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臨床現場における医師のコミュニケーション|がん患者さんとの信頼関係構築 PART3

製薬企業向けマーケティング支援を行う株式会社ユカリア データインテリジェンス事業部の城前です。

乳がん患者さんの実症例に基づいたインタビューから医師のリアルな意見を聞いた、弊社主催ウェビナーのPart3「ステージ別の告知における臨床の実際」についてご紹介します。


ウェビナーの概要

実施日:2024年2月27日(火)
演題:臨床現場における医師と患者さんの コミュニケーションをひも解く     ~がん患者さんとの信頼関係構築~
演者:坂井 威彦 先生
    (公益財団法人がん研究会有明病院乳腺センター副部長)

  • Part1 乳がん患者さんの自覚症状と受診のきっかけ

  • Part2 家族背景とキーパーソン

  • Part3 ステージ別の告知における臨床の実際

  • Part4 遺伝子検査と化学療法

  • Part5 メンタルケア・他科連携・製薬企業への期待

前回までの記事Part1・2もぜひお読みください。

告知におけるバッドニュースの「伝え方」や「伝えるタイミング」は、患者さんの治療への姿勢や予後に直結します。
医師はどのような情報に着目し、どのように考え、患者さんへの個々の対応を実施されているのかをお話しいただきました。

記事末尾では、MR向け研修などに活用いただける情報のご案内も記載しております。
より良い医療の実現に向けて、少しでもお役に立てれば幸いです。

症例|家族歴のあるトリプルネガティブ乳がん

坂井先生へのインタビューにあたって使用した症例は以下の患者さんのものです。弊社の保有する電子カルテデータベース「ユカリアデータレイク」を元にしており、定性的に記載されたテキスト情報も豊富に含むため、告知における実際の診療の流れも抽出することができます。

年齢/性別 
 
50代/女性(診断時)
ADL/IADL
 
自立
家族背景
 
夫:自営業
 長男:10代
 夫両親:遠方在住、本人両親:80代 子守は困難
家族歴
 
姉:乳がん

■治療説明

電子カルテの医師所見からは、患者さんの現状や治療説明について以下のような記載がみられました。

右乳房のしこりは乳がんで、脇のリンパ節も転移している。
トリプルネガティブ乳がんというあまりタチは良くないタイプ。右乳房から腋窩リンパにがん細胞が流れて行っているので、 小さい病変がどの程度動くか。
まずは手術というよりは抗がん剤治療。術前化学療法の適応で免疫チェックポイント阻害薬+古典的抗がん剤(=細胞毒性薬) となる。細胞毒性のみならず、免疫チェックポイント阻害薬の副作用も加わるので、治療リスクは上がって……(中略)…… 早期発見、早期治療を心がけるが、完全にコントロールできるという保証はない。リスクを背負って頂く必要はある。
家族歴あり、BRCA変異の検査が望ましい。家族性のものゆえ、家族の了解が前提。陽性の場合、術後の治療選択肢が増えるが、血縁家族には心の重荷となる可能性あり。

■ 受け入れ

また、治療説明後の患者さんの受容の状況については、以下のように書かれていました。

病状説明を受け、乳がんで他界した姉の病状を看てきたことや子ども (8歳男の子) のことについて不安を聞かれ、 涙を流される姿は見られるものの、 治療に関して受け入れ、 子どものことを考えて「息子が学校に行っている間に治療を済ませたい」と希望されるなど、治療に前向きであった。BRCA遺伝子検査についても理解され、受けるとともに、「疎遠になっている姉がいるが、これを機に話してみようと思う」と積極的であった。

■治療方針

なお、その後に行われた初期治療については「術前化学療法で免疫チェックポイント阻害薬に古典的抗がん剤/BRCA実施」とされています。

坂井先生による解説

上記の症例をもとに、坂井先生より「告知」について、ステージ別に解説いただきました。

初期乳がんの告知

  • 初期治療を行う段階では「死の宣告」のような形式にはならない

  • 適切な治療を行い、共に頑張っていく旨を伝える

■ 初期乳がんの告知
僕たちが多く日常でやっている告知は「初期治療を行うときの告知」です。

基本的には5年生存率も9割超えるがんなので、いわゆる死の深刻な告知ではないことが多いんです。基本的に治るがんということですね。

適切な治療をこれから一緒にやっていくこと、一緒に頑張っていきましょうっていうことを伝わるような告知のしかたを意図しています。 

進行乳がんの告知

  • 告知の場を「セッティング」する

  • 患者さんにはキーパーソンと一緒にその場に来ることをお勧めする

■ 進行乳がんの告知
それよりも進んでステージがもうちょっと高いようながん、若いとかステージ4というような患者さんに、いわゆるバッドニュースを告知しなければいけないような時には「場のセッティング」をします。

誰かキーパーソンを一緒に連れてくることを勧めたり、条件があります。もしそういうことを告知しなければいけないことがわかってるんだったら、セッティングについては重要視します。

状況自体はいい状況で見つかる人もいれば、少し進んだ状況で見つかる人もいらっしゃるんですけれども、基本的には今の現状を淡々と伝え、それに対して適切な治療をやっていくことです。

乳がんは根治を見込めるがん腫でもありますので、適切な治療を適切に受けていってもらえるように根治を目指す意識を共有できるような話をするようにしてます。

受け入れに時間がかかる場合

  • まず外来の看護師に対応を依頼し、サポートしてもらう

  • 次の段階として、腫瘍精神科医やカウンセラーに、患者さんが治療に前向きになる手助けをしてもらう

もちろん時間がかかる人もいるし、サポートが必要な人もいます。

状況によっては外来の看護師がまず最初にサポートします。

次の段階で精神科の先生やカウンセラーの人たちに入ってもらいながら、だんだんご自分の病状を受け入れるまでに少し時間がかかるので、そういう時間を作りながら治療に対して前向きになっていってもらえるようにやっています。

実際にユカリアデータレイクの中の電子カルテデータにも、様々な多職種連携についての記載がみられます。

まとめ

乳がん症例に基づいた医師インタビューのPart3をお送りしました。
臨床の実態を知る一端となれば幸いです。

次回Part4では、遺伝子検査と化学療法についてお伝えします。


ユカリアでは、
独自の電子カルテデータベースと専門家(医療従事者・アカデミア)ネットワークを強みとした、製薬企業様のマーケティング・営業活動をご支援する調査・コンサルティングを行っています。

■ 疾患領域の例
糖尿病、慢性腎臓病、心不全、リウマチ、消化器癌、乳癌、前立腺癌、肺癌など(応相談)

■ 活用例|MR研修

  • MRが医師とのディスカッション時に論点とすべきポイントの導出

  • 医師の思考のインサイトの探索

  • 薬剤の処方阻害要因となるポイントの抽出

■ 活用例|医師インタビュー
内科専門医、A薬・B薬を両方処方された経験がある医師に①A薬剤処方のネガティブ因子あり、②B薬剤のネガティブ因子なしの症例を提示し下記をヒアリング

  • A薬を処方する理由/しない理由

  • B薬を処方する理由/しない理由 など

詳細や事例にご関心のある方は、以下までお気軽にお問合せください。

株式会社ユカリア データインテリジェンス事業部
お問合せ窓口メールアドレス:pharma.biz@eucalia.jp