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(32)海を越えて届いた小さな袋の中には、大きな大きな愛情が入ってた。

学校にも通い始め、日常生活のリズムが整い始めたフロリダライフ。妊娠してたけど実感もまだそんなに無かった。つわりらしい症状もあまり無い、食欲旺盛だけどそれは普段からよく食べるので区別がつかない(笑)

唯一のつわり症状? と言えば"和食"が食べたいこと。でもこれって多分、春美さん(母)の作る料理が恋しかっただけなのかなとも思う。美味しい漬物と、春美さんの作る焼き魚(干物)が食べたいけど、あの味は世界のどこを探したって春美さんのいる場所"品川"でしか食べられないから。そう思うと余計食べたくなっちゃう。多分妊婦という事実が、その思いを更に熱くさせのは間違いない。

そんなタイミングで物凄い朗報が飛び込んできた!なんと、私のお姉ちゃん"駅間留学のかおちゃん" が遥々ペンサコーラまで遊びに来てくれることになった!旅行好きのかおちゃんは、従姉妹のYちゃんがいたサウスカロライナ州のチャールストンにも遊びに行ったし、お友達とも香港とかにも行ったり、旅好き女子なのです。

かおちゃんとは成田空港でお別れして以来です。物凄いタイミングで現れてくれたあの古舘伊知郎のお陰で私たち姉妹は涙の別れではなく笑ってお別れが出来た。あれは私たちに"笑神様"が降りてきた瞬間だったと思う。

そんなかおちゃんが日本からのお土産リクエストを受け付けてくれるって事だったので、多分食べ物いっぱい頼んだと思う。美味しい海苔とか、漬物とか。一番必要だったのは

"はじめての妊娠" 的な本。

病院で妊娠を確認してもらった時に、妊婦の心得的な本をを貰った....けど全編英語。読めるけど意味がワカラン。。。(泣) でも、日本人は文法とかを学校で勉強してるから、なんとなくは読めるんですよ。でも知らない単語が盛りだくさん。医療用語なんて全くと言って良いくらいワカラン。当時もインターネットで色々な情報は集められた。でもやっぱり日本語でキチンと理解が出来る、信頼度の高い"本"が欲しい訳です。

妊娠が分かった時に両親には電話で報告した。もちろん2人とも凄く喜んでくれた。あの頃はまだ国際電話ってそんなに安く無かったですからね、たまにお手紙書いて郵便局から送ったり。。。まだアナログさも残った世の中だったんですねぇ、あの頃。

妊娠が分かった私、お母さんに聞きました。

"赤ちゃん産まれる時、フロリダに来てくれる?"

お母さん、ちょっと考えてから言いました。

『多分、お母さんが行っても言葉も分からないし、返って足手まといになっちゃうと思う』

ガビーーーーーン(T T)

来ないっていうか、来れないって(泣)
お母さんは海外はハワイなら経験あるけど、乗り換えは不安だと言う。確かに、私もお母さんが一人でフロリダまで無事に来られるかと考えたらそっちのが心配かも。お母さんだって、多分来たい気持ちがあるのに来られないんだというのは凄く分かったし、アメリカにトツギーノしちゃったの私だからね。親戚の子供達をまるで自分の孫のように見ていた子供好きの両親に、自分の孫、しかも初孫の誕生を見せられない事の方がむしろ申し訳ないくらいだよね。私にはマトさんがいるから大丈夫だよ(...多分)。いつか元気な赤ちゃん連れて帰って、お父さんとお母さんに抱っこしてもらおう、そう決めた。

いよいよかおちゃんがやってくる。品川を離れてからの期間は長くないのに、古舘伊知郎に助けられてからまだたった数ヶ月なはずなのに、まるで何年も離れていたような感覚。ペンサコーラ空港でかおちゃんの姿が見えた時は本当に、本当に嬉しかった。

かおちゃんが持ってきたスーツケースの中には、私が頼んだお土産がたくさん、たくさん詰まっていました。頼んでおいた"はじめての妊娠&出産"本とか、海苔とか漬物とか。1つ1つかおちゃんが何か取り出してくれる度に、それはもう嬉しくて嬉しくて歓喜の雄叫び(笑) スーツケース開けた瞬間、ほんのり実家の匂いがしたのも、なんか堪らない気持ちがした。

重いのにたくさん持ってきてくれたかおちゃん。
その中には、

"帽子付きの赤ちゃん用の真っ白なベビードレス"

も入ってた。
お父さんもお母さんもフロリダには来られないけど、孫の誕生を楽しみにしてくれているんだろうなって言うのが伝わってきて嬉しかった。

そしてもう1つ、大切に、大切に、タオルでぐるぐる巻きにされた保冷剤入りのZiplocバッグがあった。

『お母さんからだよ』

と言ってかおちゃんが渡してくれたそのZiplocバッグの中に入ってたのは、お母さんの大きな愛情でした。

"春美さん特製 甘鯛の干物"

ただの干物じゃない。お母さんが私の大好きなお魚"甘鯛"選んで買って、自分で干物を作り、しかも焼いてくれて、その上食べやすいように骨も取り除いてあって、身が崩れないようにきれいにラップで巻いてありました。Ziplocを開けたら香ばしい焼き魚の香りが広がった。

『お母さんのごはん食べたい。焼き魚食べたい』

私、電話で言ったと思う。
(↑多分プレッシャーかけるくらい言ってたのかも)

お母さんの事だから、多分私の好きそうな物をかおちゃんに持たせてくれるのも想像してたの。でもその焼き魚を目にしたら、

お母さんが買い物してお魚選んでる姿、
台所でお魚捌いて、外に干して干物作ってる姿
ちょっぴり下手な菜箸の持ち方で焼き加減みてる姿
食べやすい様に骨を取ってくれてる姿
アメリカまで持っていきやすいように丁寧に包んでくれてる姿とか....

春美さんから届いた小さな袋の中には、
大きな大きな愛情がいっぱい
詰まっていました。

嬉しくて嬉しくて、早速朝ごはん食べた。
白いごはん炊いて、一緒に届いた漬物もならべて、それから甘鯛の干物。

あと、ファンキー味噌汁

マトさんは仕事に行ったから、いない合間のファンキー味噌汁(笑) しかもお母さんの愛情のこもった甘鯛の干物の事ファンキーなんて絶対言われたくないから、マトさんには見せなかった。

もったいなくて食べ終えたくないんだけど、もう飛び上がるくらい美味しかった。しかも横にはかおちゃんが一緒。嫁に行って、これから赤ちゃん産むのに、まだまだお母さんやお姉ちゃんに甘えたい、子供のままでしたね、この時。

かおちゃんは1週間位いたと思う。
マトさんと私とかおちゃんと、Dave(犬)を連れてあのニューオリンズまで遊びに行ったり、ジターナ先生のESLクラスにも一緒に行って、自慢のお姉ちゃんをクラスメイトに紹介した。ペンサコーラのダウンタウンだったかな? Mcguire's Irish Pub っていう、美味しいレストランにも行ったな。犬が苦手なかおちゃんがDaveのお散歩も一緒にしてくれたり、本当に1週間なんてあっという間で全然足りない。このままずっと一緒にいられたら楽しいのにな。

それでもかおちゃんはやっぱり品川に帰らなくちゃ行けない。私はかおちゃんとは別の道選んで、マトさんとの人生選んだんだからね、一緒には帰れない。

また空港でお別れです。多分ペンサコーラに古舘伊知郎は現れないだろうし、笑神様だってそう何度も現れません。
楽しかった1週間を過ごした後だから、余計に寂しいけどかおちゃんとは涙でお別れ。帰って欲しくない、そう思いました。お互い名残惜しいけど、かおちゃん、チェックインカウンターでパスポートやチケットを出します。

『Your flight is tomorrow 』

えっ? 何? 何ですか?

『YOUR FLIGHT IS "TOMORROW" NOT TODAY.』
(あなたのフライト、今日じゃなくて明日ですよ)

まさに、笑神様は突然に....

なんとかおちゃん、時差を計算し忘れてフライトを1日間違える。

ドッカーーーーン!
これが新婚さんいらっしゃいなら、
まさに、三枝(文枝)師匠が椅子と共にしっくり返ってる所ですからっ。

ヤバい、かおちゃんって持ってる(笑)
っていうか、1日遅れてなくて良かったよね。

この件のお陰で、翌日の別れは涙、涙にならずに済んだし、1日長く一緒にいられた(笑) 愛情をいっぱい持ってきてくれたかおちゃんは、翌日無事に品川へと帰って行きました。

またマトさんと2人の生活に戻って、
学校に通いながら、妊婦生活も中盤に入ります。

次回に続く。

《今日のヒトサラ》

•春美さんの焼き魚

去年の里帰りの最終日、飛行機に乗る前に食べていきなさいと言って、春美さんが焼いてくれた、里帰りの〆を飾ったのは甘鯛の塩焼き。

フロリダに届いたのは干物にして、焼いて、骨も取り除かれた、身の部分だけ。凄く手間をかけてくれた過程を考えたら本当に涙が出るほど嬉しかった。ですが、春美さんは父には、お魚はいつもそうやって骨を取り除いて出しています。殿様かっ(笑) でも、なんだかんだ、春美さんはそうしてあげるのが好きなんだと思います。

"じいじは甘やかされている" うちの娘そう言って、じいじよりも魚を上手に綺麗に食べられるように競争してたら、本当にじいじよりも上手に食べられるようになりました(笑)

エッセイに登場する”出演者”である家族に”出演料”として温泉旅行をプレゼントするのが目標です。イッテQ!の温泉同好会の様な宴会をすべく、各自芸を磨いて待機中との事ですので、サポートしていただければ幸いです。スキ、シェアだけでもすごくうれしいです。よろしくお願いしますm(‐‐)m