしてるじゃないですか。あれでロケット作れば、ロケットは凹凸が少ない形なので簡単なんですよね。しかも「ロケットはアピールになるから安く作りますよ」って言ってもらえて、結構安く作れました。

エンジンは造形屋さんに頼んで木型を削って塗装して作りましたが、「こんなにでっかいんだ」みたいなリアリティが湧くし、やっぱり実物大の模型があると違いますね。

富山:なるほど、社員の方もイメージでしかなかったわけですもんね。スペースXの工場はかなりデカいんですか?

堀江:デカいですよ。スペースXは多分昔航空機製造の工場だった場所なのかな、工場自体もデカかったんですけど、LAに作っちゃったからもう事務所が足りなくなっていて、駐車場を潰して事務所にしたという状態でしたね。「車停めるところなくて困ってるんですよ」っていう(笑)。
スペースXもあんなにデカくなると思わなかったんじゃないですかね。

富山:さっきのお話で「自動車産業から人が移ってきて、エンジニアやサプライチェーンの波及がある」ということがわかったのですが、そのほかに北海道にとっての産業としてはどのような広がりがあると思いますか?

堀江:まずロケット関係から話すと、多分IST関連でも数千人が働くようになると思うんですよ。家族を含めたら万人単位になると思うし、周りの部品供給だったりとか衛星を作る会社とかまで含めると、数万人単位がこの辺りに来ることになると思います。

そうすると当然ながら宿泊だったり不動産だったり、ほかにも住宅、スーパーとかドラッグストアなどそういったものはもっと必要になってくるでしょうね。
毎週ロケットを打ち上げるみたいな話になると思うんで、当然ながら観光的にもその打ち上げを見に来る人達のためにホテルなどの宿泊施設も増えると思います。

すごい波及効果ですよね。北海道内の経済効果は約270億円になるという試算も北海道経団連・日本政策投資銀行からでています。あとは恐らく空港もできますね。空港はいま大樹町に千メートルの滑走路がありますけど、延伸してそこにジェット機が停められるようになるんで、もしかすると定期便が飛ぶようになるかもしれないですね。

富山:帯広空港も近いですし、利便性が良いですよね。

堀江:大樹のエアポートももっとちゃんと整備すると思うんで、そこからサブオービタル機やスペースプレーンを飛ばすベンチャーも来るでしょうし、夢はめちゃくちゃ広がりますね。
本当になると思いますよ。この土地は10年で変わると思いますよ、誰も信じてないですけど(笑)。

富山:でも町の方は結構そう考えているんじゃないですか?

堀江:いや、信じてないと思います(笑)。工場ができたから少しは現実味が出てきたかもしれないですが。
多分再来年に北海道スペースポート内に新たな射場ができて、それを見て「なんか変わってきたな」ってたぶん思うんだけどやっぱりイメージできないから、5年ぐらい経ってから「すごいことになってる」ってなるんじゃないですかね。

◆後編はさらに宇宙産業と北海道の展望についてのトークが進みます!◆
お楽しみに🐻◆

(編集:伊藤はるな)

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