鳥の目

空気は大地にとどまり
風となるには時を要する
繰り返されてきた旅の途中
わたしは待っている

一帯の境界
けものと幾ばくかのひとびとの
山に溶けこむゆるやかな境界
(ここにはいないひとびとと幾ばくかのひとびとの)

渡りの鳥だ
ああほんとうだ渡りの鳥だ
青年の眼差しが
わたしに語りかけてくる

おまえはこれからどこへいくの
わたしは答える
南へ
青年は頷き少年は問う

鳥のことばがわかるのですか
青年は笑う
いいやそんな気がするだけだ
いまはただわかりたい気がするだけだ

一帯の境界
けものと幾ばくかのひとびとの
山に溶けこむゆるやかな境界
(ここにはいないひとびとと幾ばくかのひとびとの)

しばしの沈黙
青年は少年の肩をぽんとひとつ
風が生まれる
さあ行こう

わたしは羽を二度振るわせて
風に乗る
青年と少年
ふたりは昼餉に向かって歩き出す

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