#24 医療従事者じゃない人たち
「医療従事者に感謝を」
このフレーズを何度聞いたことか。
この3年以上にわたる大騒動の中、世の中が日常に近づくように働いた人は、病院の人だけではないのです。
病院で働く人以外にも、他に感謝を向けるべき人はたくさんいました。
例えば、検査機関で働く方。
今では検査キットもだいぶ手に入れやすくなりましたけれどね。
陽性なのか陰性なのかは、検査をする人がいないと何も始まりません。
まさに縁の下の力持ち。
私が保健所で働いていたとき、患者さんから採取した検体(だ液など)を衛生研究所に送って、検査を頼んでいました。
ですが陽性者が増えたときは、民間の検査業者さんにもお世話になりました。
毎日非常に多くの検査をしてくださり、本当に助かりました。
陽性者を病院やホテルに連れて行く運転手や、食品の宅配をする方もいました。
療養用のホテルを貸し出してくださった事業者の方も、忘れてはなりません。
生命保険会社も、以前は陽性者から保険の請求が殺到して大変だったと聞きます。
陽性者に直接関わっていなくても、大勢の人たちが、ここ数年で急速に当たり前となった生活様式を支えてきました。
パーテーションやマスクを生産、販売する企業の方。
テレワークの普及のためにシステムを開発する方。
本当にいろいろな業種の方が、3年以上もの間、長い長い綱渡りをしてきたのです。
県職員たちは「医療従事者に感謝しましょう」と、判で押したようにアナウンスしていました。
世間的には医療従事者扱いでない私たち保健所職員にとっては、ただただ、虚しく響くばかりでした。
よその県のとある保健所が多忙でパンク寸前、という趣旨のネットニュース。
そこについたコメントは、
渦中にあるにもかかわらず、感謝されるどころかこんな言葉を浴びせられる。
我々は何なのだ。
その場にいるわけでない、何も知らないアンタに、なんでここまで言われなきゃならないんだ。
しかし、わかる人はわかってくれました。
仕事で関わった病院の職員の方、警察の方、窓口に来た住民の方、さまざまな方から
「保健所さんも大変でしょ…」との言葉をいただきました。
マスコミでもまれに、本当にごくまれに、保健所を応援する報道をしてくれることもありました。
上の記事では、
と書きました。
ですが正直に言うと、心の奥底では、やはり応援してほしかった気持ちもありました。
「形だけの応援はいらない」という意見もあるでしょう。
それでも、ネット上から野次を飛ばされるよりは形だけでも応援された方が良いに決まっているじゃないですか。
元職員という立場から応援をお願いするのも違うなと思い、本心を封じ込んできたのです。
話がそれましたが、保健所の感染症絡みの仕事は、今後は減っていくことでしょう。
もともと、職員たちの奮闘を知ってもらいたくて始めたこのブログもどき。
その役目も、これで終わりなのでしょう。
しかしながら、まだ全てが終わったわけではありません。
この社会を支えるために闘う人たちは、まだたくさんいます。
大混乱の中、何だかんだ言いながらも(表面上は)平和な日常生活を送れてきたのは、そういった人のおかげでもあります。
「感謝を」だとなんだか仰々しいと感じるときは、せめてねぎらいの言葉をかけたい。
医療従事者じゃないすべての人にも。
心からの「おつかれさま」、を。