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おまえたち 中村一義の新譜「十(じゅう)」が出たぞ 聞け

わたしは今聞いて長文を書いているぞ。

それがこれだ。

まあまずはアルバムのリードトラックを聞いてくれ。

これが好きなら中村一義に適性があるのでアルバムを聴こう。

ざっくりと中村一義の紹介

中村一義、渋谷系みたいな声の人で、ビートルズとガンダムとピーナッツ(犬の漫画の方)が大好きで、おじいちゃん子だったおじさん。デビューした頃は宅録系って言われていた。100sっていうバンドを組んでいたこともある(この100sというバンドは、西川貴教とabingdon boys school、椎名林檎と東京事変という関係に近い。100sもいいから聞いてほしい)。

引用とかオマージュを多用する人なので、いろんなジャンルを知ってる人ほど面白いと思える音を作る人です。

中村一義のここ好き

ちょっとカドがあるけど溶けるような声で、曲が凄く聞きやすく気持ちよいロック。声も楽器として使っている感じと、高音の裏返り方が個人的には好き。歌詞が知りたいなら歌詞カード必須の歌い方なんだけど、ブックレット開くとわりあい辛辣な歌詞が飛び込んでくるのも好き。読みが一緒の言葉をはめて遊ぶから、聞くと読むとで変わるし、声質に反してちょっとべらんめぇというか、崩した男の子言葉なのも好き。

とりあえず聞いてほしい「永遠なるもの」は、ファーストアルバムの中でも特別好き。

この頃から、中村一義には一貫して祈りがある感じがするんだよ。綺麗なもの、魔法、そういったものをまだ信じていたいっていう感じの。それは今作でも変わらない。ずっとそう。

原点回帰の十作目

今回の「十(じゅう)」、サポートを入れないで、全部の楽器を中村一義が自分で演奏している。

これは1作目の「金字塔」と同じ。100sの音が好みだった自分にとっては「十」のバンド感が合ってて良かった。音の感じが今までと違って、古いバンドの音源ぽいゴチャつきがあるから、好き好きだよなあって感じ。

宅録実験作って感じの要素、ビートルズ感が強かった「金字塔」も良い、けど、「十」もいい。金字塔へのアンサーだったり、その時から変わっていないもの、まだちゃんとあるよっていうことを取り出して見せてくれる。もう、長く追っかけてた人間にとってのご褒美ですわ。

最初にMV貼った「愛にしたわ」が最の高なんですよ。

上で紹介した「永遠なるもの」では『愛が、全ての人達に、分けられてますように』って言いながら自分と誰かに対して『平行線の二本だが、手を振るくらいは…』って歌詞が、「愛にしたわ」では『愛はいたわ』『十字の真ん中のとこなのかも、かも』になるんだよ。最高かよ。

イントロの入りや曲の構成が「犬と猫」に近い「それでいいのだ!」もそう。「犬と猫」はわりと立てた中指が前に出てくる感じだったんだけど、「それでいいのだ!」は、中指は立てるけど、それはそれとして君とは手を繋いで行こうな、って感じ。

これまでフワッと伝えていた事を明言したな……って感じの「イロトーリドーリ」、1番のサビでコーラスと鍵盤になったりCメロで転拍子する「神、YOU」の構成も良いし、昨年亡くなった宮内陽輔への追悼曲「全てのバカき野郎ども」(これも洋楽邦題パロディー)は泣いちゃうし、イントロがOasisのオマージュ「スターズー」も、「愛にしたわ」へ繋がる小休止に辛辣な中村一義がニュっと出てくる「イース誕」も良い。それで満を持して出てくる「愛にしたわ」が最高。

通しで聞いて、「十」、中村一義の集大成みたいなアルバムだった。いいものを聞いた。初めての中村一義にもおすすめ。なので、「十」を流してみて興味が出たら、「金字塔」か「太陽」から聞いてみてほしい。そこから、バンドサウンドの方が好みであれば100sへ、この路線が好きなら中村一義名義のアルバムをどんどん聞いてほしい。


以上です。