見出し画像

ロボットに代替される仕事に共通する3要素

20年後の事業を作りたいというお話をお聞きします。それも接点のない複数の企業の方々が同時に言い始めた気がします。私は20年先の未来を考えるというのは特別な意味があると考えています。

例えば、伊勢神宮の式年遷宮が20年毎です。3年とか5年単位で考える中期計画とは違い、10年を超えると、不確実性の要素が大きくなります。

20年前、まだWindows95を使い、電話代を気にしながらテレホーダイし、日常ではポケベル全盛のころ、我々は現在のようなスマホでつながる世界を想像できたでしょうか。

不確定要素を多分に含む20年先を考えるからこそ、人も企業も、固定観念というリミッターを外し、目先の利益ではなく何をやりたいのかを、脳みその限り考えることが必要になります。

今から20年後というと2040年。今よりはるかにテクノロジーは進んでいるでしょう。団塊ジュニアは60歳を過ぎていますが、まだまだ現役で働いているでしょう。

そこで、20年後にロボットに代替されていく仕事を考えてみます。様々な研究機関がレポートを出していますから、多くの仕事が思い浮かぶでしょう。例えば、スポーツの審判や電話のオペレーター、銀行の窓口などがなくなる仕事として挙げられています。

しかし、自分の仕事が本当になくなるのか、は、本質を見なければいけません。例えば、Specteeをはじめ、最近AIアナウンサーが各所で登場しています。しかし、AIアナウンサーは現実のアナウンサーを置き換えてしまうのでしょうか。

アナウンサーの仕事は非常に高度な正確性を求められる仕事です。つまり元々が「ロボットになる」ことを要求されている仕事だといえるでしょう。その点からするとロボットにできるところはロボットに任せた方が良いと言えます。

しかし、プロのアナウンサーは違います。実際のところ原稿を渡されてそれを読んでいるだけではなく、一方で表情を作り、スピードを変え、文脈の中で端寄ったり、意見を挟み、はたまた相手の反応を見ながら説明を補ったりという事をやっています。それはロボットには代替されることのない「プロの仕事」であるといえるのではないでしょうか。

アナウンサーの方々でも一様に「辛い」仕事があります。それは、一切のプロ意識を排除して読み上げていくだけの仕事です。例えばテレビやラジオでは、災害時に避難所毎に避難している人のリストを夜通し読み上げるという仕事があります。

3.11の場合は、自身も被災者であるのに、多くのアナウンサーが寝る時間を削って避難者の情報を夜通し読み続けました。これは要するに自身のプロとしての能力を使わず、ひたすらロボットになるしかなかった業務です。これは明らかにロボットに任せた方が良い業務でしょう。

このように、ロボットに任せた方が良い仕事には3つの要素があると考えています。それは、「反復性」、「正確性」、「スピード」が求められる仕事であるという事です。

私は経理財務に20年以上従事していましたから、経理の仕事の50%以上はこの反復性・正確性・スピードに特化した業務であることを理解しています。それはロボットになることを要求される仕事であり、いずれロボットに置き換えられていくべき仕事なのです。

経理・財務の仕事でも残りの50%はプロの仕事です。自らの決断で柔軟な個別対応を求められるような仕事です。それこそが経理・財務の仕事のだいご味だともいえるでしょう。そしてそれこそが「人間が行うことで価値が出る」仕事だと言えます。

「職人仕事」の殆どは、反復性・正確性・スピードを求められている仕事だと思います。10年単位での修業が必要な物も、ロボットが学習してしまったら、もう追い付けません。

しかし、プロとはそういうものではないはずです。職人が職人である所以をちゃんと理解し、仕事の中でロボットをうまく使いこなしていけば、職人の価値は逆に上がっていくはずです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?