スリルミー

初演の頃から話題になっていたスリルミー。昨日初めて観劇。二人だけのミュージカル。内容物はここで書くのもおぞましい犯罪が題材。事件をモチーフに小説、ヒッチコックの映画化など様々な形の表現が試みられている。それはスリルが欲しかったと言う動機にあるようだ。そして少年同士の愛。事件は富裕層の小学生が誘拐され殺された。スリルミーの舞台は音楽はピアノの生演奏だけ。事件を起こした当時十代の未成年の犯人が30数年間囚われの身でその仮釈放の審査をするという形で始まる。成河私と福士誠治彼の組合せに興味が湧き何とか追加公演をゲットした。成河が仮釈放の尋問を受ける私。過去をの私と共に蘇る彼が福士誠治。中谷美紀主演の「黒蜥蜴」で成河を観たときにはさほど印象に残らなかったのだが。

さて二人の出会いはお互いにお金持ちの坊ちゃんで幼なじみ。そして私に取って彼は特別の存在。成河の存在感と圧倒的な演技力と人の心を酔わせる歌声をオープニングでガーンとやられてしまう。

冴えない中年の囚人私は過去を語り出す。一瞬照明が暗くなり上着を着替えた私が舞台に戻って来ると十代の臆病な青年として立っている。そこに背の高いハンサムな彼がやって来る。彼は私を無視してしばらくは会えていない。私は彼に元の間柄に戻りたいと懇願する。彼はいきなり私を後ろから抱きすくめ「こうして欲しいのか」と濃厚なキス。客席はストーリーをよく知ってるのだろう。コトリとも音を立てずに静かに見守る。

こんな二人のやりとりから私の気持ちを利用して彼はだんだん極悪な犯罪に走っていく。

私は止めない。怖がる振りをしながら彼の言うとおりに犯罪を手伝う。殺人の罪が暴かれた時に私は彼を自分一人の物にするために犯罪の証拠と共に自首。

成河の豊かな表現力と美しい歌声。二人だけのミュージカルは胸くそ悪いストーリーなのに、私の狂気とも言える愛の世界に溺れていく。苦しい恋をしたことがある人間的なら判る私の世界感。福士彼がハンサムでお金持ちの息子でしかしコンプレックスがあり現状に満足出来ない若者と言う立場。成河と福士であるが故に分かり易い。どちらの気持ちも察する事が出来る。成河の少し高めの柔らかな抜ける様な歌声から台詞。台詞からの歌。福士の硬質で豊かな歌声から怒鳴り声。イラつく台詞からの二人のデュオ。音楽劇なのに犯罪のおぞましさ、彼に粘着しまとわりつく私の恋心。牢獄では支配されてた私がいつの間にか彼を支配する。

彼はシャワールームで他の囚人に殺されてしまう。仮釈放された彼は…

ワンピース歌舞伎でエースを演じた福士誠治君がどんな風に演じるのかを楽しみに観たのだが、成河ちゃんの30数年の時を軽やかに越える演技力と歌に魅入られてしまった。素敵な役者さんを間近で観られた喜び。そんはちゃんの引き出しは広く深い。福士誠治君は想像通りの格好良さと想像を越える悪の華、クールな視線が動く度に観てるこちらまでもてあそばれる感覚。なんて良い役者に育ったんだ。

歌舞伎しか観ないと何度もあるカーテンコールが嬉しい。一度二度目は役に入っているのか笑顔無しの二人。三度目四度でようやく笑顔が、お茶目なそんはちゃんはお辞儀が前屈。客席からも徐々に笑いが。福士君もすでに退場してるピアニストを仰ぎみて、そんはちゃんにいないいないってツッコミ入れられる。

映画は重いテーマだとテーマを引きずって帰るので一人で観るのは辛いけど、舞台は良い。ラストは役者の笑顔のカーテンコールで終われる。もっと早くこういう舞台を見れば良かった。

#スリルミー #成河 #福士誠治

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