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アメリカ初の人工衛星を打ち上げた ジュピター・ジュノーロケット 目で見るロケット図鑑

アメリカは、現在民間企業による宇宙産業への参入が進んでいます。しかしながら、その初期には国や軍が宇宙開発への権限を握っていました。今回は、アメリカにおいてロケット開発で一番最初に成功した、いわば「長男」君を紹介します。彼の名前は、ジュピター・ジュノーロケットです。 

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<データ>
・打ち上げ国:アメリカ
・運用開始:1956年
・運用終了:1958年
・全長:21〜24m

※ジュピターCロケットに4段目を加えて打ち上げたロケットのことをジュノーロケットといいます。

<名前の由来>
ジュピター:ローマ神話に登場するユーピテルの英語名。気象現象を司る。ローマ神話の主神で、最高位の女神であるユーノーの夫

ジュノー:ローマ神話の女神ユーノーの英語名。ローマ最大の女神。女性の結婚や出産に主に関係する。また、女性の守護神であるため「月」と関連が深い。(フランス語で、「月」は女性名詞)

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(写真 ジュピターC)

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(写真 ジュノーII)

<歴史・構造> 

アメリカは、前項で「レッドストーン・ミサイル」を開発したと書きました。その後、1956年からレッドストーンの性能をさらに上げることを目的として開発されたのがジュピターCです。詳しくいうと、ミサイル上部にある弾頭が大気圏に再突入する時の最適な形状のことを調査するために設計されました。「ミサイルの試験機」と言っても過言ではないような気がします。

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アメリカは、このようにしてミサイルを開発していたのです。彼らにしてみれば、世界のどの国よりも軍事力では圧倒的に有利な立場を取ろうと必死になっていたに違いありません。そこで当時陸軍でミサイルを開発していたフォン・ブラウンは軍事ミサイルに人工衛星を取り付けて、打ち上げようとしました。しかし、軍はその重要性を認めませんでした。

すると、です。スッと、大国が姿を見せたのです。その名はソ連(ロシア)。ソ連に先を越されてしまったのです。1957年にスプートニク1号を打ち上げたソ連の影響で、アメリカ中は大混乱。即座に人工衛星の打ち上げを命令したのでした。(ちなみにこの大混乱を「スプートニクショック」という。これを機に、世界中で理科教育が強化され出したとも)

フォン・ブラウンは大急ぎでジュピターCの上部へ新たに4段目を取り付けました。そして、それを「ジュノーIロケット」としました。4段目には、アメリカ初の人工衛星「エクスプローラー1号」が搭載され、1958年1月に無事宇宙へと打ち上げられたのです。

このジュノーIロケットはアメリカで初めて軍事用ミサイルを人工衛星打ち上げ用のロケットに変えた機体であることは明白です。

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(写真 ジュノーIロケットに取り付けられるエクスプローラー1号)

ここまで活躍したジュノーIロケットでしたが、まだ初期のロケットだったため人工衛星を正確に所定の軌道まで導く装置がありませんでした。そこで、フォン・ブラウン率いる設計チームはジュノーIロケットの一段目を、並行して開発していたミサイル「ジュピター」に交換して後継機を開発していきました。それが、ジュノーIIロケットです。

ジュノーIIロケットは、地球の重力圏を初めて抜け出したアメリカ初の人工衛星「パイオニア4号」を打ち上げました。

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(写真↑打ち上げを待つパイオニア4号を搭載したジュノーIIロケット)

(写真↓パイオニア4号、あのロケットの大きさに対してこの小ささ)

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(picture:NASA)

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