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note における段落構成について考えてみた

 段落の作り方について,note には独特のルールがある。
文章は,段落の構成によって読みやすさが変わる。読みやすさが変わると読むスタイルも変わってくる。
 ここでは,段落の構成について,「読み手を意識した書き手」という観点から,通常の文章,電子メール,note の3つに大別して論じてみたい。なお,私は文章の専門家ではないので,あくまでも個人的な好み,ということになるが,その点は了承されたい。
 まず,「通常の文章」「電子メール」「note」の3つのタイプごとに段落構成を比較し,そのあと note における実例を検討する。


1.通常の文章

 ここでいう「通常の文章」とは,文庫・単行本など,本になっている紙ベースの文章のことを指す。同じ紙ベースでも,新聞は一行の文字数が少ないため対象外とする。
 ジャンルは小説でも,エッセイでも,論説文でも,あまり変わらない。縦書きでも横書きでもたいした違いはない。
 たとえば,宮脇俊三の「時刻表2万キロ」のあるページはこのようになっている。

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 段落は改行と一文字のインデントで表現される。段落間に空行はない。(空行を入れることもある)会話文は本文中に埋め込まれることもあれば,インデントなしの改行で切り分けられることもある。
 これが,小学校以来の作文で使われている方法だ。
 一つの段落の長さは作家によって,また文章によっても異なる。たとえば,西村京太郎のミステリーは改行が多い。1文か2文で改行されている。(1文とは,句点までの長さ) すると,ページ内の空白が多くなり,読んでいるとどんどんページが進むことになる。逆に一段落内の文が多いとページ内の空白は少なくなり文の密度が増してページを繰る速度は遅くなる。

 なお,詩については,note のところでも触れるが,独特のスタイルがあるのはご承知の通りである。


2.電子メール

 紙ベースの「手紙」は,通常の文章とほとんど同じである。
これに対し,電子メールは独特の段落構成を持っている。
親しい相手との電子メールのやり取りでは,時候の挨拶などはなく,

明智さん,おはようございます。徳川です。

のようにして始まる。
そのあと,段落の概念はほとんどなく,適当に改行して,インデントは
おこなわない。
適当に改行するのは,文章としての体裁より,1行に入れる文字数や内容から
読みやすいと思われる量で改行するからである。
メールソフトにもよるが,一行の表示の長さが決まっていないので,
適当に改行しないと画面をはみ出してしまうことも一因。

 ただし,「メール」といっても,LINEや,Facebookのメッセージなどでは,また体裁が変わってくる。短文でやり取りをすることが多いからだ。段落の概念はないといってもいいだろう。

3.note

 冒頭に述べたように,note には改行による段落の作り方について独特のルールがある。
 Enter で改行するのと,Shift+Enter で改行するのとで,行間が変わるのはご存知の通り。通常の文章のようにするには,Shift+Enter で改行し,冒頭に全角スペース(日本語の場合)を入れる。これがインデント。
 Enter だけで改行すると,行間が空く。しかし,空行ではない。
これを組み合わせると次のようになる。(スクリーンショット)

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 このルールにより,段落によるグルーピングのしかたが,通常の文章とは変わってくるのだ。「読み手を意識した書き手」とわざわざ書いたのは,この特性も意識することが含まれている。

 では,「読み手」はどう読むのか。

 ここで,読み方について的確にまとめた illy / 入谷 聡 さんの「note を速読するには」を読んでみよう。着眼点の図解もしている。

・先に全体に目を通してから、もう1回読み直すという方法。
・具体的に、1周目で見るのは、書き出しの数段落、見出し・画像・太字と、各段落の最初の10文字ぐらい。

という読み方だ。私も似たような読み方をしているが,段落によるグループごとに一瞥しながら進めている。この「一瞥」が,「各段階の最初の10文字ぐらい」とは少し異なるので,段落内の分量が読み方に関係してくる。
 また,前述の,「Shift+ Enter でインデント」「Enterによる行間の増加」「空行」のそれぞれによる段落の切り方も視点移動に関係してくる。したがって,読み手にどのような視点移動をさせるかが,書き手にとっては狙いとなる。

4.note での実例

 note 上の作品について,3つのタイプの例を挙げ,そこからくる読むスタイルについても考えていこう。

 まず,通常の文章に最も近い例として,こっこさんの note から,9000字の小説,「約束の樹」を挙げよう。

 この9000字の小説では,全体のブラウジングはせず,始めの3段落ほどをざっと読んだ後に,最初から読み始めたのだが,ぐいぐい引き込まれて,最後まで一気に読んでしまった。通常の文章のグルーピングが,この小説に合っていたということではないだろうか。
 というより,小説というジャンルがこの形式に向いているということである。こっこさんも,別の作品では,後述する「インデントなしの数行ずつのグルーピング」で書いている。たとえば,「好きすぎて苦しいって、だからこういうこと。」ジャンルのまったく違った文章だ。
 他にも,岩代ゆいさんの小説 「iIt is no use crying over split milk.
岩代さんの場合,小説であっても,後述する中間タイプのグルーピングになっているものもある。つまり,1グループの行数が数行。ただし,段落の始めにはインデントがある。たとえば,「【小説】時を止めてみたら、僕は。」では,量の多い段落もあり,グルーピングの構成についてかなり考えられているものと推察する。
 岩代さんの文のスタイルは多様で,「十字架を背負う」では,詩の形をとっている。ここで「詩の形」というのは,いくつかの文節単位で改行し,句読点がなく,インデントがない形を指す。
 これも,紙の本と同じということでいえば「通常の文章」といっていいだろう。


 これと対極にあるのが,「#いまから推しのアーティスト語らせて」 でグランプリを獲得された,しりひとみさんの作品。

 私はこの手の書きかたは苦手だ。空行が多く,しかも幅が広いので,意識が散漫になり集中力が続かないのだ。これをワープロソフト(Mac の Pages)上にコピペしたら,空行が自動的にすべて1行になり,格段に読みやすくなった。読みやすくなると,内容がどんどん頭に入ってきて,なるほどグランプリだけのことはある,と納得がいく。
 なお,念のため書いておくと,これは私の読み方の話なので,空行が多いスタイルがいいという人や,空行のあるなしは内容には関係ないではないか,という人もあろう。それはそれでよい。


 多くの人はこの中間だろう。たとえば,サトウ カエデさんの,真夏のクリスマスキャロル 。

 他にも,こわれた眼鏡と君の嘘 など,カエデさんの文章は多くがこのスタイルだ。数行ずつのグルーピングで,インデントはない。また,会話文の前後で改行して行間が空いているのも,グルーピングに関係しているだろう。
 このくらいの長さの段落だと,それぞれのグループがリズミカルに目・頭に入ってくる。
 奥村まほさんもサトウ カエデさんと同じような形式。たとえば「走って,書いて,生きていく
 他に,家路ある船乗りの物語 も同じような構成になっている。

 この,「数行ずつ Enter で改行のグルーピングで,段落の始めにインデントがない」スタイルは,note では一番多いタイプではないだろうか。ふみぐら社さん, ちゃこさん ,マリナ油森さん など多数。
 これは,note に特有の書式 ー 文化といえるのではないだろうか。

 実はもうひとつ,画像やイラストなどを入れていく場合があるのだが,これはあとで別に述べよう。

5.いかに段落を構成するか

 いくつかの実例で見た通り,文章における段落の構成のしかたは人によってさまざま。毎回ほぼ同じスタイルで書いている人,内容によって使い分けている人,余り意識していない人・・・。
 自分なりのスタイルを確立している人はよいが,そんなものはない,という人は,この note 特有の段落立てよって,読み手がどのように視点移動をしながら読んでいくかを考えて,自分のスタイルを作っていったらどうだろう。

 私の場合は,ほぼ「中間」で,少し「通常の文章寄り」。1つの段落内の量は数行程度で,Shit + Enter と Enter による改行を使い分け,さらに,インデントによる段落と,空行を入れた段落も使い分けている。
 インデントに関しては,普段は結構いい加減だが,こだわったものもある。「わが青春のブラ4」がそれで,文章の前後関係,空行のあるなしなど,数日かけて推敲した。

6.画像やイラストを入れる場合

 最後に,画像やイラストが入った場合の読まれかたも考えておこう。
 画像や写真は画面上でかなりのスペースを消費する。そのために,読んでいく流れを阻害しかねない。文章と写真では情報量が格段に違うためだ。
 たとえば,旅行記では訪問先の写真を入れることが多いだろう。写真やイラストがあると,まずそちらに目が行く。したがって,文章を読む流れに乗らない配置は避けたい。サイズも変えられるので,フルサイズがよいかハーフサイズがよいかも考慮するとよいだろう。
 例として,ルミさんの「(ゆる遍)四国八十八箇所霊場を巡る旅」を見てみよう。

 写真が多く,文は写真の説明になっている。読んでいくと,写真は適切なサイズでうまく配置されており,よいテンポで読んでいける。ときには,もう少し小さい方がいいのではないかと思われる個所もあるが,そのあたりは好みの問題だろう。
 旅行記では,ゆさっちさんや,まっそさんのものも写真が多く楽しい。写真もうまく配置されているが,サイズを工夫したら,と思う箇所もないではない。
 私が旅行記を書くときは,写真のサイズについて結構考えていて,ハーフサイズにする場合が多い。文章を優先するためだ。ただし,そこでそのサイズにすることがいいかどうかとなると賛否両論があるだろう。

 もうひとつ,他の人の note を引用する場合。
note のURLをそのままコピペすると,見出し画像と始めの150字ほどが,改行なしで表示される。その画像をクリックすればそのページに飛べるわけだが,心理的にクリックしたくなる。すると,そのために文章の流れが阻害されることもありうるわけだ。もちろん,そのページを読んでから先に進んで欲しい場合はそれでよい。しかし,そうではない場合は,タイトルを書いてそれにリンクを貼り付ける方がよい。


 以上,note 独特の書式についてあれこれ書いてみた。
「そんなのあたりまえ」と思われ方も多いだろう。
「なるほど」と納得されて,他の人の note の読み方,自分の note の書き方に少しでも参考になったという方がいれば幸いである。