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30日間の革命 #毎日小説63日目

 そうして、加賀は坂本と何となく気まずいまま、放課後を迎えた。特に喧嘩をしたわけでも、何か意見が食い違ったわけでもないのに、なぜか坂本にいつも通り話しかけることが出来なくなっていた。

 加賀は面談に向かうため、帰り支度を済ませ、席を立った。この時も、いつもなら坂本へ声をかけていたが、今日は声をかけずに席を立った。すると、また加賀との入れ違いで仙波が教室へと入ってきて、坂本の元へと向かった。加賀は振り返ることなく、ぎゅっとカバンの持ち手を握りしめ、職員室へと向かった。

 「失礼します。3年1組の加賀です。面談にきました」

加賀は職員室のドアを開け、高橋を呼び出した。

 「おぉ加賀、こっちだ」

すると、職員室の奥の小部屋から高橋が手招いていた。加賀は、そのまま職員室へと入っていった。小部屋には、小さな一人掛けのソファーが机をはさんで対面に置いてあるだけだった。

 「へぇー。こんな部屋あるんですね。初めて来ましたよ」

 高橋は、お茶を入れながら、

 「まあ普段は生徒はここへ入らないからな。応接室みたいなもんだ。なら、そっちにかけていいぞ」

と加賀をソファーへ座らせた。

 「さて、前回の面談からもう一カ月弱経ったわけだが、その後はどうだ? 進路については考えたか?」

 高橋はさっそく進路の話しを持ちかけた。

 「……はい。あれから自分でも真剣に考えてみました。大学とかからもパンフレットを取り寄せたりして、親とも相談しながら考えました」

 「ほう、そうか。何か授業も真面目に受けてるみたいじゃないか。前に言った通り、少しは大人になったんだな」

 高橋は少しからかってみせた。

 「はは。当たり前じゃないですか。こう見えても、しっかり者ですから」

 加賀も、それに対しておどけて返答をした。

 「そうだな。まあ、なら進路について聞こうじゃないか。どうする。進学か? それとも他の進路を選んだのか?」

 加賀は膝の上においていた手をぎゅっと握りしめて、こう答えた。

 「俺は、高校を卒業したら世界に旅に出ます!」

 高橋は飲んでいたお茶を少し噴出した。

 「お、おいおい。俺が聞いたのは進路の話しだ。卒業旅行なら自由にどこへでも行ってくれ。で、大学へ進学するのか?」

 「いえ。進学もしません」

 加賀は力強く答えた。

 「なら就職か?」

 「いえ。就職もしません」

 「あのな、なら進路どうするんだよ?」

 「だから、さっき言ったとおり、俺は世界に旅に出ます。いわゆるバックパッカーってやつですね」

 「おいおい。それは真剣に答えているのか? この数週間、真面目にそんなことを考えていたのか?」

 高橋は呆れたような顔で加賀へと質問した。しかし、加賀は堂々と

 「はい。真剣に考えた結果です。これは、遊びで旅行に行きたいっていうこととは違います。もちろん、お金を貯めるために、まずはアルバイトとかをしながら貯金をするつもりです」

 「はあ? もうめちゃくちゃだな。親御さんには言ったのか?」

 「はい。親にもしっかりと言いました。もちろん最初は猛反対されて、かなり言い合いになりました。でも、自分の気持ちに嘘をつくことはできないので、何回も親と話し合って、自分でお金を何とかするなら、好きにしろっていうことで認めてもらいました」

 高橋はその話を聞き、頭を抱えた。


▼30日間の革命 1日目~62日目
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