⚾︎1話 「伝説のファースト」
僕は生粋のおじいちゃん子である。
「じいちゃんはね昔すっごいホームランバッターでファースト守ってたんだよ。」
このすんごいぼんやりした伝説をばあちゃんから聞いて育った。ファースト守ってたんだよの蛇足感がとんでもない。
伝説のファーストのじいちゃんは大の阪神ファンで、ナイターの試合がある日は必ずテレビで試合を見ていた。勿論、僕もじいちゃんの膝の上で一緒になって見ていた。
野球の試合を生で見たい。暗いじいちゃんの部屋、テレビの光を受けて青く光るじいちゃんの顔を見て、僕はそう言った。
じいちゃんはめんどくさそうに笑いながら、何も言わず頷いた。
小学校2年生の僕は初めて東京ドームの中に入った。中からスターティングオーダーを発表する声が聞こえた。
1番!センター!SHINJO!
シンジョー??阪神戦ばっか見てた僕には聴き馴染みのない選手だった。じいちゃんと見に来たのは、日本ハムの試合だった。当時の僕は、なんで阪神戦じゃないんだろうと困惑していたが、今ならわかる。じいちゃんは日本に帰ってきた新庄剛が見たかったんだ。
登録名が英語でSHINJOだから、当時の僕はSHINJOはアメリカ人だと思っていた。マジで。そしてSHINJOが打席に立った。東京ドームはその日で一番の盛り上がりを見せた。じいちゃんも見たことのないくらいニンマリ顔だった。
「シンジョー!!!」気がついたら僕は新庄を応援していた。両手をギュッと強く握ってシンジョーがホームラン打てますように…!子供は本気で願ったら届くと信じて疑わないので、本気でシンジョーに祈りを届けた。
シンジョーは打った。僕とじいちゃんは打球を目で追った。あっという間に僕たちは打球を見上げていた。
シンジョーは本当にホームランを打った。祈りが届いたんだ。
その日から僕のヒーローはシンジョーだ。
シンジョーみたいな野球選手になる!!そう思い、地元の少年野球チームに入部。までは2年間かかった。1人で体験に行くのが恥ずかしいという持ち前のシャイを発揮してしまった。シンジョーもそこそこ落ち目になっていた2年後。小学校4年生の時に僕は野球を始めた。
シャイな僕と一緒に体験入部に行ってくれた親友の中嶋(ナカジ)と一緒に入部した。
次回から、ロッキーズ物語がやっと始まります。
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