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Pure Live Londonライブレポ - ロンドンのDreampunk音楽フェスに参加してきました。

イギリスで開催されたフェス、Pure Live Londonについてのレポートです。


Eulalieといいます。ゆーらりと読みます。京都で音楽活動をしています。

先日イギリスで初のライブをしてきました。
初のイギリス、初のヨーロッパ、初めての場所に会う人たちと初めてづくしの経験でしたが、皆さんに助けられ本当に楽しいライブをすることができました。

今回書くのはロンドンで開催された、わたしも参加した音楽フェスティバルPure Liveについてのレポートです。

Pure Liveについて

レーベルPure Lifeとは。

今回のイベントを企画したのはイギリスを拠点に活動するレーベルPure Lifeです。

Pure Lifeはインターネット上での活動がメインのネットレーベル。

Dreampunkと呼ばれるジャンルの音楽をメインに、アンビエントやテクノなどさまざまなエレクトロミュージックをリリースしています。


Dreampunkってなんなのさ。

このDreampunkとはなんなのか。

Wikipediaに英語版記事と有志によるDreampunk WIkiがあるのでリンクを貼らせていただきます。

Dreampunkは都市化や社会的孤立、シュールレアリズム、アジア文化、レトロフューチャーなどをテーマにした音楽ジャンルです。サイバーパンクの世界観や映画のサウンドトラックから影響を受け、要素を作品に取り入れるアーティストも多くいます。(翻訳)

Dreampunk wiki

DreampunkのPunkは音楽のパンクというより、Cyberpunkから来ているようです。
なので音楽的にはパンクミュージックの激しさではなく、スローテンポのエレクトロの要素が強い作品が多いです。

またDreampunk wikiによると、物悲しいドローンシンセサイザー、広大で無秩序な都市のフィールドレコーディング、アクティブリスニングのためのアンビエントなどがDreampunkの主な音楽的特徴として挙げられています。

もちろんこの特徴に当てはまらずDreampunkアーティストとして活動しているミュージシャンも数多くいるため一概には言えませんが、こういった特徴を持ち合わせているシーンがDreampunkです。

元々インターネット上で生まれた音楽であり、直接は会ったことのないアーティスト同士がコラボやリリースなどを多く行うジャンルでもあります。

2020年のロックダウン以降Dreampunkアーティストによるオンラインでのイベントなどが数多く企画されるようになり活動が活発になりました。

Pure Live Londonとは。

そんなPure Lifeによる、ロンドンで2日間かけて行なわれたDreampunkのイベントが今回のPure Live Londonです。

イギリスだけでなくフランスやスペイン、アメリカなど、Pure Lifeにゆかりのあるメンバーを中心に世界中からDreampunkミュージシャンとリスナーが集結するイベントです。

インターネット上のコミュニティであるDreampunk界隈のみんなが、ロンドンで実際に集まり音を鳴らす。オンラインでリリースの感想を送り合ったり、コラボまでしているのに直接会うのは今回初めてという人もとても多かったでしょう。

わたしも参加することを決めたとき、主催のPure Lifeを含めた共演者の誰とも直接会ったことがなく、正直少し緊張していました。

そんなPure Live Londnの初日はダンスメインのDJパーティーで、2日目はアンビエントメインのライブセット。
1日目は9組、2日目は10組のアーティストが出演。 2日間で全19組のアーティストが出演しました。

Day1 :: The Glove That Fits

Pure Liveの1日目はThe Glove That Fitsというナイトクラブで行われました。

ロンドンのアンダーグラウンドなエレクトロを多く扱うクラブです。

この日はR3NとCINEMA.AVがライブコーディングで映像をリアルタイム作成、フロアの壁に投影し空間演出を行なっていました。
赤い空間に色とりどりの光が映えて非常に綺麗でした。

Pure Live Festivalは音楽だけでなくビジュアルにも力を入れていて、全日程ビジュアルアーティストによる映像とともに音楽を堪能できるイベントです。


開場時間になると、このイベントのために飛行機に乗ってきたよ!というお客様が次々来場。今までインターネット越しで交流していたリスナーの方と直接お話しできて、テンションが上がります。

1日目出演者紹介

いよいよライブがスタート。全9組の出演者がプレイしました。

Ex Aquis

一番手からフルスロットルのEx Aquis。 IDMにヒップホップ、ロックやクラシックなど、クラブミュージックだけに収まらない選曲でジャンルの壁を軽々と飛び越え、途中DJブースも超えてフロアに飛び出し周りを盛り上げていきます。


Cinema.AV

次は映像にDJパフォーマンスにと多彩に大活躍のCINEMA AV。

DJプレイをしててもCINEMA AVの作る映像と同じ世界を感じます。映像とDJという全然違うことをしていても作品と選曲に共通する空気がありました。ミニマルなテクノがかっこいい。


Eulalie

次はわたしEulalieの出番。
フロアの皆が音楽に合わせて思い思いに踊っていただいているのがブースから見えて、非常に楽しくプレイさせていただきました。

わたしの出番に関する詳しい感想は、他の日程と合わせて別記事に書かせていただいています。


Cryosauna

バトンタッチしたCryosaunaはダブステップをメインにしたセットをプレイ。クラブの壁を震わせる太いベースとヘビーなビートにテンションがあがります。

Pizza Hotline

Pizza Hotlineは最新リリース”レベル選択”の楽曲をメインにしたセット。90年代のゲームに影響を受けた楽曲で会場を盛り上げていきました。


PhazmaからShampoo、Hyetalと凄腕のDJがどんどんと繋いでいって、最後のThugwidowの出番には皆さんテンションが最高潮。

翌日もあるので深夜1時くらいで解散という、クラブにしては割と早めの解散だったのですがそれでも最後の熱気はオールナイトのイベント並み。

早い時間とはいえ深夜。ホテルに帰って、翌日に備えて皆様即就寝。

一日を通して、クラブの音響がとても良かったのが印象的です。耳に痛くなく、体に心地よい大音量。 1日目からとても盛り上がり、非常に楽しかったです。


Day2 :: IKLECTIK

日にちが変わって2日目。

会場であるIKLECTIKは13.4チャンネルのサラウンド音響設備を備えたアートスペースです。

2日目は壁一面の大きなスクリーンいっぱいに映像を投影し、全10組それぞれに映像が流れました。
映像担当は初日に引き続きR3NとCINEMA.AV、そしてライティング担当のKaren Worden。

映像班の皆様。

全10時間に及ぶライブの間中、彼らがぶっ通しで映像をコントロールしていました。

サウンドチェック中の様子。

転換中にはぐにゃぐにゃと形を変える、Pure Lifeの3Dロゴマークが画面に映し出されていました。
つくづく細部まで全力で、余すところなく楽しめるフェスだなあと思います。ちなみに3Dモデルだけでなく動画を操作するソフトのインターフェースも自作したそうです。すごい。

2日目出演者紹介

The Microgram

一番手のThe Microgram。激しく歪んだシンセサイザーから綺麗なピアノ、声のサンプリングと様々な要素を使い、複雑な音の重なりで切間なく展開していくセットがとてもよかった。


Inertia eyes

Inertia eyesのドローンセット。
ノイズのようなシンセサイザーのような波の音のような、柔らかくうねる音が気持ち良い。テレビの砂嵐のような映像がキラキラのマスクに反射して綺麗でした。マスクのキラキラはスワロフスキー製だそうです。高そう。


BROKEN_CANYON

ニューヨークからやってきたBROKEN_CANYON。柔らくて力強い音に癒されました。
BROKEN_CANYONのセットはEx Aquisがピアノで客演していたのが印象的でした。コラボもよくしている2人だけあって、息がぴったりですごくよかった。
彼女の奏でるダブテクノとピアノが合わさって会場に響き、青を基調とした映像と相まって気持ち良い水の中にいるような感覚でした。


そしてEulalieの出番。

背後のスクリーンに映るのは、私の身の丈を優にこえる巨大な猫のような何か。

Eulalie

この猫はわたしのリリースとかにたまに登場する猫なのですが、まさかこんなでかい画面で出てくるとは。

演奏中は後ろを見られなかったのですが、あとで撮っていただいた写真や映像を見てわたし大ウケ。
音に合わせて微振動し、ビートに合わせて頭と尻尾をぶんぶん振る一つ目の猫は皆様の心にも残ったようで「あの猫…猫?よかったよ!」とライブ後にたくさん声をかけていただきました。

猫…?

初日と同様、私の出番の詳細は別ノートに書いていますが、13.4チャンネルのスピーカーは低音がガンガンに出ていて演奏してきて非常に気持ちよかったです。
最高の映像、最高の音響、最高の観客の皆様に囲まれて非常に楽しく演奏させていただきました。


Crosspolar

Crosspolarのセットはオリエンタルなストリングスやシンセサイザー、サンプリングなどさまざまな要素を組み合わせたアンビエント。
猫からガラリと雰囲気の変わった抽象的な映像の中、美しくてどこか切ない音楽を聴かせてくれて、これがエモいということかと思いました。


Twin Galaxxies

Twin Galaxxiesはモジュラーシンセサイザーを用いた分厚く重厚なエレクトロ。VHSのような映像と何層も重なった音が会場全体を包んで、別の空間にいるような感覚をもたらしてくれました。モジュラーシンセを操る様子が見た目にもかっこよくてテンションあがります。


そしてサプライズで放送されたwuso命によるメッセージビデオと、Sangamのストリーミングライブ。
フライトの問題などで来られなくなった二人が、アメリカとカナダから映像で参加してくれました。

wuso命

Dreampunkのプロデューサーであり、プロのeスポーツ解説者でもあるwuso命の挨拶に会場が沸き立ち、

Sangam

Sangamのトレードマークである雨の音と迫力のDreampunkサウンドが会場に鳴り響く。

実は出演者の一人CURRENTMOODGIRLが鉄道ストライキの影響で出演キャンセルになり、その枠で流れた映像でした。
Sangamとwusoも本来出演予定だったのですがフライトの問題などで参加できなくなっていたんです。二人が来れないと聞いたとき本当に残念だったので、こういった形で彼らのパフォーマンスを見ることができて本当に嬉しかったです。いつか彼らに直接会って「あの時のビデオ本当最高だったよ!」と伝えたい。


ちなみに今まで写真を載せていたメイン会場は屋内なのですが、野外にもDJブースが設営されていまして。
屋外では屋内と並行してイベントの出演者が入れ替わり立ち替わりDJをして、居心地良いソファーやお酒なんかもあり、パーティー会場のようになっていました。

屋外の様子。

CryosaunaやEx Aquisをはじめ初日の出演者たちがターンテーブルに集まって、そこに来場していたDJたちが気ままに加わり、思い思いにプレイする様子は音を楽しむ喜びに溢れていて最高だった。
時期は7月、心地よい気候の中かっこいいDJを聴きながら飲むお酒は格別だなあと、出番も終わって気分良く音楽を堪能。


日の長い夏のロンドン、まだまだライブは続きます。

Elegance of the Damned

サンバイザー姿で登場したのは、屋外DJブースでも大活躍だったElegance of the Damned。緑の雷を背景に背負い、バイザーにプロジェクターやコントローラーの光が反射してめっちゃかっこいい。サイバーパンク映画の登場人物を思わせる佇まいでした。本当カッコよかったんですよ。

Remember

激しいビートのエレクトロから優しいアンビエントまで、一つのセットでさまざまな顔を見せるRemember。
ジャングルやダブステップのビートで会場を盛り上げるRemember。

ギターを弾くRemember。

そして途中でエレキギターを弾き出したRemember。歪んだギターサウンドのデジタルロックに会場大興奮。2日目はアンビエントの日ということで全席椅子だったのですが、立ち上がりダンスする人が現れるくらい大盛り上がりでした。

場内の空気が最高潮の中、二日間のイベントのトリを飾るのはKuroi Ame。

力強いキックと分厚いシンセサイザーで会場を揺らし、美しい曲を映画のように次々と繰り出すKuroi Ame。
会場で流れた"Genesis"のかっこよさが忘れられず、帰ってからひたすらリピートしています。

Kuroi Ame

管制塔のような建物内の映像を背景に、キレキレのパフォーマンス。

後ろの映像だけでなく、マスクのLEDがPure Lifeのロゴから絵文字や人の顔、観客へのメッセージなど次々と切り替わっていくのが見ていて非常に楽しくて。
途中でエフェクトをかけたボーカルパフォーマンスありと、視覚的にも聴覚的にもバリエーション豊かで引き込まれるパフォーマンスでした。

Kuroi AmeとEulalie

彼のセットにはサプライズで私も参加しました。Kuroi Ameとこっそりつくっていたコラボ曲のお披露目です。

Kuroi Ameの美しい音に支えられてのパフォーマンスは本当に楽しかったです。人と一緒にやるって本当にいいものですね。

そしてEx Aquisもバイオリンで客演。

Kuroi AmeとEx Aquis

バイオリンの音がエレクトロと溶け合って響き渡り、イベントのクライマックスに相応しい美しさと壮大さでした。

このバイオリンといいBROKEN_CANYONとのコラボといい本日大活躍のEx Aquis。
会場からアンコールが飛んだ際にもピアノでKuroi Ameの楽曲Abandoned Ballroomを演奏。
ピアノやバイオリンを弾きこなし優雅に閉幕を飾る姿は、1日目に上半身裸で踊り狂っていた人物と本当に同一人物なのか疑いたくなる振り幅でした。

Kuroi AmeはイギリスのプロデューサーPanta RheiとウクライナのプロデューサーCMD094のデュオなのですが、今回はPanta Rheiのみの出演でした。さまざまな問題が取り除かれて、いつか彼ら二人が揃ったパフォーマンスを見られるようになればと心から願ってやみません。

感想

2日間のお祭りの閉幕。

そんな2日間にわたるフェスティバルPure Livn London。
演者としても、一観客としても非常に楽しめたイベントでした。

素晴らしい共演者の皆様、会場の皆様、世界中から集まった観客の皆様と過ごした時間は本当に夢の中のようでいまだに興奮が抜けません。

そして映像担当の皆様、10時間のパフォーマンス本当にお疲れ様でした。
アナログノイズやVHS、3Dの建造物や海に巨大猫など具象的なものから抽象的なものまで、各出演者に合わせてそれぞれ全く違う映像を用意して最高の演出をしてくれました。
もちろん会場の音響もとても良く低音から高音まで全てがクリアで立体的で、目でも耳でも、体全体で心の底から楽しめるフェスティバルだったなあと思います。

この記事を書いている今も、本当にいいイベントだったなあと何度も何度も彼らと過ごした日々を思い出しています。

Pure Liveの出演者、そしてレーベル周辺のリリースを聞いていると本当に多様で。
今回のイベントに参加し、改めて本当に多様なバックグラウンドと実験精神に溢れているシーンだと実感しました。

Dreampunkとは何かと質問されたら

インターネットで生まれ、世界中に広がっていくDreampunkの輪。Pure Liveはそんな彼らの活動が現実へ繋がる流れを感じました。

最初に挙げたように日本文化やウォンカーワイをはじめとしたアジアの映画、サイバーパンクカルチャーから影響を受けたビジュアル面での共通項だとか。
雨の音や深いリバーブのような音響的な特徴だとか。
要素をいろいろあげることはできるのですけれど、これがDreampunkだ!と言い切ることで「いやいやこの人はどうなの?」ってまとめきれなくなる個性的なアーティストで溢れてるんですよね。

アンビエントやIDM、ロックにダンス、ボーカルありのポップス。
そういった多種多様な音楽的バックグラウンドによって生み出された音楽が"Dreampunk"という言葉で繋がり、一つのシーンとして成立している様子は本当に面白いと思いますし、DJ/ダンス主体の1日目とマシンライブ/アンビエント主体の2日目という全く異なる雰囲気のイベントを一つのフェスとしてまとめ上げることができたのもこのシーンの寛容さゆえだと思います。

彼らの音楽を一言でまとめることは難しい、でも作品を聞いたとき共通する何かがある。ジャンルがこういう状態の時って本当に面白いと思います。そういった面白い音楽の溢れる場所に参加できたこと、そして迎え入れてくれた彼らの優しさに心から感謝します。

Pure Lifeがこのフェスのために出演者の曲をまとめたDreampunkなSpotifyプレイリストを作ってくれていますので是非。


このPure Liveを含め今回イギリスで行った3都市5箇所でのライブ全体をまとめた動画を作りました。

会場の雰囲気など文章で伝えきれなかったPure Liveの空気が、こちらの動画から伝わればなと思います。

この動画後半で取り上げているPure Live以外のライブも含めた、わたしのイギリスライブ全体の思い出についても執筆中ですので、また近日中に公開できればなと思います。
(追記 : 公開しました。)

8月に日本に帰ってから2ヶ月、出演者のアルバムを聴きながら彼らと過ごした1週間を思い返しています。
帰宅してから二ヶ月の間、リリースなどでそれなりに忙しくしていましたがやはり彼らと過ごした日々が忘れられず。皆でPure Live Japanをやろうよ!なんて話をして盛り上がっています。皆さん日本好きだからね。

みんなと再開して、楽しい時間を過ごすことを夢に見て。


読んでいただきありがとうございました。

写真 : 
VirtuaLuminPure LifeQuantum EchoRememberCryosaunaTom Baker


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