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Web上の動画で本当に勉強できるのか

 コロナウィルスで休校になり,スズキ教育ソフトなどがWeb上に教材を無料公開している。よいことだとは思うが,それを利用できるかどうかの環境の有無で格差が生まれる懸念もないではない。
 また,Youtubeには学習内容を解説したいろいろなコンテンツがある。ここでは,その動画について考える。

 クイズ形式の動画がある。
 4つのおもりを重い順に答える問題。解答時間は1分。しかし解説は2分以上かかっている。考えるのに1分なら,解答も1分以内でなくてはおかしい。

 多いのは,解説者がホワイトボードに向かって板書しながら説明するものだ。
たとえば,「小学校算数」で検索すると,いろいろ出てくるが,似たようなサムネイルのたくさんある動画がある。つまり,同じ人のものだ。チャンネル登録80万人以上の動画である。
 小学校から高校まで単元ごとにたくさんの説明動画が用意されている。ところが,中を見てみると,大きな欠陥がある。
 解き方の説明するが,なぜそうなるのか,なぜそうするのかは説明しない。しかもそれを「何でそれでなるのかは説明しないのでひとまず解けるようにしよう」と明言しているのだ。
 「こうします。このやり方を覚えましょう」というが「なぜ」の説明がない。

 別の動画。小学校5年生の「単位量あたりの大きさ」で検索して出てきたある動画を見てみよう。

動画を見る前に,次の問題をちょっと考えてみてもらいたい。

5.1m² のへいを塗るのに,0.6Lのペンキを使いました。ペンキ1Lでは何m² のへいをぬることができますか。

どのように考えてといただろうか。わり算?

動画では次のように書きながら説明していっている。

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「単位量あたりの大きさ」となっているが,実際には「小数のわり算」で学ぶ内容だ。
 それはさておき,実際の教科書では次のようになっている(学校図書 算数5年生)

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比べてみると,考え方が異なっているのがわかるだろう。動画の方では「面積図」なるものを使っている(左下)。この「面積図」の説明はない。さらに,いきなりわり算の式が出る。なぜわり算になるのかの説明はない。
 こういう問題ではこうする,という説明で,なぜそうするのかという説明はないのだ。


 比較的よいと思ったのは次の動画だ。

説明は丁寧だが,学習者の思考ペースでは進められない。当然といえば当然だが,動画での説明の限界といえよう。

中には,「わかっているものは飛ばしたい」という需要にあったものもある。

この動画は,「総復習」となっていて,「わかっている部分は飛ばして見よう」,と最初にガイドされている。親切な作りだ。

 このように,いろいろな動画があり,玉石混交だ。

 では,どうやっていい動画を探していけばよいのか。
子どもでは善し悪しを比べられないし,忙しい親にはあれこれ視聴してみる暇はない,と言われるかもしれない。残念ながらその通りである。
 たとえば,京都教育大学の公式チャンネルのものは,ほぼ教科書をなぞっている内容で,良質と言えるだろう。一応「おすすめ」となるが,「教科書をなぞっている」ということは,「これではわからない」ということにもなりかねない。実際には,教科書通りの授業をしてもわからない子どもが相当するいるのが現状だからだ。

Web で自学といってもそう簡単ではないということを,まず知っておきたい。