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自分と周りが無邪気にFIREを目指してるので、敢えてFIREのバッドエンドを考えてみる

今、多くの若い人がFIREについて興味を持っています。

いかに早く仕事を引退して経済的に自由な生活をするのか。
これが多くの人にとって興味深いのではないでしょうか。

私自身も、できるだけ早くFIREをしたいとは考えており、そのために少なからず現在を犠牲にしています。

しかし、私を含めて周りの多くの人がFIREを目指しているからこそ
「FIREを目指した人のバッドエンド」
についても考えておくべきだと感じています。

自分に対しては
「FIREをゴールにするな」
という戒めの意味合いを。

私の知り合いの多くのFIREを目指す人には
「本当にFIREを目指すだけでいいのか」
の問いかけになればと思っています。

FIREの定義を金融資産5000万円とする

最初に、FIREの定義について考えたいと思います。

人によって生活費が違いますし、経済状況は様々だと思いますが、それだと話の論点がややこしくなるので、一旦この記事では

・FIREと言える状況
・一般人が達成可能と考えられる金額

上記の2点を満たすために、
「金融資産5000万円」
を基準に考えたいと思います。

金融資産5000万円を年利5%で運用し、年収250万円。
税金を考えると200万円程度になりますが、これで月に20万円弱です。

「生活基盤」と考えるとこのあたりがFIREの最低ラインと考えられることが多いかと思います。

加えて、平均の生涯賃金が2億から3億円と言われていることを考えると、その2割から3割程度である5000万円は、達成可能と考えられるでしょう。

また、投資商品に関しては、FIREの王道と言える
「S&P500連動型インデックスファンド」
の商品を100%保有で考えたいと思います。
(今回は、投資対象に関する内容ではないので、最もシンプルな保有資産構成にします)

その上で、金融資産が5000万円になったことを機に、サラリーマンを退社。
その時の年齢を40歳前後と考えて話を進めていきたいと思います。

私の周りは、20代30代が多いので、仮に上手く資産が築けて、10年から15年程度で理論上FIRE達成可能になった・・・という想定になります。

落とし穴1 お金を使える時間が倍になる

最初に考えたいのは、
「FIREの後は自由な時間がたくさんある」
と言う事です。

普通にサラリーマンをしていた人であれば、1日8時間労働が全てなくなる訳です。

1日8時間睡眠で考えると、自由時間が2倍になった事になります。

通勤時間を考えれば、2倍以上の人が多いでしょう。

これだけ自由時間が増えると、どうしても浪費に使ってしまう金額が多くなると考えられます。

趣味に時間を使うにしても、お金を全くかけずに遊ぶことは難しく、ここで最初に想定していた
「生活費20万円/月」
での生活が破綻してしまう可能性があると考えています。

落とし穴2 暴落時のメンタル

投資の王道であるS&P500連動型のインデックスファンドは、過去に何度か大きな暴落を経験しています。

直近のコロナやリーマンショックの際に大きく値を下げています。

過去大きな暴落時には、50%前後の値下げを見せています。

最終的にそれらの暴落から徐々に値を戻しているため、投資の王道として認められているのだと思いますが、価格を戻すのにかかる期間は数年に渡ります。

つまり、仮に引退直後に大きな暴落が起こり、5000万円だった資産が2500万円にまで下がり、
「もしもこのまま資産が0になってしまったらどうしよう」
という不安を抱えたまま数年間を過ごす必要がある事になります。

落し穴3 引退期間の自己成長率

次に、引退してからの期間
「人として何も成長していない」
という人も増えるのではないかと思っています。

私自身、フリーランスを経験していますから、実体験として感じていますが、
「会社という強制力がなくなったら、サボりたい気持ちが大きくなる」
ということ。

FIREしたから、これで思う存分資格の勉強ができる!!!

なんて考えている人がいれば、それは特殊な例でしょう。

多くの人は、自由に遊ぶ事に時間もお金もかけるでしょうから、数年間・場合によっては数十年に渡って人として成長していない可能性があります。

落とし穴4 年齢を重ねた上での再就職の困難さ

前項に加えて、もしも成長していない期間の後に
「資産が減ってきたからもう一度働こう」
と考えたときに、非常に就職に困るでしょう。

ビジネスマンとして何年間も前線を離脱した人が、現役バリバリのサラリーマンよりも高いパフォーマンスが発揮できるかと言われれば、恐らく難しいでしょう。

更に、面接の際に
「働いていない数年間は何をしていたの?」
なんて聞かれても、良い印象を与えるような答えを出すのは難しいのではないでしょうか。

つまり、サラリーマンから早期引退をするということは
「これまで積み上げたキャリアを捨てる」
事と同じ意味になる可能性があるのです。

これらを加味した割とリアルなバッドエンド

さて、これらを加味した上で、比較的リアルに考えられるバッドエンドを考えたいと思います。
主人公を仮にAさんとして話を進めていきたいと思います。

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Aさんは、今年40歳になるサラリーマン。
結婚しており、奥さんと6歳・3歳の2人の子供がいます。

Aさんは、25歳の時に書籍で「FIRE」を知って憧れるようになりました。

Aさんは、新卒から働いている会社で、3年間働いて、肉体的にも精神的にも少し余裕が出てきました。

そんな中で、
「このまま後40年以上も働くしかないのか・・・」
とふと考えるようになったのです。

そんな時にFIREという考え方に出会い、自分もそれを目標に頑張る事にしました。

毎月の生活費を可能な限り削り、ボーナスも全額投資に回し、副業も行いました。

最初に出会った書籍が良かったようで、回り道をせずに
S&P500連動型インデックスファンド
にたどり着きました。

節約で5万円、副業で5万円、ボーナスをドルコスト平均法で運用するために平均8万円。

合計18万円/月
これだけの金額を毎月投資に回していました。

その結果、運用開始から15年。40歳という若さで5000万円もの金融資産を手にすることが出来ました。

仮に年利5%で計算すると、年間税引き後で200万円ほど使える計算になり、ギリギリ生活することはできるだけの不労所得を作ることに成功したのです。

加えて、副業で月に5万円稼いでいるため、これを本業にすれば、仮に月10万円だったとしても、不労所得と併せれば、十分な収入になると考えました。

また、
「もしもの時はまた就職すればいいや」
といった形で、会社を退職することにしたのです。

それから10年間は、月に30万円ほどを使いながら、それなりに豊かな生活を送りました。

しかし、50歳のタイミングで暴落に遭い、5000万円の資産は3000万円に減少。

40%もの下落に、先行きの不安を感じ始めました。
また、一気に2000万円もの金額を失った恐怖から、
「この3000万円を一旦現金に換えて、景気が戻ったらもう一回投資に回す方が良いんじゃないか・・・」
といった邪念もつきまとう様になりました。

過去に投資における暴落を経験したことがないため、一種の錯乱状態に陥ってしまったのです。

更に、子供は13歳と16歳。
上の子はそろそろ大学進学を考え始め、一人暮らしをしたいと言っています。

下の子は勉強が得意ではなく、私立の高校を検討しなければいけないです。

学費、仕送り、生活費を考えれば、かなり厳しい。

3000万円に減った資産が、仮に年間5%の利益を生んでくれたとしても、税引き後に年間120万円ほど。
つまり月に10万円ほどです。

副業として行っていた仕事は、月に10万円は作れるものの、合わせても20万円。

更に、これ以上稼ごうと思うと、ビジネスモデル的にも厳しい事もあり、再就職を考えることにしました。

しかし、現在50歳です。
単純に求人数がかなり少ない。

更に、この10年間、副業以外は遊んでいたので、これといった技術もありません。

面接では
「40代の、本来バリバリ働いていたはずの10年間、最前線から離れていたのに、今から新しいことを覚えられますか?」
そう聞かれて、口ごもる事も多かったのです。

結局、正社員として働くことは難しく、派遣社員として事務を行う事になりました。

夢にまで見たはずのFIREが、結局50歳を超えてから時給1300円で働く日々に。

それでも子供の仕送りや学費を考えれば、ほとんど余裕はなく、節約にも精を出す必要がありました。

振り返れば、25歳から頑張って節約をし、結局今も節約生活。

比較的余裕があったのは退社直後の10年間。
しかし、それさえ月に30万円程度の収入のため、豪遊ができたわけではありません。

しかも現在50歳ということは、人生100年時代で考えると、まだ折り返し。

こんなはずじゃなかったのに。。。

こういった人は増えるんじゃないかなと思ってます。

どうでしょうか?

割とリアルに考えられるストーリーだと思います。

人によっては生活費が20万円で収まらない・・・という事も多いでしょうから、少し控えめなバッドエンドと言えるのではないかと思います。

以前も記事にしましたが、こういった状況の原因は、FIREの前提が
「働きたくない故に、FIREを逃げ道にしている」
という事が大きいと思っています。

そのため、次回記事で、私個人が
「FIREは目指すけど、それだけにならないような準備」
をしようと思っている点について書きたいと思っています。