逆噴射小説大賞結果発表(20220303)
大賞・奨励賞発表
コロナを求めて競い合う! 小説の800字冒頭の面白さを競い合い、大賞受賞者にはコロナビール(もしくはドリトス)が送られる逆噴射小説大賞2021が結果発表されました。結果は……こちら!
ということで、誰も悪くないこれは悲劇やさんの『薄火点』が大賞となりました。おめでとうございます! これは有望と期待されていた作品です。悲劇やさんの受賞を受けての記事を読み、「なるほど1年間かけて執筆されたんだな」とわかりました。
全力を尽くして『薄火点』を制作されたことが理解できます。これは大賞受賞も頷けます。悲劇やさん、大賞おめでとうございます!
悲劇やさんが逆噴射に投稿された作品のうち、別な作品は完結しています。よろしければどうぞ。
また、今回は奨励賞として二作が選出されました。
おお、奨励賞……! 逆噴射ワークショップで見かけたぶりに再会しました。できれば私も欲しかったのですが、今回は実力が至らず。ということで電楽サロンさんと螺子巻ぐるりさん、奨励賞おめでとうございます!
受賞作の作品をそれぞれ読み返してみると、三者三様の世界が浮かび上がります。『薄火点』は雪山、SF、青春、クローズドルームミステリがミックスされた話。『虚面狩り』は日本の能、イタリア系犯罪組織ブラック・ハンド、人体蘇生。『玄獣狼、吠える』は、剣豪、人間と超自然とのつながりを描いた作品で、それでいてオープンワールドゲームのような風通しの良さがあります。
昨年までの受賞作品から、位置づけが動いてきたように思えます。来年はどう変遷していくのかイメージすると楽しみです。
そして私の作品は受賞ならず……! うーん残念。ひとまず投稿作については鋭意続きを書いているので、仕上がり次第投稿していきたいです。でもnoteに発表するか公募に出すかは決めていません。
ちなみに、3月中にダイハードテイルズさんの方で、コメンタリーつきで最終選考まで残った作品をまとめた記事が投稿されるそうです。作品数は十数点ほどです。こちらには私の作品が入っているかも……! と期待をしています。
コメントがつくことで、この辺が面白いつまらないという評価をされたいですが、それ以上に「この小説はこの属性があるのでこの方向に伸ばせば良いのではないか」というフィードバック自体が貴重です。小説って一人で作って一人で完成させるしかないメディアなんですよね。作りながら上司に指示をもらうとか難しいので、こうした、制作途中(もしかしたら全部書き上げてから投稿したかも)でPROからのアドバイスを頂ける機会って実際レア。ドキドキして待ちたいです。
最近読んだ本も紹介します。
最近読んだ本
町屋良平『愛が嫌い』文藝春秋、2019
短編集。「しずけさ」「愛が嫌い」「生きるからだ」を収録。
町屋さんの文章だと、特に面白いのが文体の軽さなんですね。ところどころに漢字の代わりにひらがなが入ることで優しさ(とか軽み)が演出され、「スマブラ」とか「ドラクエ」など、スーファミや64世代に見慣れた単語が多く、スルスルと読めてしまう。そのため、題材に心療内科とかネグレクトなどの重いものがあっても、スルスルと読めてしまう。良い……!
「しずけさ」は、人生が憂鬱になって会社を辞めた青年と、夜に家にいられない少年が夜中に出会う話。青年と少年が交流したりいろいろあるのだが、最終的には青年が人生に抱く不安と嘆き、問題は解決されず、ぼんやりと生活が続く感じが身に染みます。
「愛が嫌い」は、友人夫婦の子どもをベビーシッターする青年の話。青年は以前に彼女がいたけれど、青年が無職になったり体力がなくなってきたりで段々彼女のことを気遣えなくなってきたため、お互いに疲れてきて関係がグチャグチャになっていく流れが面白いです。
ブラッドレー・ボンド フィリップ・N・モーセス 本兌 有 杉ライカ『スズメバチの黄色』KADOKAWA、2019
ケオス渦巻くネオサイタマ。その片隅でヤクザ稼業をしながら生きる少年たちが、とあるメガコーポの御曹司を助けたことがきっかけで、パワーゲームに身を投じることになる話。
同作家陣によるニンジャスレイヤーのスピンオフ小説ですが、ニンジャが出て殺す! という方向性から若干異なっています。文体に落ち着きがあり、奥ゆかしさがあります。そのため、パルプなアクション小説や、ヤクザが活躍するサイバーパンクSFの面も浮かび上がってきます。とはいえ、たまにニンジャスレイヤー用語があってちょっと笑ってしまう。きっとこれは作家陣の力量の賜物。
ヤクザにまつわる精神的概念にスポットが当てられているところは、コミックビームで本兌 有さん、杉ライカさん連載中の『アラタの獣』がうっすらと連想されます。
幼馴染的に同じ地域に育ったけれども、特に恋愛感情とかはなく、自然体で会っているミルチャと火蛇の関係性が好き(あとミルチャの腕が四本あるのも好き)。
挿絵が力強い。スタイリッシュかつ主張しすぎないイラストには、静かに立ち上るパワーがあります。終盤のイラストは作中人物の心象を体現したようなつくりで、迫力がある、何度も見返したくなる良い一枚。総合して作品全体にクールかつアッパーな流れがあり、非常に良い……
以上です。世間はまだ寒く、雪とかいろいろ多い……カラダニキヲツケテネ!
《終わり》
さささ
さささ
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