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美食空間

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ステキなレストランの話、食にまつわる全般的なことを書きたいと思っています。
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映画、ポトフ。道具が触れ合う音、素材の香り、湯気を感じながらずっと観ていたい。

映画、ポトフ。道具が触れ合う音、素材の香り、湯気を感じながらずっと観ていたい。

映画「ポトフ」を観た。いきなり巨大な銅鍋を使っていくつもの料理を淡々と作る中年の女性が出てくる。なにやらブルジョワの匂いがするキッチン。と思っていたら田舎の小さなシャトーの台所。時は19世紀末。19世紀といえば、鉄道が発達したのが半ば。ブルジョワ家庭には、レシピ本やグルメ情報などがすでに伝えられていたのだろうか。シャトーの持ち主でグルメなドダンと地元の名士たちとの会話では、アントナン・カレームの生

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君の食べているものを言ってごらん。君を当てます!

君の食べているものを言ってごらん。君を当てます!

まさか料理人と結婚するとは思わなったから、私もけっこう料理関係の本を持っていて、いざ結婚したら、相手もけっこうな数の本を持っていた!ということで、当初本棚には、同じ本が2冊並ぶ、という光景が。この本もそう。

フランス地方菓子料理クラスでは、毎回復習テストをする。いずれもカンタン。だって3つから選ぶんだもん。無記名、提出なし。自分で理解できていればよい。

ということで、今回の問題1は、サヴァラン

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クリスマスがクリスマスになった理由

クリスマスがクリスマスになった理由

フランスのクリスマスは、どんなに遠くに住んでいても日本のお正月のように、みんなが集まる日。ブルゴーニュの友人の家のクリスマスに招待されたことがありますが、すごかったです~。20人くらい集まったかな。たくさん、そして延々と食べます~。こっちは、フランス語もしゃべらなきゃならないし、食べなきゃってんで疲れました~(笑)。

メインは、七面鳥の栗詰め。フランス語で七面鳥をダンドと言い、Dindeと書くん

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サロンのお菓子、フリアンて?

サロンのお菓子、フリアンて?

サロンということばがありますが、サロンはもともと女性が主催していた会で、芸術家や作家、当時の流行職業の人たちが集まって議論を交わしたり、朗読したり、演奏したり多岐に渡っていろいろ披露されていた場所です。

有名なところでは、17世紀サブレ公爵夫人のサロンというのがあり、そこで出されていた焼き菓子が美味しかったとかでそのクッキーをサブレと呼ぶようになったという説があります。これとは別にノルマンディー

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淡雪と浮島!?

淡雪と浮島!?

先日フランスお惣菜クラスのデザートで、ウッフ・ア・ラ・ネイジュを作った。言ってみれば淡雪。イル・フロッタントとどう違うんですか?という質問あり。うーん、イル・フロッタントはイル(島)がフロッタント(浮いている)から浮島なのよ。

卵白の大きな塊が液体(アングレーズソース)に浮いているイメージ。どちらもパリのビストロの伝統的なデザートでよく見かける。

でも、日本ではあまり食べたことないかも?初めて

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フランスバターの王様は5銘柄。エシレは何が良いのか?

フランスバターの王様は5銘柄。エシレは何が良いのか?

フフランスのバターはすべて発酵バターである。かつて農家ではバターを作っても冷蔵できなかったので、バターも自然に発酵していた。しかし、牛乳を殺菌する現在の製法ではその香りが失せてしまうので、わざわざ乳酸菌を添加してバターを発酵させて、風味と香りをつけるのである。

そんなフランスのバターの中でも政府から原産地呼称名所A.O.C.(現在はA.O.P)を与えられている王様バターたちが存在する。それは5銘

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サヴァラン作ります。何を食べているか言ってごらん。君を当てよう。

サヴァラン作ります。何を食べているか言ってごらん。君を当てよう。

Dis-moi ce que tu manges,je te dirai ce que tu es.何を食べているか言ってごらん。君が何者であるか当てよう。

明日からのベーシッククラスは、サヴァランを作ります。シナモン、丁子、カルバドス風味のシロップ。シロップにお酒混ぜても生地に染み込み量はほんのわずかになってしまうので後でかけますが。当てよう、の名言を収めたBrillat Savarinの著書

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中谷美紀さんのオーストリア滞在記は、気づき、癒し、そして共感の内容だった!

中谷美紀さんのオーストリア滞在記は、気づき、癒し、そして共感の内容だった!

ある日偶然、中谷美紀さんがフランス語でスピーチをしているYouTube を見つけて目が釘付け!美しい発音で紙も見ないで、長い文章を女優さん独特のニュアンスを醸し出しながら、それはそれは素晴らしかったのです。何者さま?と思っていた矢先に見つけたこの本を読んで納得。20代の頃は、パリにアパルトマンを持っていて日本と往復していたとか。なるほど〜です。

この本は、彼女が運命の悪戯でウィーンフィルのヴィオ

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食べるチョコレート以前のチョコレートは、どんなものだったのか?

食べるチョコレート以前のチョコレートは、どんなものだったのか?

今年パリでは、コロナ後、普通にSalon du Chocolatが開催されたが、いないのは日本人だけとパリの知り合いからメールが来た。

そこで、ショコラに思いを馳せ、こんな本を読んでみた。

「チョコレートの歴史」(人類学者でもあり、食物史研究家、アメリカ人のソフィー・D・コウさんとその夫が著者)

大航海時代にスペイン人によって発見されたアステカ帝国やマヤの民族は、カカオとどう向き合っていたの

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シュー菓子に見る、フランス菓子の発展の仕方。

シュー菓子に見る、フランス菓子の発展の仕方。

久しぶりにクッキーシューを作った。上にかぶせる生地の配合は、粉10としたら、バター5,砂糖5のいわゆるスタンダードなシュクレ生地である。

今フランスで流行っている日本のクッキーシューのまねっこ(だって日本のそれのほうが早くから作られていたから)の上にかぶせる生地は、クラックランと呼ばれ、バターと砂糖が粉の8割入る。したがって、一度冷凍して半解凍状態で素早くくりぬいてさっとシューに乗せないと
溶け

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いにしえの料理に新たな息吹きを吹き込む

いにしえの料理に新たな息吹きを吹き込む

シャウエッセンとは、ハプスブルク家などが権力を示すため砂糖菓子などで食卓を飾った食べるショーの意味。何故これがソーセージの名前〜?

今週末9/10,11,12のフランス地方菓子料理教室はこのソーセージをつかって、サヴォアの郷土料理を再現。

実は、えー、もうこんなお料理作っている人いないんじゃないですか?って現地に住む友達言われ、新刊本のあの赤い本に一度載せたがやめた一品。じゃがいもとプルーン、

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明治時代の食道楽

明治時代の食道楽

なので、幕末から明治にかけて、武士だった村上開新堂の創業者が横浜の外国人居留区(ここを渋沢栄一たちは襲撃しようとしていたんですよね!)に住み込んでフランス人からフランス菓子を習ったその時から30年後に、一部の家庭でフランス菓子が作られるようになっていたのだと知ることができる興味深い本です。

これは続編らしいですが、たまたま生徒さんのお宅のお蔵で見つけたということで、きれいに保存されていました。

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いよいよフランス革命勃発!残された道は3つ。

いよいよフランス革命勃発!残された道は3つ。

いよいよフランス革命勃発!王や貴族、そうした人々の恩恵にあずかっていた修道院関係の人々は逃げなければ捕らえられてしまう。その周りで働いていた料理人や菓子職人は捕らえられたのは聞いたことがないが、働くところがなくなって困った。道は3つ。

(ストーレールには、アリババという名の菓子もある。中央)

1,親分と一緒に逃亡(例の宴会で魚届かなくて自殺したヴァテルなんかも一時逃亡していた)。

2,あきら

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なんでもない日のとんでもないお酒の話

なんでもない日のとんでもないお酒の話

結婚祝いにいただいたドンペリっていうのが、ずーっとカーヴに眠っておりまして、まあその頃は、どういう日に飲むのかも考えてもいませんでしたが、もうあれから32年も経ち、改めてミレジメ(ブドウ収穫年のこと。シャンパーニュは普通ミレジメがなく、数年分のワインを合わせて安定した味にする。ドンペリニョンは良い収穫年にしか造られないので、ミレジメがラベルに記載されているのです。で、ドンペリはモエ・シャンドン社が

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