らむね。紙芝居シアター「リス君の宝物」
以前、遊園地でエンターテイメントの仕事をしていた時。自分たちでショーの内容を考えたり、BGMを用意したり、小道具大道具を製作したりしていました。その中で、初めて、「ミュージカル」をやることになり、初回の公演は、私が脚本と音楽を担当しました。
時が経ち。遊園地を卒業、クラウンを始めて何年かした頃。イベントには繁忙期と閑散期があって、閑散期に仕事が無いことが辛くなり、家で動画を撮ってYouTubeにアップしていました。今みたいな、「YouTuber」という言葉を知らなかった時代。誰か観てくれるかなーとか何も考えずに、自己満足で手遊びや日常の様子などの動画をアップしていました。なぜか再生回数がかなり伸びたものがあり、知人がそのチャンネルを管理したいと言ってきたので、よくわからずに差し上げました。広告が付けられているので、収益化に使いたかったのかなー。私には全く入ってこなかったけど。なので、今も存在はしているけれど、私の管理下にない、自分のYouTubeチャンネル。その、幻のチャンネルにアップしていた紙芝居。遊園地で作ったミュージカルのお話を元に、紙芝居用に短く作り直したものでした。それが、7年か8年前かなぁ。ずっとクローゼットに置いてあった、その当時の紙芝居。絵が安定していないww 今もかww
その経験を思い出して、コロナ禍の紙芝居配信をしていて、その後、手作り絵本コンクールに応募もしたので、そういう「物語を作る」の原点になった作品ですね♫ では、はじまり、はじまり~
「リス君の宝物」
これは、ある森での出来事。森の中に、とっても仲良しで有名な、可愛い動物さんがいました。
いつもやんちゃで元気いっぱいのリス君。
落ち着いて見えるけど、実はうっかりが多いタヌキ君。
それから、優しいお姉さんのような、うさぎちゃんです。
ある暖かい日。風がそよそよと気持ちよく吹いていました。いつも通り、森の仲良し組で遊んでいたのですが、ふと、リス君が言いました。
「あー今日は気持ちがいいねぇ。眠たくなってきたよぉ」
タヌキ君も言いました。
「おいらも、眠くなってきたなぁ~。ふわぁ~~~」
そこで、うさぎちゃんが言いました。
「あら、あたしも、少し眠いなって思っていたの。ね、今日はとっても素敵なお昼寝ができると思うの。みんな、それぞれ、お家に帰って枕を持ってきて、ここで並んでお昼寝しましょうよ」
リス君は大賛成!
「こんな綺麗な青空の下で、ぼくのお気に入りの枕で眠ったら、すっごく気持ちいいよね!」
「そっかぁ~。リス君は、小さい頃からずっと使っている、大好きな枕があるんだったねぇ。」
「うふふふ!ずっと一緒に寝ているって、素敵ね!」
「うん!ぼく、あの枕が無いと眠れなくなっちゃうくらい大好きなんだ!それじゃみんな、またここに集合だよ!」
それぞれが、それぞれのお家へと向かって行きました。数分後、うさぎちゃんが戻ってきました。ピンク色のリボンがついた、とっても可愛い枕を持ってきました。
そのあとすぐ、タヌキ君も戻ってきました。タヌキ君の枕は、とても大きな枕でした。
「おいらも、このふっかふかな枕、大好きなんだぁ」
「あたしも、お誕生日プレゼントにもらったこの枕、大好きで、大切にしているのよ」
うさぎちゃんとタヌキ君が楽しくおしゃべりをしていると、リス君がなんだか下を向いて近づいてきました。
「リス君、どうしたの?」
うさぎちゃんが聞いても、タヌキ君が聞いても、リス君は黙ったままでした。
「う、う、う、うわーーーーーーーーーーーん!!!!!!!」
リス君が突然、大きな声で泣き出しました。
「リス君、どうしたの?」
「う・・う・・ぼ、ぼくの・・・ぼくの大切な枕が・・・ぼくの大好きな枕が・・・・・ うわーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!」
うさぎちゃんもタヌキ君もビックリして、心配そうにリス君を観ていました。
「どこにもないんだ。・・・ひっく・・・ベッドにも・・・ベッドの周りにも・・・机の下にも、床にも廊下にも、どこにも無かったんだぁーーーー!うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!」
どうやら、大切にしていたリス君の枕が無くなってしまったようです。これは大変!リス君は、あの枕が無いと夜眠れないくらい大好きなのに。
「そうだわ。リス君、今からみんなで探しましょう」
「そうだよ。おいらたちも一緒に探せば、きっと見つかるよ。泣かないで!」
「う・・・えぐ・・・ありがとう・・・」
さぁ。枕探しが始まりました。みんなで手分けして探すことにしました。
うさぎちゃんは、昨日も遊んだ、この公園の中を。タヌキ君は、リス君の家から、この公園までの道を。リス君は、もう一度、家の中を探すことにしました。
うさぎちゃんは、大きな木の陰や岩の陰を探したり、お友だちの小鳥さんや山ネズミさんに聞いてみたりしました。でも、見つかりません。
タヌキ君は、道に落ちている石や木の枝を一つ一つ動かしながら、丁寧に探しました。でも、見つかりません。
リス君は、もう一度部屋の隅々まで探しました。でも、見つかりません。
探し終えた、うさぎちゃんとタヌキ君が公園に戻ってきました。
「あ、タヌキ君。枕、見つかった?」
「なかったよぉ。どうしよう・・・。リス君、かわいそうだよぉ」
うさぎちゃんもタヌキ君も泣きそうです。そこへリス君も戻ってきました。
「ぼくはダメだった・・。見つからなかったよ・・。みんなは?」
うさぎちゃんとタヌキ君は、首を横に振りました。
「・・・・・・・。そっか・・。ぼく、帰るね・・・」
リス君はがっかりして、家に帰っていきました。
うさぎちゃんもタヌキ君も、悲しくなってきました。
「どうしたら、リス君を元気にできるかしら」
うさぎちゃんもタヌキ君も、一生懸命考えました。
「そうだわ!」
うさぎちゃんが、何かいいことを思いついたようです。うさぎちゃんがタヌキ君にそのいいことを話すと。
「それはいいねぇ!きっとリス君、笑顔になるよぉ!」
タヌキ君も大賛成!さっそく、その作戦の準備をしました。
準備ができたので、うさぎちゃんとタヌキ君は、リス君の家に行きました。
「リスくぅぅん、おいらたちだよぉ~」
タヌキ君が呼ぶと、リス君は静かに出てきました。
「・・・。あ、タヌキ君たち・・・。なんだい?・・・」
それは、あまりに元気をなくし、弱々しい声のリス君でした。
「あたしたち、リス君が、あの枕をどれだけ大切にしていたのかを知っているから、リス君を励ましたくて」
「それでねぇ。いろいろ考えてね。これをプレゼントしようと思って」
うさぎちゃんとタヌキ君は、それぞれ大きな包みを差し出しました。
「。。。え?これ・・・。なぁに?」
「リス君、開けてみて。ほら!」
リス君がリボンをほどくと、出てきたのは、うさぎちゃんの枕とタヌキ君の枕。
「え?これって・・。みんなの枕・・だよね?」
「おいらの枕。これからは、これを使えば、ぐっすり眠れるよぉ!」
「あたしの枕も使ってね!ふわふわで気持ちいいのよ!」
リス君はみるみる笑顔になって、大喜び!
「うさぎちゃん、タヌキくん、ホントにいいの?」
うさぎちゃんとタヌキ君は大きくうなづきました。
「やったーーーーー!!!!!みんなが大切にしていた枕!!!ぼく、大切に使わせてもらうねーーーー!!!!!ぼく、ぼく、ぼく、すっごく嬉しいよぉーーーーーーー!!!!!」
リス君はみんなに抱きつきました。みんなの優しさに、友情に、うれし涙を流しながら、リス君はお礼を言いました。
「そうだ!ぼくの大切なものを入れておく、宝箱に入れよっと♫」
そう言って、リス君は部屋にある大きな宝箱を開けました。
「あああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
リス君が、とても大きな声で叫びました。ビックリしたうさぎちゃんとタヌキ君は、リス君のそばに駆け寄りました。宝箱の一番上に、なんと、リス君の枕がありました。
「そうだ!昨日の夜、枕を誰かに取られちゃう夢を見たから怖くなって、朝起きた時に枕をここに入れたんだったぁー!」
一瞬、時間が止まったように、みんなは顔を見合わせ、それから、大きな声で笑いました。
「なぁ~んだぁ!!あは、あははははは」
「タヌキ君、ありがとう。うさぎちゃん、ありがとう。ごめんね。でもね、みんなの気持ち、すーーっごく嬉しかったよ!」
「大切な宝物、見つかって良かったわ♫」
リス君は、キラキラした笑顔で言いました。
「うん!ぼくの枕も大好きな宝物だけど。みんなの気持ちが。みんなのことが、ぼくの一番の宝物だよーーーーー!!!!!」
こうして、リス君、うさぎちゃん、タヌキ君は、ますます仲良しになりました。
おしまい
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