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#書き手のための変奏曲 : 続編を書く

 今年の七夕の日に提出された #書き手のための変奏曲 という企画がある。

お題企画というよりはマイルストーン(道標)のようなものです。

というコンセプトで,企画概要は

ハッシュタグ:#書き手のための変奏曲
内容:自分の作品で習作(エチュード)を楽しむ。
・過去作をリライトする
・同一テーマで表現方法を変える(セルフパロディ、文体模写など)
など。自由に試行錯誤してみてください。
備考:エッセイ・小説・写真・漫画、なんでも可。
一人何作でもタグ付け可能。

要するに,自由。ただ,一次作品ではないというのが条件,と読み取れる。
9月3日現在で,127件が登録されている。

誰しも,既発表の作品を書き直したいと思うことがある。いろいろな理由で。

この企画のおかげで,それが堂々とできるようになった。

 かく言う私も,早速過去作のリライトを,しかもシリーズ化して発表した。

奈良の夜景 : 十年後
奈良の夜景 : 第三変奏
奈良の夜景 : 第四変奏

ついでにメイキング 奈良の夜景:メイキング も

 リライトは「書き直し,改訂」という意味だから,自作品を,と思うが,リメイクの意味でとらえて,他人の作品をと拡張してもいいだろう。

 他人の作品のリライトを「させてください」と募集したのが百瀬七海さん。多くの人が応募して次々に作品が発表された。
私もお願いして書いてもらったのが「あなたの夢の隣で」

オリジナルは,だいすーけさんの企画に応募した 「球形の天使たち」

 自分ではなく,他の人にリライトをお願いする理由は,人によって違うとは思うが,私の場合は,自分で気に入っていた作品を,カラーのまったく違うひとが書いたらどうなるか,という興味だった。
 結果は,まさに,カラーの違う作品に仕上がっていて面白かった。これは,まさに百瀬さんの作品。

 他人の作品のリライトは私自身もやったことがある。siv@xxxx さんの「どないもならへん」。
 伊藤緑さんのイベント「原稿用紙二枚分の感覚」に応募された作品で,気に入った作品だった。気に入っただけでなく,伊藤さんの評を受けて書き直すとしたら,と思ったときに,やってみたいと思ったのである。そこで,siv@xxxx さんの許可を得て書いた

 そのときに,siv@xxxx さん自身もリライトしかけた,ということだったので,それが気になり,ぜひ完成して発表してください,とお願いしてできたのが,こちら。

 比べてみると,siv@xxxx さんのリライトはやはり siv@xxxx さんのカラーのまま。私が書いたものとは色合いが違う。私には,siv@xxxx さんのようなリライトはできない。
 どちらがいい,というのではなく,それこそが持ち味であり,あとは読む人の好みの問題だろう。
 もし,「評する」いや,感想ということであれば,siv@xxxx さんのリライトの方が,タイトルにぴったりで,切なさがオリジナルより加速していると思う。

 さて,#書き手のための変奏曲 の要項に,もう一つのジャンルが示され,主催のマリナ油森さん自身が実践されたものがある。文体模写だ。
その第一作が「Daylight Walz

 これは嶋津亮太さんの文体模写で,そのあと,逆佐亭 裕らくさん,みくりや佐代子(ちゃこ)さんと続く。
 私から見ると,これは大変なことだ。
 文体模写ができるのは一種の才能だろうか。
 私自身は,高校時代に夏目漱石に傾倒して,漱石風の文を書いたことがあったが(たいしたことはない)それを考えると,模写のためには,その人の作品をかなり読み込んでいないとできないということだ。模写だと気がつく方も同様。とても真似はできないし,上記の3作品も,「あれ?」とは思ったけれど,文体模写であることすらわからなかった。

 この時点では,「へえ,面白い。でも自分にはできないな」ぐらいの感じだったのだが,その後,びっくりすることが起こった。

 猫野サラさんのイラストから着想を得て「夏の日,山の茶屋にて」を書いた。

 足下に清流が流れる山の茶屋で水まんじゅうを食べ,店の娘さんと会話して,吉野に誘う,という掌編。
 最後に,「さて,吉野に誘ったあと,どうなるのか。想像にお任せします。」と書いたのだが,ここで,「想像する」ではなく「続きを書く」という展開になり,ふたりのひとが続きを書くことになった。

 先にでき上がったのは,船石和花さんの「山の茶屋より始まりし」

 まったく考えていなかった,女性の方の視点で書いた続編。女性の視点のものはやっぱり女性が書くものなのかと,おおいに納得した。
「続編」を意識して,E.Vジュニアカラー を考慮したかもしれないが,これはやはり船石和花さんの作品だろう。

次が,南葦ミトさん。「ちょっと吉野まで」

 はじめの10行くらいを読んで,びっくり。まるで自分が書いたようだ。
先の,マリナさんの文体模写作品がわからなかったくらい「鈍い」ので,どこが? といわれると説明に困るのだが,改行のしかた,地の文が説明でなく自分の考えになっている点(一人称というのかな),会話文など。

相変わらず風鈴は涼しい音色を奏でている。
夏に染み入りながら外の清流を眺めていると,先ほどの彼女が水色のワンピースを着て現れた。

などは,酷似としかいいようがない。

なんということだ,彼女の行動力には感服してしまう。

もそう。E.V.ジュニアならこう書く,というところ,数え上げたらきりがない。

 それで,#書き手のための変奏曲 への登録を勧めたのだが,南葦ミトさんはもちろん「文体模写」の意図があったので即決まり。

 そこで,まてよ,と思った。
「続編を書く」というのも一次作品ではないので,#書き手のための変奏曲 でいいのではないか。
 むしろ,いままであまり見たことがないので,マイルストーンという意味でもいい。
 そこで船石和花さんにも提案して,この2つが #書き手のための変奏曲  に登録することになった。

 さて,南葦ミトさんの作品の末尾は,なんとなく続きがありそうな終わり方。
だれか続きを書いてみませんか。