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その「社会貢献活動」は自己満足になっていないか?

2021年、15本目のnoteです。

昨日、Twitterで繋がったご縁でとある方々と意見交換をしました。

↑こちらのツイートに自分が反応したのがきっかけ

メンバーは、
自治体職員としての立場から、スポーツの力で子どもの居場所作りや社会課題解決に取り組んでいる伊藤さん、
現在大学生で過去には独立リーグ球団などのスポーツ分野で国際協力やインターン活動経験のある今泉くんでした。

問題提起の大枠としては、
・伊藤さんが勤めている自治体には、そこをホームタウンとしているプロスポーツチームがない。
・その中で、どのようにプロスポーツチームを自治体と絡めるか。
・あるいは、地元のプロスポーツチームと関わる以外の他の手段として「スポーツ×地域」でどんなことができるか?

といった部分でした。

以上のような難しい問題に対して、香川→徳島→新潟→福井の野球現場に関わらせていただいた経験や意見を述べさせていただきました。
(とは言え、ゆるーく楽しく話すような和やかな雰囲気でした!)

そしてこのような機会をいただいて話を進める中で、自分がこれから推進したいこと、得た自戒、山積みの課題などを忘れないうちにアウトプットしよう!ということで筆を進めています。

ぜひ皆様も一緒に表題のような課題感を考えるきっかけになってくれれば幸いです。

―――

1、実はほとんどの地域にプロスポーツチームはない

私は札幌で生まれ育ち、小学校に入るくらいのタイミングでファイターズが北海道へやってきました。今はコンサドーレもレバンガもあります。

自分の地元にプロスポーツチームがあること、応援に気軽に行けること、イベントなどで選手と身近に関わる機会を作れることは「当たり前」になっていたかもしれません。

そして、大学卒業後は選手として・スタッフとして様々な地域の球団に携わってきました。
そのときも視点としては球団側にあったため、ある意味その土地に自チームがあることは「当たり前」であり、県内の様々な球場で試合をする機会や、地域貢献活動と言われる地域のイベントや野球教室に参加することで「地域密着」ができている自負もありました。

ですが今回、伊藤さんが暮らし働く埼玉県について色々とお伺いする中で、この「当たり前」の贅沢さに気づきました。

埼玉県というと、浦和レッズ、大宮アルディージャ、さいたまブロンコス、埼玉西武ライオンズ、(そして我らが)埼玉武蔵ヒートベアーズなどなど、プロスポーツチームがたくさんあり、
さらには「さいたまスポーツコミッション」といった組織も知っていたので、埼玉県民=すぐに地元のプロスポーツチームにアクセスできる、なんなら東京にもすぐ行けるから選択肢にあふれている

と思っていました。
しかし実態としては、埼玉県に存在するプロスポーツチームのほとんどは都心に近いエリアに集中しており、埼玉県全土で見た時にカバーできていないエリアがたくさんあることを知りました。

所沢や浦和に行く際に片道で2~3時間かかってしまうのであれば、そこに住む地域の子どもたちが気軽に行けるとは言えず、逆にチーム側もそうした地域に継続的な関わりができるか、と言われると非常に難しい状況です。

(この点に関して、特定のチームが悪い・やり方が悪いというつもりは一切ありません。強調したいこととしては、そうした地方に住む子たちのスポーツチームに触れる機会が少ないということです)

地元にスポーツチームがある、会場へ応援に行く、選手とイベントで触れ合うということは決して「当たり前」ではなく、むしろ非常に恵まれた地域であることを今回実感しました。

そしてその前提に立って考えると、札幌以外の北海道って最もそうした部分で難しい地域だなと。
北海道はとにかくデカいので、札幌近郊を除いたときに他の街に住む方々の選択肢が狭いことを改めて実感しました。
と同時に、だからこそそうした想いから旭川市という土地にこだわりヴォレアス北海道を設立した池田社長のnoteは何度も読む価値があります。

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2、チーム側、自治体側がそれぞれが抱えるジレンマ

以上のような問題がある中で、スポーツチームに何ができるのか、そしてイベント企画や招致を行う自治体側に何ができるのかについて考えてみます。

まずスポーツチームとしてできることは、ホームタウンを広げることです。極端なことを言えば、県内すべての市町村と良好な関係を築き、各地に継続的に選手が出向き、試合も実施し、地域のイベントにも参加することができれば、上に述べた問題は解決に向かうかもしれません。

けどそれが現実的なのか。
スポーツチームの視点では、言い方が悪いですがこのやり方は「コスパが悪い」んです。

かけた時間や費用に対し、得られるリターンが保障されない。
片道2時間や3時間かけて単発で地方の小学校へ訪問したとして、その子たちがどれだけの人数だけファンになってくれるのか、今後の試合で何人来場してくれるのかといったロジックや数字だけの観点で考えてしまうと、どうしても優先度は下がってしまいます。

それをやるくらいなら、まずはホームタウンにリソースを全集中し、試合会場にアクセスできる方々へアプローチする方が圧倒的に効果がある

(埼玉県を例に挙げれば)所沢市・浦和市・大宮市といったその単体の市だけで相当な人口がいる地域であればなおさらです。

もちろんスポーツチームとしては、幅広い地域の方々から愛されることも目指すべきですが、そのためにはまず足元から。
ホームタウンに徹底的に根付くことがとにかく大切です。

そうした現状から、気持ちとしては地方にもリソースを割きたいものの実際にはなかなか実行できていないというのがスポーツチーム側のジレンマです。

自治体側としては、、、

今はどこの自治体も「子どもたちの運動実施率低下」や「高齢者の健康寿命延伸のための運動習慣」といったところで共通の課題意識を持っているはずです。

そのための手段として、「する」スポーツを働きかけることも重要ですが、「観る」スポーツの文化が醸成されることで自然と「する」にも繋がっていきます。

ですが、我らが自治体に「観る」スポーツがない。

この場合、自治体が講じる手段としては、
①スポーツイベント(大会)の実施
②合宿地としてプロチームを招致
③スポーツ教室の実施


などが考えられますが、予算というハードルももちろんあります。

①や②は、とにかくお金がかかります。
①に関しては、実現までの時間も相当かかりますし、大会運営をリードするためのノウハウを持った人材、その土地で開催する理由、ボランティアスタッフの確保など様々な乗り越えるべきハードルがあります。

②については運動施設や宿泊施設がすでに十分なレベルにあれば予算は少ないかもしれませんが、屋外の場合はキャパ・芝・照明などをトップレベルに改修し、屋内でもある程度のアップグレードはもちろん必要です。

(並の体育館であればわざわざ出向く必要もないため、温暖地域かつ屋外スポーツが快適にできる環境が合宿地として選択されるかと思います。ですので予算うんぬんではなく、そもそも土地の相性が悪い地域もあります)


そして、仮に合宿地として選定され、その自治体が「ラグビーの街」など外から認知されても、中に住む地域の方々がそのスポーツと触れる機会が無ければスポーツによる地域交流という観点では意味をなしません。

よって、もっともオーソドックスな手法として取り組まれるのが、単発の野球教室などのスポーツ体験型教室です。

メリットとしては、その競技にもともと関心のある(すでにプレーしている)子たちにとって非常に貴重な経験となります。そして、予算も比較的抑えられます(ゲストを呼ぶ際の報酬や宿泊費・移動費などのみ)

しかし、遠方になればなるほど継続的ではなく単発な関わりになりやすく、日常生活に溶け込むような接点とはならないため、競技に対する関心が高くない層にはまったく届きません。

―――

3、その「社会貢献活動」は自己満足になっていないか?

と、偉そうに述べてきましたが、これらの問題に対する具体的な解は見つかっていません。

ですが、今回この課題に触れて感じたことは、
自治体側にしても、スポーツチーム側にしても、『その"社会貢献活動"とうたったイベントは自己満足になっていないか?』という視点を持ち続けることの大切さです。

前職では、福井県の各地小学校へ出向き、選手が体育授業でボール投げを教えるという取り組みを福井県とともにやらせていただきました。

個人的には、このイベントは最も心に残っているものですし、社会的意義が非常に高いものだと思って誇らしく取り組んでいました。

ですが、その学校に出向くのは数年に1度きりであり、さらに言えば時間の制約があるので「その学校の、その学年の、2~3クラス」に対してしか関われていないんです。

それにも関わらず、その地域そのものに貢献できていると「自己満足」してしまっている自分もいました。

もちろんやらないよりは、やる方が絶対に良いです。
ですがその取り組みが単発で終わってしまうという特性上、自己満足に陥りやすいことを主催側は自覚するべきです。

その上で、どのようなやり方をすれば継続的なつながりを作れるか、日常社会にスポーツチームを溶け込ませることができるか、といった視点で考えていく必要があります。
(繰り返しになりますが、そのための具体的な解は見つかっていません…)

今回、意見交換した今泉くんは「スタジアムが公民館に」、伊藤さんは「公民館がスタジアムに」といった趣旨のことを仰っており、非常に感銘を受けました。

まずは「スタジアムが公民館」のような場になることで、ホームタウンに根付くスポーツチームを通して、その土地に住む方々が温かいコミュニティを形成できることがスポーツの持つ大きな社会的意義だと思います。

そしてもっと難しいですが、大きな意義となりえるのが「公民館がスタジアムに」といった取り組みです。

たとえ現地でスポーツを楽しむことができなくても、公民館や児童館といった地域の場で、スポーツを「する」・「観る」ことを楽しめるような環境が整えられれば、自己満足でとどまらない社会貢献活動に繋げられるかもしれません。

児童館や公民館の大画面で地元のプロスポーツチームの活躍が映され、それを老若男女問わずみんなで画面を囲んで楽しみ、話題の中心になり、試合を見ている途中に子どもたちの何人かがいてもたってもいられなくなり、外に出てキャッチボールを始める。
そんな光景が日本中で展開できればいいなと思います。

決して簡単ではありませんが、これからも「スポーツを通した社会課題解決」といったテーマで、何かしら力になれるよう動いていければと思っています。

「どんな場所に住んでいても、どんな生活環境にいても、子どもたちの夢の選択肢が制限されることがない社会」を目指していきたいです。
その手段の根幹としてスポーツというものが寄与できると信じています。

伊藤さん、今泉さん、この度はありがとうございました!!
そして最後まで読んで下さった皆様にも感謝申し上げます!

(熱くなってしまった…!)
(一度の意見交換でこれだけのアウトプット機会が得られるので、皆さんぜひ語りましょう)

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