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『キャンバスとゴミ箱が花になった話』シュールレアリスム“Advanced”(短篇)+実験詩『四季色花の話』

☆『キャンバスとゴミ箱が花になった話』
シュールレアリスム“Advanced”(実験短編小説)

 というわけで、オレは物騒な爆発音で無情にも叩き起こされた。
 ドコ――――――ッッ……! バコ―――ンッッッ!!
 一体どこの馬鹿が、こんな朝っぱらに騒いでいるのだろうか。
 オレは、ハッと目を開けた。
 すると──。
 なんとなんとなんとぉ!!
 オレの部屋の天井が、
たった今、撤去と解体作業が行われている真っ最中だった。
 解体している犯人は、巨大化したキジトラ模様のニャンコドンだった。
『ばかにゃ~~~~!!』
 ニャンコドンはそう叫んで、
巨大な猫パンチでオレをベランダ目掛けて、
はるか彼方に叩き飛ばした。
 オレはパジャマ姿のままクルクルと回りながら空中落下をつづけ、
ようやく墜落した先は、札幌の東屯田通りだった。
 しょうがないので――。
 オレはパジャマ姿のまま走ってみたら早速ポリスメンが追いかけてきた。
 これはまずい、
と思って軽く力んで走るとオレの速さはマッハ90になり、
一瞬で札幌駅を横切り、
ラーメン山岡家の壁を粉砕して更にそのまま横切り、
気づけばどっかの高速道路に入ってた。
 車は一台も走っていなかったが、
オレは徐々にスピードを緩めて、
軽くウォーキングするようなノリで時速320キロで走った。
 とはいえ──。
 なんだか、
さっきからオレの後ろからビュ──ゥゥッンという音が聞こえてくるので、
走りながら、ちょいと後ろを振り返ってみた。
 すると――。
 オレのうしろ──3馬身ほど離れたところにヤンヤンつけ棒が、
どういうわけか、
むりやり二等辺三角形のスタイルをキープしたままオレを追いかけていた。
 オレは逃亡犯の如く逃げるように、
「ひょえぇぇ」と叫びながら、ひたすら走った。
 すると、ヤンヤンつけ棒の後ろ、
今度は4馬身ほど離れたところにバッサバッサと音を立てながら、
「は────っはっはっはっはっはっはっ!!!!」
 極めて不愉快かつ不気味な笑い声をあげて、
つけ棒を追いかける変な鳥の姿があった。
 よく見るとそれは──。
 絵文字を多用しまくる、
ババア構文の使い手でお馴染みの“蝦空千鶴”だった。
 ──どうしてあいつは毎回しゃしゃり出てくるんだろう。
 まずはそう思った。
 何で毎回、
短篇の1話につき1回はストーリの一番良いところで乱入するのか。
 そう思いながら走っていると、
今度は蝦空千鶴の後ろ……2馬身ほど離れたところに、
プレステ4を乗っけたマミーポコが、
ハイパータップスピンを繰り返しながら、
「時代は電光石火なり! 時代は電光石火なり!」
 などと意味不明なことを喚きながら、
蝦空千鶴を追いかける。
 ところがぎっちょん。
 プレステ4を乗っけたマミーポコの後ろ、
10馬身ほど離れたところから、
時速420キロという北海道新幹線よりも速く走り、
迫りくる姿があった。
 ズキュ──────────────ンッッッッ!!!!
 一瞬にして、それはオレたちを追い抜いていった。
 よく見たら、なんのことはない。
 値上がりしたばかりの“からあげクンRED”だった。
 からあげクンRED──彼から学んだ教訓は、
『なまら香ばしい匂いがする』
 それだけだった。
 走っていると――。
 なんと左斜め上に、スーパー銭湯らしき建物をみかけ、
でっかい文字で、
『美少女による美少女のための美少女温泉Go!』
という極めてインチキ臭い看板が目に入った。
 なので、オレは迷わずそっちを目指すことにした。
 ようやく建物に到着して、自動ドアに入ろうとしたら、
でっかい何か──誰かが出てきた。
 どうやら全長2・5メートルのティラノサウルスだった。
 奴はオレと目が合うと、
「プギャアァァ」
 と言ってきたので、オレも間髪入れずに、
「んもっ!!」
 と言ってやった。特に意味はない。
 ふと、遠くの高層タワーマンションが目に入った。
 なんとなく見ていると、
今度はズシズシズシと音を立ててメカゴジラがやってきた。
 メカゴジラは美味しそうに、
高層タワーマンションを、
人間もろともバリバリバリと食べてしまった。
 オレはそれを軽く見届けてから、
自動ドアを通って、フロント受付まで行った。
 そこで、オレは一生に一度、
あるかないかの絶望的な気分になった。
 なんと受付嬢は――。
 蝦空千鶴だった。
(どさくさに紛れて、何で作者が登場してるんだ?)
 オレが入店するのを確認すると、蝦空千鶴は、
『ごきげんよう。いらっしゃい』と言ってきた。
「……ちょっと待て!
原作者がこんな所で何やってんの?」
『はてさて? 何のことじゃろうかのぅ?』
「いやいやいや! 
あんたさっき走ってるオレの後ろにいただろ!?」
『居なかったような気がするし、居たような気もする』
「……。絶対さっき後ろにいたよな!?」
『居たような気がするし、居なかったような気もする』
「あんた蝦空千鶴だろ?」
『……い、いや……違う』
「……じゃあ誰だよ?」
『わらわはアレじゃ……。
……えっと……や、やま……山田……』
「……ん? 山田?」
『わらわの名は、“山田山カッピー・ゴンザレス=マリア”じゃ』
「な、なな、なにぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!?」
『ふっはっはっはっはっはっはっはっ!!』
「適当な嘘ぶっこけ!! 
そんなふざけた名前の日本人が居てたまるか!」
『ほぉ! では、わらわが蝦空千鶴であるという証拠でもあるのかぇ?』
「証拠もなにも……あんたの胸についてるネームプレートに、
ちゃんと、“えぞら ちづる”って書いてあるべや!!」
『……むむ? ありゃ! 本当じゃ』
「ほれみれ。
だいたい何で作者が毎回毎回物語にしゃしゃり出てくるんだよ!
今回の主人公はオレだぞ!?」
『まぁそう力むな。
よく聞くがよい。たとえ自己における数多の芸術作品の一つであろうと、
この世に存在する人類の――もっとも誰一人からも視認されなくなれば、
それは文字通りの無意味で無価値なモノでしかないのじゃ』
「あんたは artoday - chiaki か!」
『はっはっはっ! わらわはAsano Chiakiではないぞ。
じゃがそなたの気持ちもよくわかる。
じゃから今日は特別にわらわが、この場を招待してやろう』
「え!? このオレも、
この美少女なんとか湯っていうインチキ銭湯に入っていいのか!?」
『……普段は男性禁制なんじゃが、
今日のところはわらわの顔に免じて特別、タダで許可しよう』
「……あんたがそう言う時って、
決まってロクなことが起こらないような気がするんだが……」
『いちいち、みみっちぃことを申すでない。
どうじゃ? 物は試しであるぞ?』
「……まさかじゃないが、
あんたお得意の妙な小細工はしてないだろうな……?」
『……ふっ。 
このわらわがそんな子供じみた小細工をするわけがなかろう』
「確認だが、ここの銭湯は本当の本当に美少女しかいないんだろうな?」
『それはさすがに愚問じゃろ。
この銭湯に、ずんぐりデブと糞ブスは一匹もおらぬよ。
したがって、
ここは貴様好みの天使みたいなピッチピチの美少女しかおらぬ。
どうじゃ? 嬉しくて嬉しくてたまらんじゃろぉ? 
鼻血ブーを堪えて進むが良い♪』
 ドヤ顔で胡散臭いことを言う蝦空千鶴だが、
なんだか実に嫌な予感がした。
「もし美少女が一人も──いや、
一匹もいなかったら蝦空千鶴はどう責任をとるつもりなんだ!?」
『それもまた愚問じゃ。 
少しは、わらわを信じて、騙されたと思って行ってみるが良い♪』
「そうか。そこまで言うならわかった。 
じゃあオレはあんたを信じるからな!」
 とオレが言った瞬間――。
 ピーンポーン……。
“イラッシャイマセー いらっしゃいませー♪”という、
自動アナウンスが流れた。
『おや、誰かお客が来たようじゃ……』
 ブオオオオォォォォォォォォォォォォッッッッッ!!!!!!!
 なんだか急に――。
オートバイのような爆音が耳元で聞こえてきたな〜と思ったら、
急に“何か”が蝦空千鶴の顔面にバボ〜ン!とクリーンヒットした。
 よく見るとそれは――。
 トラ縞模様の野良の子猫――ニャンコドンを乗せた、
直径8メートルのフランスパンだった。
 蝦空千鶴は(☓○☓)みたいな顔をしながら、
「へぶし!!」と悲鳴をあげて後ろに倒れた。
 するとニャンコドンが蝦空千鶴に飛び乗って、
『ちーちゃんはバカにゃ〜〜〜〜!! 
ちーちゃんはバカにゃ〜〜!!
ちーちゃんはバ/ちーちゃ/ババババババ/bbbbbb/
ババババbrrrrrpppppppppp/ちーちゃん/にゃにゃにゃにゃ/ちちち/
ち/バーバーバーバーバーバーpppppppppppp/brrrrrrrrrrrrrrrr/cccc/
バババババカpppppp22222222222222ちちちちちちちちちtttttt/ゃ〜!/prrr/
ちーちゃ/〜!/000000000000000000/11111111111/aaaaaa/
aaaaちーちゃ/にゃ/
ちーちゃ/ちちちち/brrrrrr/
papapapapapapa/prrrrrrrrrrrrrr/ニャニャ/ちちちちち/ニャニャニャ/
ニャ/にゃ〜/!!!!!!/bruru/rururrrrババババババ/ニャ/バー/ババババ/
ちちちちちちバババ/バババ/
bu-bubbubbbbbbbbb/ちーちゃんはバカにゃ〜!』
 と言って、
連続の猫パンチをポカポカポカと蝦空千鶴の体のあちこちに叩き込む。
 よし今だっ! ……と思ったオレは咄嗟に、
その美少女が居るんだか居ないんだかよくわからん、
女子脱衣所&大浴場へとまっすぐに向かった。
 トントン拍子で進めるかと思ったが、そうでもないらしい。
 どうやら、廊下を走ってるオレの後ろから、
猛スピードで突進してくる巨大雪男のイエティが高々とジャンプし、
オレにドロップキックを喰らわせてきた。
 当然のことながら、
オレは吹き飛ばされるわけだが、軽く200メートルはぶっ飛んだ。
 たいして広くないはずの廊下で200メートルという表現も、
いささか妙な話だが、
とにかく200メートルだ。
 だが、飛ばされてラッキーなことに、もう脱衣所に到着した。
 オレはおそるおそる暖簾に手をかける。
 さっき蝦空千鶴は言っていたよなぁ。
 ──『騙されたと思って行ってみるが良い♪』
 オレは勢いよく美少女が待つであろう脱衣所に入った。
 そしたら──。
「……だ……騙された!!」
 女らしき“何か”が何匹か、いたことはいたが、
まずロクな顔ぶれではなかった。
 一人は、体は女でも、顔がヤモリだった。
 一人は、顔は……まぁ普通でも、体が雪だるまだった。
 一人は、顔も体も……どっからどう見ても……こいつは……
こいつは……ど、どど、ドドド、ドラドラ……ドラえ……ドラえも/
……ドド……ドドドドラ/ドドドドドドドドドドドドddddddddrrrrr/
ドドドドドラえも〜〜〜〜Σ(゚д゚lll)/ドラえ/ドドドドドドラドラドラドラドラ/
ドラドドドドドドラドドドドドラえ/ドラえも/
ドドドドラえも―――(゚´Д`゚)゚/
な〜に?のび太くん ᕕ( ᐛ )ᕗ /ドドラドドド/
ドドラえドラえも―――(゚´Д`゚)゚/
もぉ〜しょうがないなぁ!のび太くんは!(΄◞ิ౪◟ิ‵)ʃ /
ドラえも――――――(゚´Д`゚)゚/
な〜に?のび太く/ドドドラドラドドドラドドドラえも―――/ドドドラえ/
ドラえも〜〜/な〜に?のび太くn/ドラえも―――ん<(ΦωΦ)>/
もぉ〜しょうがないなぁ!のび/ドラえも―――/ねぇねぇのび太く/
ドラえも/な〜に?のbi/ド〜〜ラ〜〜/のののののびのののび太ku/
えぇ〜〜も――――――Σ(゚д゚lll)/ねぇねぇのび太く/ドラえも―――/
もぉ〜しょうがな/ドラえも―――!゚(゚´Д`゚)゚/何だい?のび/ドドドドドラ/
ドララえも〜〜〜〜/ねぇねぇのび太く/ドラえ/のび/もん/もぉ〜しょう/
ドドドドドラえ〜〜もぉぉぉぉ〜(゚´Д`゚)゚/
もぉ〜しょうがないにゃ〜!にょび太くんは!(´◉◞౪◟◉)/
ニョラえも―――(´⊙ε⊙`)/
何だい?のび太く/ドラえも/ドラえも/ドドドドラえも―――Σ(´∀`;)/
何だい?の/dddddddドドドドラドラえ―――/
ねぇねぇのび/ドラえも―――/ねぇねぇのび太く/
ドドドラえも〜〜〜〜Σ(゚д゚lll/
ドドドドドドラえも―――/どどどドラえも―――/のび太く/
ドラえも――/もぉ〜しょうがないな〜のび/ドラえも―――/
な〜に?のび太くn/ドラえもももmmm/ドラえも―――/ねぇねぇのび/
ドラえも―――/ねぇねぇのび太/ドラえも―――/のび/ddddddddrrrrr/
ドドドドラえも―――/のびびbb/ドドド/のびのび/ドドドドラ/
ドラドラえも―――/ドラえも―――/のbi――――――bbiiii/
bibbiiibibibibibi555555555555558888888/ドドドドラ/
えも―――/dddddrrrどどどどどddドラドラ/
ねぇねぇのび太ku/ドラえもぉぉ〜〜〜〜/ドラえも―――/
ド〜〜〜〜
ラ〜〜〜〜
え〜〜〜〜
も――――――っ/
ドラえも――――――/ドラえも―――――――――――/
ドドドドドドドドドドドドラドラドラドラ/
ドラえ/ドドド/ドラえも/ドラえも/
ドドドドドラドラドラドラえ/ドラえ/
ドラえもぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜(以下略)

				だった。

 そして一人は、マッサージチェアに座ってオレの方をみていた。
 そいつは女っちゃ女だが、
ほぼ本物そっくりなダチョウの着ぐるみ(?)を来ていた。
 大きく開けた嘴の中には、極めて形而上学的な女の顔があった。
『ん? おや、あんたもしかして……のぞきってやつかい?』
「ええ。まぁ端的に噛み砕いて言えば、そういうことになりますねぇ。
ただ、まぁ正確に言えば、乱入ってことになるんでしょうけど」
『あんた何もわかっちゃいないねぇ。
あんたもこの世界も全てはメタファさ……ブベベベベベ0000111111100
001111000000bbbbbrrrrrxxzzzzブベベベベbaababababa――』
 極めて形而上学的な顔の女はそう言うと、
嘔吐する仕草をした。
 こんな時にゲロか?
 と思っていたら、女は口から七色に光る小型のオウムを吐き出した。
 オウムは元気にバサバサと周囲を飛びながら、
『マネタイズマネタイズ! 
ヒライスバーガー焼肉! マネマネ! マネタイズ!
マネタイズ! ヒライスバーガー!
マネタイズ! 大豆ミート! 
ビーフ! つくね! 焼肉!! ヒライスバーガー!!』
 などと、解読不能なことを喚き出した。
 あまりにも煩いので、
オレはオウムの頭に、
たまたま近くにあったピコピコハンマーで、
ピコン♪と叩いてやったら――。
 オウムは、ニワトリに変化した。
 なんか“これじゃない”感があったので、
 もう一度、ピコン♪と叩いたら、
今度は滅多に拝むことが出来ない、
“イリオモテ ヤマネコ”に変化した。
 触ってモフろうとしたら、
ガブッと噛まれたので、
咄嗟にピコハンでもう一度叩いてやったら、
今度は鶴バージョンの蝦空千鶴に変化した。
「ふっはっはっはっはっは!!
 は――っはっはっはっはっはっはっ!!!」
 オレの鼓膜の牙城を根こそぎ吹き飛ばすかのような、
けたたましい気色悪い不気味な笑い声が反響し、
うざいことこの上なかった。
 この短い貴重な一話で、
あのメス鳥は一体何回登場すれば気が済むんだ?
 あのロリババアめ。
 捕まえようとしたけど、
ヤツは脱衣所の天窓から笑いながら、
バッサバッサと逃げていった。
 焼肉ではなくて、
焼鳥丼にして食ってやりたい気分だった。
 (唐揚げも捨て難いが。特に手羽先っ!)
 バッサバッサ高く飛んでいった蝦空千鶴だったが、
不運にも、たまたま空を飛行中だった通りすがりの、
『アタック抗菌EX 超特大サイズ』に、
ゴチ―――ン♪とクリーンヒットした。
 蝦空千鶴は「いべし!!」と悲鳴をあげ、
そのまま墜落するかと思ったら――。
 青空が一瞬、群青色の夜になり、
蝦空千鶴は光輝な七色の花火となって、
八方に散りながら、空を燦爛たる色に染め上げた。
 そしてまた空は元通り明るくなった。
 オレはそれを見届け、なぜか安堵し、
再度脱衣所を見渡した。
 すると、もう周囲には誰もいなくなっていた。
 それどころか脱衣所には――。
見覚えのある観葉植物(ウンベラータ、フィカス・アルテシーマ、
フィカス・ルビギノーサ、テレカヤシ、ユーフォルビア、
ポトス、オリーブ、アスプレニウム、ペペロミア・アングラータ、
サンスベリア・ローレンチ、サンスベリア・ムーンシャイン、
カランコエ、ベゴニア、フィットニア・スノー、
シュガーバイン、リプサリス、
ストレリチア、ダバリアetc)で埋め尽くされていた。
 オレはおそるおそる触れようとしてみた。
 すると――。
 観葉植物たちは突如、縦横無尽に移動し、
徘徊し、浮遊し、
そして、空間全てを支配するにまで至った。
 やがてそれは――。
 マルセル・デュシャンやマウリツィオ・カテランを彷彿とさせる、
既に大衆の普遍的な美術概論では終息したはずの、
古くも新しいコンセプチュアル・アートになっていた。
 オレは引き込まれるように見とれていると、
それらは眩く色を変え、
46億年分の夜を背負った1頭の蝶になった。
 蝶は46億年分の夜という重さを感じる様子もなく、
軽やかに羽ばたきながら、
ゆっくりと天窓の外の世界へと飛んでいった。
 脱衣所が本当の意味での〈無〉になったのを確認してからオレは、
心の全てを切り替えた。
 オレは勢い良く大浴場のガラス扉を開けた。
 ローマ風呂よりも広い大浴場には――。
 極めて抽象的な体格と顔立ちと、
表情をした複数名の裸の女達がそこにいた。
 オレはその光景を見た途端に――。
 なんだか無性に鼻の奥がムズムズしてきた。
 どうやら未来永劫における一生分の鼻血を出したい気分だった。
 で、当然のことながら、
オレが入ってきたのを確認すると女達は、
『きゃ〜!』とか『いや〜!』とか『ぎゃ〜!』とか、
『男よ〜!』とか、
『変態キタ――ッ!』などと喚いて盛り上がり、
オレの頭をターゲットにし、
風呂桶だの石鹸だのタオルだのサボテンだの上履きだの、
高級腕時計だのレッドブルだのモンスター缶だの、
目覚まし時計だのノートパソコンだの、
茶色く変色した超きったねぇ入れ歯だの、結婚指輪だの、
ありとあらゆるものを、
ぼんぼんぼんぼん投げ飛ばしてきた。
 言うまでもなくオレの頭には、それらがバコ―――ン!!と当たったり、
ボカ―――ン!!と当たったり、
ゴチ―――ン!!と当たったり、
ガチョ―――ン!!とクリーンヒットしたりして、
0.4秒ほど軽く意識が飛ぶ中でも、
オレは巨大な浴槽へと受験生の如く突っ走った。
 そしてオレは頭に4段式のたんこぶを作りながら、
湯船に足を入れた。
 入れた瞬間に、
風呂を満喫したのにワニと人食いザメに足を噛まれた。
「いてぇ」と咄嗟にジャンプをすると、
ようやくオレは、鼻の奥から大量の鼻血を、
噴水の如く放出させることに成功した。
 鼻血はわずか3秒で7000万ギガリットルに達し、
赤→橙→黒→赤→橙と変色を繰り返し、
やがてそれは巨大なドラゴンを形成した。
 ドラゴンは極めて形而下学的な炎を口から出して大浴場の壁を粉砕した。
 オレは粉砕された壁の外へと出た――と思ったら――。
 そこは宇宙空間でオレは月に近づいていた。
 だが、月は突如、両腕をビヨ〜ンと出し、
オレの顔面に左フックを叩き込んできた。
 地球に吹っ飛ばされるオレ。
 オレは地球の大気圏に突入し、
体中に炎を身に纏いながら、急降下していく。
 地面に叩きつけられて死ぬのか――と思っていたら――。
 ベコッとハリボテのように地面を貫通して、
そのまま落下して、マントルを貫通して、
マグマを貫通して、粘土を貫通して、
よくわからん硬い土を貫通して気づいたら――。
 ブラジルの大地を突き破っていた。
 ブラジル版ケバブことシュラスコを喰おうかと、
思っていたのも束の間で、
オレはまた空高く飛び続け、
成層圏を突き抜け、宇宙を突破し、
また月に近づこうとしていた。
 が、月は再び、両腕をにょきにょきと出して、
今度は右ストレートがオレの顔面に叩き込む。
 オレはまたブラジルの大事に戻ってきたので、
今度こそブラジルケバブをと思っていたが、
地面を突き破って(以下ry)pppppppppprrrrrrrrrrrrrrrrrr/
/prrrrrpppprrrrrrrrrrrr/日本に戻ってきた。
 とはいえ、戻ってきた場所が問題だった。
 そこは見知らぬ小学校の職員室だった。
 しかも先生は全員揃っていた。
 ただし、先生は人間ではなく、
ライオンとオオカミとオウムとウサギだった。
 オレはおそるおそる、
「か……カップラーメンが食べたいのです」
 勇気を出して言ってみた。
 すると、ライオンの先生が、
『せmkらせrんふぁんlrtっaaaarrrr22222222222ffff』
 と言った。隣りにいたウサギの先生も、
『22222222222200000000000000111111○○○■■■■○○●●●』
 と言ってきたので、オレはうなずいた。
 そして全教職員に見られながら、
オレは誰もいない校長室に入り、
校長先生の机の引き出しをそっと開けた。
 そこには――。
 ブタメンが入っていた。
 オレはそれに手を伸ばし、
ビニールを破って、蓋をはがして、
校長室に置いてある電気ポッドでブタメンにお湯を注ごうとした。
 てっきりお湯が出てくるのかかと思っていたら――。
 お湯の代わりに《46億年分の朝》が出てきた。
《46億年分の朝》は、
電気ポッドから止まることなく出続け、
やがて、先生方全員と校長室と職員室と、
オレと《世界そのもの》を侵食していった。
 どうやらオレは、
ルネ・マグリットの世界にいるような錯覚に陥った。
 止まることのない色の変化。
止まらない朝と夕方と夜。
 気づけばオレは意識だけの存在になり、
世界というキャンバスの一部になっていた。
 主人公の座は、もはやオレではなく、
たった一枚の“読む絵画”だった。
 そしてそれこそが、
本作の読み手であり大衆の一人である《あなた》に、
読むことで見て欲しかったというのが、
この話の本当の趣旨である。  



シュルレアリスム短編小説『キャンバスとゴミ箱が花になった話』
――fermeture.




☆     ★     ☆






☆ 実験詩『四季色花の話』


いらっしゃいませ ようこそ私 

遠慮せず どうぞこちらへ

さぁさぁ おくつろぎになって

もうすぐです

もうすぐ 甘くて美味しい〈世界〉の出来上がりです

さぁ じっくりみて

楽しくご賞味くださいませ



 世界がまさに今
  社会のWiFiを繋ぐとき


  全ての生命たちは



 意識と目覚めのドローンを


  太古から今へ
    未来へ


 数多の〈世界〉へと飛ばします


さざ波のように生まれる
 数多の小鳥たち 



終わらぬ放浪を続ける
 渡り鳥たち



 夢幻を生きる
  夢の鳥たち


彼ら
彼女らは皆


 季節の〈一瞬〉を


  季節の〈今〉を

歌い続けます


 歌声は魂のブレイド(剣)


  宇宙を 空を 海を

    大地を
    山々を
      切り裂きます


気まぐれな神々のカーソルは

 神秘のモニター越しから
世界を
   クリック


神界のディスプレイに映る


 麗らかな春


8kや16kの色彩

終わらない四季の連鎖
四季の終わりから始まり


    香を放ち
    ババロア色の恋は

瞬時に芽生え  


春のメレンゲは
  数多の桜の花びらと一緒に

 生命に賛美歌を

       奏でてくれます


一度きり
    そう
      一度きり

ノイズのない 春の歌声


マドレーヌ色の夕日が沈むと

マロン・オ・ショコラの夜が


  世界を優しく包装します


 ほんのり甘くて

    ほんのりにがい

      ビターチョコレートの夜空


   無限の星々は

地球を照らす
   ハザードランプ


 流動する

    世界のスイッチは切り替わり


サイコロバターと

  ホワイトミルク色の朝がやって来て


 甘い香りが漂えば 


モンブランはまた

     桜色に輝いて


新たな命を運び 

  新たな〈四季〉を
          導いてくれます

でも

季節は時に


    春霖として

 止まらぬ
 大粒の涙を
      流します


 春の涙は

  空のスプリンクラーから放たれる

      水の機関砲

水は

カステラの大地と

ピスタチオ色の世界に
   降り注ぎ


春の食べ残しを

 余すことなく

いただきます

すると

 気づけばもう夏


大地はペパーミントグリーン

 空はラムネ色


生クリームを乗せた
   クレープ色と一緒に


  ラ・フランスジュースの色彩が


     世界を駆け巡ります


マンゴースムージのように輝く

     夏の落陽


サイダーの

  泡のように


弾けて
       終わる

季節から
         秋

気づけば

赤ワインと

フレッシュベリーソースの紅葉が

もう目の前に


木の幹たちは 
シナモン・スパイスを
           織り交ぜた
       アップルタルト


生きとし生ける全てに
   微笑みます


  ハチミツ色の

 イチョウ並木が立つと

  白砂糖と
生クリームの冬は
   あっという間

でも
冬のデコレーションケーキには

 苺がありません


それもそのはず


  だって

冬は


全てが
生クリームだから


   ところが


 そっと


    そっと


雪に隠れた山と

木々は 

出来立て ほやほや

瑞々しく
微笑む
フィナンシェです


その笑顔は
とても無垢な

コーヒーシュガーです


冬の夜は

  とろける

エクレアケーキのよう


手つかずの雪は

 出来たてのミルフィーユ


サクサク


 サクサク


優しくて

    でも

      少し

      切ない

そんな音色を奏でます



 世界は季節という

新しい

色と香りの
スパイスで

 彩られ

  また

新たな

生命の息吹が

  往来します


昨日も

   今日も

      明日も

ごちそうさま




創作実験詩『四季色花の話』
――fermeture.





★《今回のnote制作環境と動画紹介》
   『Memories of Paris -musette-』



使用したPC:MacBookPro 14inc 旧型(Apple)
使用したOS:Fedora Design Suite(Fedora Linux)




ということで、以上である!
いかがじゃったろうかの?
はっはっはっ!
前作の花の世界で暮らす少女の話と、
今作2編を同時収録しようかワンチャン迷ったのじゃが、
あきらかに長過ぎてしまったため、
分けて投稿という形になったのじゃ。
お察しやもしれぬが、
前作に続いて、オールフランスである。
シュルレアリスム(超現実主義)に関しては難しく考えず、
あなたの感覚で読んで楽しんでいただければ嬉しい。
実験詩に関しては、アリア嬢の詩の構成と、
写実主義を参考にしつつ、
未来派ミックスの旧クレアシオニスムからのウルトライスモを、
なるたけわかりやすく織り交ぜた現代よりの詩となっておる。
2作品を全て読んでくれた『あなた』はどう思い、どう感じたか、
是非気軽にコメント欄に感想などを書いてくれたら嬉しい!
ということで、次回の蝦空noteでまたお会いしよう!
では、また! アデュ!


ここまで読んでくれた全ての方々に心から感謝を申し上げたい!



 Merci beaucoup d'avoir lu jusqu'à la fin ♡


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