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「外国人採用に特化した有料職業紹介事業」の考察と参入を阻む「3つの壁」

こんにちは、株式会社エベレストコンサルティング代表取締役の野村篤司です。新年、あけましておめでとうございます。年末年始で少し業務が落ち着きましたので、最近、当社に参入のご相談が増えてきている「外国人採用に特化した有料職業紹介事業」の件について、事業者の一人として得られたノウハウ等を共有したいと思います。同様のビジネスプランを考えている人(行政書士や社会保険労務士を含む)や金融機関融資担当者の方の参考になれば幸いです。なお、当社は「行政書士法人エベレスト」(※代表社員は私自身です)との共同事業であることを強みとして、「エベレストキャリア™」というサービス名称で有料職業紹介事業(※国外は韓国・ミャンマー・ベトナムの3か国)及び就労マッチングサイトの運営を行っております。

①はじめに(労働市場・人材サービス産業の状況)

まずはじめに、「市場性(外部環境)」からご紹介します。そもそもビジネス(事業)として開始するには、ある程度の経済的な規模感が必要ですね。これはすなわち「顧客ニーズの大きさ・多さ」ですので、これがそもそも小さいビジネス領域(市場)では、売上(から生まれる利益)は捻出できても、事業として拡大させることができるかというと疑問が生じてしまいます。なお、ここでご紹介する【人材サービス産業】は大きく分けて「求人広告」「人材派遣」「有料職業紹介」の3つに分類します。その他に「教育研修事業」を含めたり、広義では「雇用管理(人事系ソフトなど)」を含めることもありますが、ここまで含めるとかなり大きなマーケットになりますが、この「労働市場・人材サービス産業」の市場分析には、以下のレポートが非常によくまとまっているので、そちらをご参照ください。こちらは2020年以降、人材サービス産業への新規参入を検討される方は「必読」になるでしょう。なお、時間がない方に結論だけ申し伝えますと、当社の見解としては「人手不足」を背景とした採用難時代にある現在は、【外国人採用について「追い風」が吹いているため、貴重な内需ビジネスでの有望市場である】と考えています。但し、次に記載する通り、この市場を攻略するには「3つの壁」が存在します。

②外国人採用マーケットに存在する「3つの障壁」

私が経営者として実際に事業を行い、難しいと感じた「3つの壁」は以下の通りです。以下の3つは参入ハードルにもなるため、事業成功の肝と捉えています。

(1)外国人を雇用するノウハウ・経験が乏しく前向きな企業が少ない

一般的に、今は「人手不足」と言われており、そのことは有効求人倍率などの統計データからみても間違いないでしょう。こういった状況下においては、有料職業紹介事業者は、「求職者獲得に力を入れること」が王道です。なぜなら、求人企業は多数あり、数々の求人情報誌を閲覧すれば、「求人企業を見つけることは容易」な市場環境にあるからです(※もちろん業界によって差はあります)。当社も、当該事業への参入前は「うちは海外ルートがあるからたくさん海外人材を紹介できる!優位であることに違いない!」と意気込んで参入を決めました。しかし、いざ参入して営業を開始してみると、どうも様子が違います。どの企業も「人手不足は間違いないし、すぐにでも採用したいけど、外国人は雇ったことがないので、、、」と口を濁すのです。これが1つ目の壁「外国人採用ノウハウ・経験が乏しい=消極的」です。つまり、外国人採用に特化した有料職業紹介事業を成功させるには、①前向きな企業に絞ってアプローチをする、又は②外国人採用ノウハウに関する勉強会等を実施する(消費者教育)の2つが必須になると考えている。なお、当社の戦略は、①及び②を併用しています。②については、当社が「外国人採用適格性認定™」という名称で、行政書士及び社会保険労務士(外国人就労アドバイザー™)を講師とする人事責任者向け研修を行っています。当該研修を修了し、就業規則等のチェックを行うことで、外国籍労働者の受け入れ態勢を整えるという仕組みです。行政書士と社会保険労務士という国家資格者(プロ)が講師を務めるというのが1つのポイントです。なお、研修を受講した結果、「注意すべきことがわかったし、外国人採用の成功例もイメージがついたので、採用したい!エベレストキャリアさん、紹介してよ!」という流れに持ち込むわけです。もちろん、逆に「外国人採用は難しいことがわかった、検討していたけどやっぱり辞めよう」という人もいます。我々はプロとしてデメリットも伝えなくてはなりません、ある意味これは仕方がないことだと思っています。いずれにせよ、「ノウハウ提供」としての価値提供にはなるのではないでしょうか。

※①については、具体的にどのようにしているかはまだ検証途中なので企業秘密です。成功しましたら、シェアする予定ですので、ご理解ください)。

(2)グローバル人材は、「世界中で獲得競争」にあり、実は採用が難しい

2つ目の「壁」は、外国籍労働者にとって、「日本だけが働く場所ではない」し、「高い賃金を欲している」ということです。事実、最近ではスイスやオーストラリア、近隣では韓国なども、日本より賃金相場が高いなどを理由として、多くの労働人材が流れているそうです。日本企業は「外国人なら日本人よりも安い賃金で雇用できるだろう」なんて社長もいまだに多いですが、全くの「勘違い」になります。そもそも外国籍の方々は国内産業がまだそれほど発展していないため、国策として海外で働くことを後押ししているわけですが、「高い賃金を得るために出稼ぎに行く」ということからすれば、当たり前かもしれませんね。なお、「入管法(出入国管理及び難民認定法)」及び関連規則においても、「日本人と同等以上の賃金」が原則となっており、「安い賃金で雇用」することはできません。もちろん要件に合致するのであれば、日本人と同様に社会保険への加入義務があります。外国人採用に特化した有料職業紹介事業で成功するためには、日本人と同様に、「外国籍労働者も企業を選ぶ側」であることを知っておくとよいでしょう。

(3)新しい在留資格「特定技能」の活用がかなり難しい

3つ目の「壁」は、マーケット拡大に期待された新しい(2019年4月施行)在留資格「特定技能」に関する活用の難しさです。私は経営する行政書士法人にて、以下の専門サイトを制作して専門的に対応を行っておりますが、他の在留資格と比べても「とても日本企業側が自力で申請することは煩雑でストレスも多くてできない」と感じます。これは「ポジショントーク」と受け止められるかもしれませんが、先日申請した企業は1名の申請で申請書及び添付資料が「199ページ」でした。たった「1名」です。

そもそも外国人採用に特化するには「在留資格」の知識が必要不可欠です。これがある意味「参入障壁」になっているため、事業戦略上のポイントであることも事実ですが、この知識がないまま参入すると「雇用が決まったのにビザが得られなかった。採用に至るまでの時間と経費を返せ!」なんてクレームに繋がりかねません。なお、在留資格に関する知識は膨大で、出入国在留管理局への申請取次実務を経験していないと難しいでしょう。これらの知識を勉強するには限界がありますので、手っ取り早いのは、「特定技能ビザにも詳しい行政書士に関与をお願いする」です。幸い、日本には行政手続きのプロフェッショナルである「行政書士」という制度がありますので、その制度(他脳)を上手く活用することで解決を図るのです。当法人(行政書士法人エベレスト)も多数のお客様(日本企業)の支援をして来ました。

なお、在留資格の中でも新しい在留資格「特定技能」が活用できるか否かは大変重要です。この在留資格は申請こそかなり煩雑であり、採用後も「1号特定技能外国人支援計画の実施」が必須になるなど大変ではありますが、これまで就労することが出来なかった「単純労働」(※身分系在留資格者や資格外活動許可を得た留学生等を除く。以下同じ。)についても、専門的な技能を要する業務に「付随する限りにおいて」従事することは差し支えないとされました。そのため、例えば「ホテル」において、フロントでの多言語対応の接客だけでなく、繁忙期での部屋の清掃活動にも従事することが可能となったのです(※専ら清掃業務だけでは引き続き就労不可能です)。つまり、この点においては他の「技術・人文知識・国際業務」などの就労系在留資格と比べて「雇いやすい」と言えるためです。

③「3つの壁」(参入障壁)=事業成功のポイント

前述の通り、「3つの壁」があるわけですが、逆に言えば、これらは「参入障壁」であり、「新規参入が難しい」理由になります。つまり、これらの3点を事業上の経営課題としてしっかりと認識したうえで、乗り越えられる方策(特定技能ビザに詳しい行政書士との連携)を取りさえすれば、十分に勝機があるビジネスだと考えています。当社も中国籍従業員と韓国籍従業員を現在(2020年1月3日現在)雇用しており、ベトナム人留学生もアルバイトで雇用したことがありますが、優秀な外国籍従業員がいるだけで日本国内に在留する外国籍消費者に優位にアプローチすることが可能となり、非常に助かっています。今後もネパール人と中国人を積極採用予定ですし、実体験としての「外国籍労働者の積極雇用」をお勧めしています。ぜひ、上記3つの壁を越え、「外国人採用に特化した有料職業紹介事業(※)」に参入されてみてください。共に、当該事業を通じて、外国籍労働者及び日本企業双方にとって働きやすい職場環境が整備できれば幸いです。

※国外にわたる職業紹介事業を行うには、通常の許可では足らず、「国外営業」ができるように追加書類の提出が必要です。難しい場合は、社会保険労務士にてご依頼ください。当エベレストグループの社会保険労務士でも対応を行っております。

④採用マッチング成功後に行うべき「2つの支援」!

前述のとおり、「3つの障壁」認可やを外部専門家の力も借りながらクリアした後は、基本的には日本人の就労マッチングビジネスを行う段取りと大きくは異なりません。求人企業及び求職者の双方から、希望条件をヒアリングし、スキルや業務特性、「相性」を見極め、双方が納得のいく雇用を生み出していくのです。そのために、双方の情報をできるだけ多く得る必要があるため、求人サイトの構築や人材ネットワークの構築は必須です。それでは、「外国籍労働者に特化する場合の違い」はなんでしょうか。これについて、当社は「2つの支援が必要不可欠」と考えています。以下に記載します。

(1)「在留資格」の適正取得と「維持・管理」

⇒日本人労働者と全く異なるのが前述のとおり「在留資格」ですね。永住者や定住者、日本人の配偶者等の「身分系在留資格」を有する外国人の方はまだしも、「技術・人文知識・国際業務」を筆頭とする「就労系在留資格」で採用した場合は特に注意を要します。在留資格には原則として期限があるため、その期限が到来するたびに、適正に「更新許可」を申請して許可を得る必要があります。これに失敗すれば、残念ながらいくらエース級社員に育っていても、本国に帰らなくてはなりません(再申請で許可される場合等は除く)。また単純に在留期限が経過してしまった場合でも、「オーバーステイ」(不法滞在)となりますので、要注意です。これらの管理が日本人とは異なり発生することに、採用エージェントとして注意しておく必要があります。なお、当社は「ビザレコ™」という在留資格を管理するサービスを開発して自社利用も行っています。期限が近付くと自動でメール通知されるので、人事担当者の負担が少し和らぎます(あと求人も掲載できたりします)。

(2)入社後の継続的な定着(生活支援)フォロー

2点目は、定着支援です。日本人を対象とした採用エージェントの場合も事後的なフォローは大切ですが、異なるのはその範囲です。外国籍労働者は日本での生活に不慣れなこともあるため、業務上のみならず、日常生活面での支援を行い、生活上の不安も解消していくことが重要な支えとなります。なお、2019年4月より開始した新しい在留資格「特定技能」で採用(累積5年が上限です:1号)した場合は、生活上の支援や事前ガイダンス等、空港への送迎などが「義務」として定められています。法律で義務化するくらい重要だと捉え、このあたりの支援も適切に行える体制を整えるとよいでしょう。なお、最近では、「登録支援機関」に登録される方もすごく増えてきました。「登録支援機関って何?」という方は以下の記事を参考にしてください(私がまとめた記事です)。

⑤最後に(事業運営のうえで大切なこと)

前述の通り、たった数年の事業経験で偉そうなことを言っていますが、それなりに外国籍労働者の雇用を検討する採用担当者と、日本での就職を考える外国籍の方と会って話して思ったことが2つあります。それは、

(1)「外国籍労働者だって、本質的には日本労働者と同じ」

(2)「まだまだ外国籍労働者を安く雇用してやろう、と思っている人がたくさんいる」

という2点が自社の気づきです。言語レベルに差があるのは当然ですが、(1)日本人と同様に、「高い給料」が欲しいですし、「働きやすい職場」を好みます。手続き上の違いは当然にありますが、根本は日本人と変わりません。なのに、まだまだ(2)の考えの企業が多いです。この2点に気づき、現在は、前述の「外国人採用適格性認定研修」事業に力を入れるようにしています。本記事もその一環ですが、「外国人材の受け入れ」に関する正しい理解と差別や偏見のない企業経営者(・人事担当者)が少しでも増えればよいなと日々考えております。最後までご購読頂きましてありがとうございました。

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士業系コンサルティングファーム「エベレストグループ」にて、行政書士法人エベレストと株式会社エベレストコンサルティングを経営しています。執筆内容は専門業務である「外国人雇用」「相続・遺言(終活)」「サ高住等高齢者施設の開設」が中心で、役に立つコンテンツを配信出来るように頑張ります。