見出し画像

だらだら働くことは悪なのか

先日、先輩経営者とご一緒したときに「社長になってよかったことは何か?」という話をした。

そのときはパッと思い浮かばなかったんだけども、先日親会社の管理部門の方と会社の就業規則を作っているときに「これかも」と思った。

社長の自分はこの就業規則を破っても怒られない、ということだ。

私はこれまで、フリーランス→会社経営→会社員(派遣含む)→会社経営という感じで働くスタイルを変えてきたのだけど、会社員になって唯一困ったのが、決められた労働時間外に仕事をしたり働きすぎたりすると会社に怒られてしまうということだった(正確にいうと会社が労働基準監督署に怒られる)。

これは、別に私が働き者だというわけではなく、自分が最も生産性を上げられるのが「公私の区別なくだらだら働く」というスタイルだったからだ。

結局5年近く会社員を続けたが、最後の最後まで平日の9時から18時まで働くという時間で区切られた働き方には馴染むことができなかった。

どうしてだらだら働いてはいけないのか

だから社長になって一番大きく変わったのは、オフィスにいる時間が長くなったことだった。でも、だからといってずっと作業に集中しているわけではない。途中でネットサーフィンをしたり、SNSにコメントしたり、こうしてブログを書いたりしている(だから社員は私にお構いなく帰宅してほしいし、実際そうしてもらっている)。

もちろん経営者やフリーランスの立場なら、こんな働き方をしていても法律的にもコスト的にも問題はない。平日遊んだ分を休日に挽回してもいい。唯一問題があるとすれば社員が帰りづらくなることだが、それなら自分がオフィスを出て外で仕事をすればいいだけである。

だけど、私が会社員になったらそういうわけにはいかない。基本的には毎週・毎月働ける時間の上限が決まっているので、その時間内に収益を最大化するよう努めなければならない。

つまり「短い時間に集中して働くのが良い」という価値観は、あくまで社会の規範や資本の理論にのっとった経営側の都合によるものなのである。

もし会社側に残業代の問題も労基署の問題もなかったとしたら、本人の判断で同じ仕事を5時間で仕上げても8時間で仕上げても、締め切りさえ守ればさほど問題はないように思う。とくにクリエイティブに関わる仕事の場合は、効率の良さが利益を最大化できるとも限らない。一見ムダに見える情報収集や考える時間が、利益を生む源になることもあるのだ。

社員に「だらだら働きたい」と言われたら

というわけで、私はめでたくこの「社会の規範」を外れてだらだらと公私の区別なく働くことが許されたわけだが、自分の会社の社員に「俺、だらだら働きたいんですよね」と言われたら、なんと返答するべきか答えに窮する。

というか、実は一度面接ですごくデキる感じのエンジニアさんが来たときに、まさにこのセリフを言われたのだ。

確かにスナップマートは裁量労働制を導入しているので、出社の時間や退社の時間をずらすことは可能である。臨機応変に在宅勤務をしてもらうことも可能だ。ただ、そうはいっても残業時間がみなし分を超えると人件費もかさむし、タイムカードに深夜労働や休日出勤が続くと労基署に怒られてしまう(うちの場合その前に親会社から監査が入る)。

といって、実際の労働に即して、ツイッターをしている間やお昼寝の間はタイムカードで休憩時間を打刻するというふうにするのはあまりにも面倒くさい。

以前、エイベックスの松浦社長が「労働基準法 是正勧告」というタイトルで法律と現代の労働の実態が合っていないという不満を漏らして物議を醸していたが、私も職種によってはこの「労働時間で規制をかける」という働き方がそぐわないケースもあるんじゃないかと考えている。

とはいえ、以前のように「長時間労働が美徳」という世界に戻るのは違うし、本人が望むなら青天井に働かせて良い、というわけでもないとも思う(多くの場合、体調を崩す段階までいくと本人の判断はアテにならない)。

理想は、心身ともに健康な状態で、その人が働きたいときに働いて休みたいときに休む、というのができればいい。でも、なかなかどうして、会社という組織に属するとそれが難しい。もっとテキトーでいいのに。

どうやったらそういう世界が実現できるのだろうか?みんなが成果報酬のフリーランスになれば解決するのだろうか?

最近、ちょっと真剣に考えている(まだ答えは出ていない)。

よろしければサポートおねがいします!励みになります。