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小島秀夫さん。

僕が愛するゲーム作りの達人が二人いる。

一人はあのマリオやゼルダを創った任天堂の宮本茂さん

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そして、もう一人はメタルギアを生み出した小島秀夫さんだ。

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しかし、

僕とメタルギアの出会いはあまりいいものでは無かった。

今ではPSstoreのアーカイブで簡単にダウンロードできるけど、このソフトに初めて出会った時の僕の感想は「なんだつまらない」だった。

後になってプレイ画面をDVDディスクに録画し、何度も見返すことになるなんて、その時は夢にも思わなかった。

たしか何かのソフトにおまけとして付いていた体験版でメタルギアをプレイした僕は、開始早々敵に見つかり、近くのリフトにさえなかなかうまく乗れずゲームオーバーを繰り返し、つまらないという烙印を安易に押してしまった。

当時流行りのバイオハザードに代表されるような敵を倒して前に進むゲームに慣れていた僕は、後にステルスゲームというジャンルまで作り上げることになる、隠れながら潜入ミッションをこなすというゲーム性が全く理解できず、早くムービーを見たいのにいまいち分からない(それだけ斬新という事だったのですが)ゲームシステムにいらいらしてすぐにプレイをやめてしまったのだ。

しかし、しかしである。

その後、その何だかよく分からないゲームは世界的にも大ヒットを飛ばすことになり、『ときめきメモリアル』と『メタルギア』のコナミというイメージを頭の中に焼きつけることになった。

『グラディウス』『沙羅曼蛇(サラマンダ)』などシューティングゲームが強いコナミはそこから音ゲーやスポーツゲームなど幅広い分野に進出し、今やジムまでも運営するようになった。

僕は存外ミーハーである。

人気の出るものには飛びつく性格である。

なぜ人はそれに惹かれるのか、が気になる性分である。

本屋さんに行けばベストセラーが気になるし、話題の映画やドラマなどはついつい見たくなる。

だからこのゲームにも当然のごとく興味を持った。いや持ち直した。

再び始めたそのゲームはやはり違和感しかなかったけれど、CD-ROMの大容量を活かしたポリゴンによる映画のような演出、素晴らしい声優による演技、画面のこちら側にまで訴えかけてきそうなアイデアの数々に僕はすっかり魅了された。

エンディングの『The Best is Yet to Come』はあまりに名曲すぎてサウンドトラックを買って何度も聞いている。

こちら↓の動画はちょっと誤字はあるけど、わざわざシンプルな英語に翻訳していて頭が下がる。音楽だけでも聞いてみてほしい。何とも言えない気持ちにさせてくれる素敵な曲だ。

その後シリーズは未だに続いているのだけど、僕にとってはこの第一作目が特別であり、一番好きだ。

今見ると粗い画像で、後にゲームキューブでキレイになったメタルギアももちろんプレイしたけど、

ルパン三世がパート1と2以外に受け付けられないような僕にとっては、PS1のあの感動は変わらず心の引き出しに厳重にしまってある。

ところで、僕のiPadにはこちらの本がPDFデータとして取り込まれている↓

そう、先ほど書いたゲームキューブ版メタルギア

で、当時『あずみ』のヒットで知られた映画監督である北村龍平さんが、このリメイクしたメタルギアのイベントシーン監督をつとめたのだ。そこで小島さんと対談したものが本となっている。

さらに任天堂のゲーム機でリメイクされた縁から、小島さんは当然のごとく宮本茂さんとの邂逅も果たし、この作品には数々のアイデアがもたらされたという。そういう意味で言えば、天才の出会いが生んだ記念碑的なソフトである。

にも関わらず、僕は小島さんが手がけた『メタルギアソリッド』の方が好きなのだ。顔も無いような粗い造形で表現される個性的なキャラ達。

リボルバーオセロット、サイボーグ忍者(声優は故・塩沢兼人さん)、オタコン、コントローラをも動かすw超能力者サイコマンティス、そしてもちろん大塚明夫さんの渋い声が印象的な主人公スネーク。メイ・リンの薀蓄まじりのセーブ画面のやりとりも実に面白い。

対談本の中のインタビューでなぜプレイステーションを選んだかについて、小島さんは次のように語っている。

『ポリスノーツ』を作っていたときにプレイステーションの噂を聞いたんですね。それで、スペックを聞いたら3DCGに向いているという話だった。もともと『メタルギア』は上から見下ろすタイプのゲームだったけれど、本当に実現したかったイメージは「かくれんぼ」だったんです。

たとえばロッカーの中に入ると主観視点になるとか、自分が机の下に入ると相手の足が見えるといった緊張感を作りたかったんですよ。それがプレイステーションの3DCGなら作れるし、長年考えていた『メタルギア』が実現できるということで挑戦したんです。

そこに空間があるという感じ。プレイヤーが入って、触れたり、物を動かしたり、匂いをかいだり、音を感じたりできるような錯覚を得られるような空間を作ろうとしたんです。

これって今で言うところのVRの発想ですよね。そしてその思想はその後の作品にも色濃く反映されていきます。

また、ゲームに込める小島さんならではのメッセージ性については、

僕は映画とか、小説とか、マンガ、アニメで育った世代なんです。学校の先生や、親や、兄弟からいろんなものを教わったんですけど、やっぱり一番教わったのは映画や小説からなんですよ。映画や小説の中なら、自分では行っていない国や場所に行くことができる。映画や小説で仮想体験したことが自分の中で生きているんですね。だから、ゲームでも伝えていきたいと思っているんです。

それは、最初の『メタルギア』の頃から考えていて。ゲームっていうものはエンタテイメントなんですけど、面白いだけじゃなく、メッセージがあって欲しいんです。学校では教えてくれないことや今まで想像もしたことがないことをゲームで伝えたいんです。

2004年に語られたその思いは、先日発売されたこちらの本にも全く変わらない熱さで書かれていた。

この本は元々、

を改題し、多少割愛したものに「はじめに」「おわりに」そして、僕の大好きな星野源さんの対談を加えたものだ。

今夜の星野源さんのオールナイトニッポンでは、リアルタイムで二人の対談が放送される。本当はその対談の後にこの記事をまとめようと思ったのだけど、やはり僕のリスペクト熱は短い文章では収まりそうもないので、対談の感想については後日に譲ろうと思う。

今回新たに追加された「はじめに」で小島さんは本に対してこう語っている。

世界中に、本や映画や音楽は無数にある。それらを全て体験するのは、到底無理だ。だから、自分が死ぬまでに、どんなものと出会えるか、というのが僕の人生において、重要な意味をもっている。

出会いというのは偶然で、運命的なものだ。どこで何が、どんな縁で繋がっているのかわからない。だから僕は、ただ漠然と待っているのではなく、自らの意思で行動し、選択した上での出会いを大事にしたいと思うのだ。これは、人との出会いと同じだ。

だから僕は毎日、本屋に通う。出会いを創るために、通い続けるのだ。毎日、いろいろな本とすれ違う。何か引っかかる本、訴えかけてくる本、素通りしてしまう本、それぞれに違う絆がある。それを確かめていくうちに、自分にとって意味のある出会いを見つけられるようになる。自分の感性が磨けるようになるのだ。

全く同感!!激しく同意!!!

僕が日頃から語っていることと全く同じである。というか本が好きな人なら誰しも同じ気持ちなんじゃないかと思う。

毎日通っていると、その店を巡るルートがいつのまにか形成される。定点観測をするには効率がいいが、その反面、本屋に行く魅力や意味が薄れてしまう。ルートが決まると、他を見なくなってしまうからだ。

だから、馴染みのない本屋や新しい本屋に行くと、自分の思考が撹乱されて、戸惑いながらも、面白い体験ができる。たとえ入荷されている本が、馴染みの本屋と同じだったとしても、店の規模やロケーションや本の配置が違っていると、同じ本でも別の顔が見えたりもする。だから、何度でも繰り返すが、本屋に通うことはやめられないのだ。

うーむ全く同じような事を考えている人っているんですね〜。こちらは一ヶ月前に書いた僕の過去記事です。興味があればどうぞ。

ところで、この本では小島秀夫さんの読書遍歴が紹介されていく。知っている本もあるにはあるけど、ミステリー好きという共通項以外はSFや社会派の小説が多く、タイトルさえ知らない本がたくさんあった。小島さんが薦めるのだから傑作に間違いはない。何より読書の幅広さに驚かされる。きっと読書量もとんでもないものだろう。

すでにこの本で書かれている小島さんの印象的な言葉はつぶやきで紹介したけれど、ここに再録しておこう。

皆が孤独であるとわかった時、人は孤独でなくなる。

僕は肩書きではなく、何を成したかで人の記憶に残りたい。肩書きではない、自分の使命のために余命を使いたい。

物を創る行為を続けていると、とてつもない孤独感に苛まれる事がある。救ってくれるのは、自分と同じような意識を持っている人の存在だ。物作りは、人や作品や歴史や、いろんな物との繋がりがあるからできる。生まれた作品が誰かの背中を押して、世界を前に進める。それを死ぬまで続けたい。


コナミから独立し、少数精鋭のチームでわずか3年半で作り上げた最新作が先日発売された↓

『デス・ストランディング』は、かなり新しいゲームです。辛い思いをして、一人で富士山に登るとなんでこんなしんどいことをしているのかって途中で諦めてしまうかもしれない。でも、頂上へ登ってご来光を見たら、そこまでの苦労も全部肯定されて思わず泣いてしまう。そんなゲームです。

誰かが褒めたものが面白くなくても、まったく問題ない。それは、あなたの価値観で判断されたことだから。あの人が褒めていたから面白かったというのは、誰かの意見をツイッターでただリツイートするようなものだ。そこには「あなた」はいない。

間違っていても、意見が合わなくても気にすることはない。自分の目と頭で、“当たり”を見つけることがどれだけ素晴らしい結果を生むことか。僕の”当たり”とあなたの”当たり”は違うかもしれないが、それでいいのだ。

それを伝えたくて、僕は作品を創り、文章を書き、映画や本の推薦文を書いているのかもしれない。

今夜のオールナイトニッポンにおける星野源さんと小島秀夫さんの対談は聞く前から僕の中ですでに神回の伝説に決定している。早く聞きたいけど、終わってしまう寂しさを考えると14番めの月の気持ちだ。イベントは始まる前が一番楽しい。

案外くだらない話になるんじゃないかと思うけど、それはそれで楽しみだ。4000文字を超えるなんて久々に長くなってしまった。書きたい気持ちはまだまだあるけど、とりあえすこの辺にしておきます。読んで頂いてありがとうございました。

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