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エッセイ

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執筆した雑記、月報などをここにまとめています。
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#感想

なかせよしみ『漫画の先生 ep6.』『ep7』

なかせよしみ『漫画の先生 ep6.』『ep7』

なかせよしみ(まるちぷるCAFE)『漫画の先生 ep6.』(2017)と、『ep7.』(2018)を読んだ。どちらも同人誌である。

『漫画の先生 ep6.』あらすじ:国際展示場で年4回開催されるイベント、コミトピア。バイトや学校で非常勤をしている漫画家の響美晴は、サークル側で出店した。売り側として手慣れた美晴は、順調に本を売る。このままいつも通りに終わってほしいものの、イレギュラーな事態が発生

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小津端うめ『春を待ちながら』――傷だらけの女と男

小津端うめ『春を待ちながら』――傷だらけの女と男

小津端うめ『春を待ちながら』千秋小梅うめしゃち支店、2018を読んだ。同人誌である。続き物で、三作目だ。

あらすじ:フリーターの良一は、診療所に勤めている友人の用事で、こるり市の診療所を訪れる。そこで事務をしている早苗と出会うが、彼女が、病院の分院長候補の内坂に暴力を振るわれる現場を目撃してしまった。早苗は無表情にされるがままだ。元来おとなしい性格の良一は内坂に強く言えず、消極的に割って入るしか

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平山夢明『ヤギより上、猿より下』――誰も追随できないユーモア、展開、エンディング

平山夢明『ヤギより上、猿より下』――誰も追随できないユーモア、展開、エンディング

平山夢明『ヤギより上、猿より下』文春文庫、2019を読んだ。

短編集だ。四作品が収録されており、初出は『オール讀物』である。「よくこんな作品を雑誌に収録できたな……」と思うほど凄まじい作品だらけで、一作品を読むのに何度も休憩する必要があった。以下にタイトル別に感想を載せたい。

『パンちゃんとサンダル』――PANDA AND ALEKSANDR主人公はタクムという小学生だ。家で父が母を殴る。タク

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銅大『SF飯 宇宙港デルタ3の食糧事情』――だるまさんがころんだ、ぐりっ、ぴーっ!

銅大『SF飯 宇宙港デルタ3の食糧事情』――だるまさんがころんだ、ぐりっ、ぴーっ!

銅大『SF飯 宇宙港デルタ3の食糧事情』、ハヤカワ文庫、2017を読んだ。以下続刊している。

飯である。宇宙で飯である。もともと住めるところでなかった宇宙まで来れたんだからそこまでこだわらなくてもいい気がするが、そんな融通がきかないのが人類である。栄養を取らなくては倒れるし、栄養を取れるなら、ちょっと一捻りしようじゃないか。焼こう。煮よう。発酵させよう。

ということで、食料合成機ができた。宇宙

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鷹見一幸『再就職先は宇宙海賊』――意地、意地、意地、ロマン!

鷹見一幸『再就職先は宇宙海賊』――意地、意地、意地、ロマン!

鷹見一幸『再就職先は宇宙海賊』ハヤカワ文庫、2018を読んだ。次がありそうな書き方だが、もしかしたらこれで完結かもしれない。

SFには前提がある。スチームパンクならかっこいい蒸気機関車とか飛行船が出てくるし、ニンジャスレイヤーの場合は2000年問題でUNIXがばくはつし、そもそも平安時代はニンジャに支配されていたという前提だ。このSFの前提は、月である。ざっくりいうと、スーパーテクノロジーを持つ

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水城正太郎『道化か毒か錬金術』――自由に暴れるエンタテイメント

水城正太郎『道化か毒か錬金術』――自由に暴れるエンタテイメント

水城正太郎『道化か毒か錬金術』HJ文庫、2018を読んだ。以下続刊している。

どんな作品かと聞かれたら、半分シリアスだが半分自由な作品だ。陰謀が出たと思ったら日本の相撲取りの話になったり、事情聴取のすぐ後でヘヴィメタ突っ込んできたりとギャップが忙しい。雰囲気としては夜中になんとなくつけた深夜ドラマのノリなのだが、最終的にはエンタメに収束していく。

舞台設定がなかなか凝っている。ページを開くと最

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三河ごーすと『友達の妹が俺にだけウザい』を読んだ

三河ごーすと『友達の妹が俺にだけウザい』を読んだ

三河ごーすと『友達の妹が俺にだけウザい』GA文庫、2019を読んだ。1巻である。

この世界のウザさは褒め言葉に入ると思う。何故かというと最初の語りから若干ウザいのだが、フキノトウめいた味がある。苦いが、山を乗り越えるとおいしくなる。お前……分かっててその語りだな……という入りだ。

出てくる人物は、デキる系主人公にまとわりつく友達の妹で美少女……主人公の教室に転校してくる従姉妹の美少女……そして

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星野実『漫画アシのABC総集編その1』を読んだ

星野実『漫画アシのABC総集編その1』を読んだ

星野実『漫画アシのABC総集編その1』を読んだ。

2010年ころの同人誌だが、すごい……4コマ漫画でアシスタント目線から漫画業界を描いているが、表紙に『ブラック会社も裸足で逃げ出す業界へようこそ』とか書いてある。ヴォエッとなる。

内容は基本的に実録漫画、暴露漫画だ。実名は出ておらず、登場人物はパンダさんとかクマ子さんとハートフルなのだが、どっちかというとジョージ・オーウェルの『動物農場』に近い

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漢弾地『僕と妻の場合』を読んだ

漢弾地『僕と妻の場合』を読んだ

漢弾地『僕と妻の場合』2017、飛鳥新社を読んだ。四コマ漫画、短めのエッセイが入った漫画だ。登場キャラは夫と妻で主に二人が会話したり買い物しているが、たまに「考えが整理されてモチベーションがあがるので睡眠はすごい」とか「師匠にいい加減な態度で接する弟子が成長するわけない」などの頷けることが書いてあってためになる。

夫婦コミュニケーションの夫婦中心で描かれているがだんだん裾野が広がってきて、コミュ

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