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サマソニのない夏

 思いおこせばちょうど1年前。20周年アニバーサリーイヤーということで例年以上に大物が目白押しだった2019年サマソニ。最終日のマリンスタジアムの大トリはあのチェーンスモーカーズ。かれらもよかったけど、盛り上がったのはその前を務めたZEDD。音響やビジュアルまで含めた迫力あるステージアクトの素晴らしかったこと!

 東京オリンピック・パラリンピックの影響で、もともと20年8月のサマソニは計画されておらず、9月の連休に今年限定のスーパーソニックが予定されていました。

 しかしコロナ禍の入国規制や、来場者、アーティスト、スタッフの安全確保が困難、ということで、ポスト・マローンなど楽しみな大物もブッキングされていたこのイベントも残念ながら来年に延期が決まってしまったのです。

 オリ・パラとコロナに翻弄されたサマソニ。東西で30万人を動員したイベントだったので、がっかりしている人も多数いるはず。

 スマホとイヤホンさえあれば、いつでも、どこでも、定額で、しばしば無料で、最新の音楽や画像が鑑賞できる今なのに、わざわざお金を払って、出かけて、かならずしも快適とは言えない天候下にわが身をおくフェス。

 しかし一歩会場に足を踏み入れ、イベントのTシャツを着て、音響や映像を耳だけでなく全身で感じ、手や腕を振り、ジャンプし、アーティストや周囲のオーディエンスと一体になってみると、その場が熱烈に支持され、市場として成長し続けてきた理由がよくわかります(*後述)。

 音楽や画像はイヤホンで自分の目と耳だけで鑑賞するという、個人的に「消費」するスタイルが普通になりました。だからこそ、その方法で味わうことのできない、全身で感じる音響、炎天下やにわか雨すら一体感を高める集団的な「体験」が、一方で支持されているのでしょう。

 昨年マリンスタジアムで撮った写真がスマホの中に残ってました。昨年まであんなにも当たり前だったフェスの風景が今は異様に見えてしまう。たった1年で、それほどわれわれのメンタリティは変化しました。

 来年の夏はあの当たり前を取り戻さなければならない。

 暑さだけが昨年と変わらない、サマソニのない夏に、そんな思いを致してます。

 *ぴあ総研が毎年発表しているポップス音楽フェス市場の調査結果によれば、その市場は過去10年で2倍となり、2019年は前年比12.1%増の330憶円規模に、動員も同8.5%増の295万人を記録。しかし2020年は自粛や延期で市場規模は昨年の十分の一程度に落ち込む見込み。

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