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ブラック企業の良いところ

「良いところ」というと語弊があるのかもしれないが、最近、ブラック企業っぽい働き方をしている会社がとても羨ましく感じることがある。ブラック企業が羨ましいのではなくて、みんなが主体的にブラックっぽい働き方をしているところ(おもにスタートアップ)が羨ましいのだ。

こういう会社を真のブラック企業と区別する意味で、便宜上「優良ブラック企業」と呼ぶことにする。

じゃあスナップマートもそうすればいいじゃんと思われるかもしれないが、ことはそう簡単ではない。つい最近、そのことに気づいてしまったのである。

ブラック企業の社長は「ビジョナリー」である

洋の東西を問わず、ブラック企業の社長というのは良くも悪くも「ビジョナリー」であると思う。スティーブ・ジョブズしかり、某居酒屋チェーン店の創業者しかり、ゆるぎない価値観に基づいて「このように働くべきだ」という理想を躊躇なく社員にガンガン押し付けてくる。

ビジョナリーというと聞こえはいいが、要は自分の価値観が絶対的正義であり、自分の考えに従えば社員も幸せになれると信じて疑わない独善的な人なのである。

私にはこういう考え方ができない。もちろん自分なりの信念はあるが、「いろんな考えの人がいるし…」「仕事だけがすべてではないし…」と、なんとなく自分の考えを押し付けるのを遠慮してしまう。

これを私は自分の性格のせいだろうと思っていたのだけど、よくよく考えてみるとそうでもないということに気づいた。私は私生活では、おせっかいで押し付けがましいおばさんなのだ。

ただ、仕事になるとその押し付けがましさが途端に発揮できなくなる。これはおそらく、最初に働いた会社が外資系だったことに起因しているのではないかと思う。

最初に勤めた会社がその人の「スタンダード」になる

外資系で働いたことがある方はご存知だろうが、外資系企業では採用時にかなり詳細な「ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)」というものが提示される。年齢や経験にかかわらず、基本的にはこのジョブ・ディスクリプションに書かれていること以外はやらなくても良い。

たとえば、日本の企業では当たり前に皆がやっている「新卒は雑用を引き受ける」「飲み会の幹事は持ち回りでやる」「みんなでオフィスの掃除をする」といったことも、ジョブ・ディスクリプションに書いてなければ強要することはできない。実際に「その仕事はジョブ・ディスクリプションにないので」という理由で、同僚や新入社員に仕事を断られたことも何度かあった。

これに加え、さらに私のいたIT企業はどちらもエンジニアを異様に大切にすることで有名な職場だったので、エンジニアに本業以外のことを頼むと上司にものすごく怒られた(露店の焼きそばを焼かせるなんてもってのほかだ)。「さあ、みんなで○○しましょう!」という呼びかけができないのも、このときのトラウマが大きい。

そして一般的に外資系には「ツメる」という文化がない。ツメない代わりに、突然クビになる。それがいいのか悪いのかわからないけれども、必然的に私も「ツメる」ということができない(やったことがない)。

ホワイト企業=いい会社なのだろうか

そんなわけでスナップマートは、社長の自分が言うのも変だけど、この規模の会社としてはホワイトの部類に入るのではないかと思う。私以外は全員10時に来て遅くとも20時くらいには全員いなくなるし、もちろん職域以外の仕事をやらせることも、休日に会社の行事を開催してプライベートが侵食されるようなこともない。掃除のような誰がやるのか不明瞭な作業は、いまのところ社長の私が引き受けている。

ただ、「だからいい会社なのか?」と問われると、それはちょっと違うんじゃないかという気はしている。福利厚生や労働時間、職場環境、それらはあくまでも「いい会社」を構成する一つの要素にすぎないのであって、十分条件ではないのではないだろうか。

「いい会社」は社員の人間関係が良好で濃い

じゃあ、実際のところどういう会社が「いい会社」なのか考えてみたのだけど、私が「いい会社だな」と思う会社は必ずしもホワイト企業ではないということに気づいた。

むしろ働き方でいえばブラック寄りで、公私の区別もあまりなく、良く言えば「家族的」、悪く言えば「暑苦しい人間関係」がそこにあるような気がする。たぶんネット民が見たら「うは、ブラックw」と思うような会社だ。

ただ、残念ながら私はこういう会社で働いたことがなく(強いていえば前職が近いのかもしれないが)、どうやったら職場の人と暑苦しい人間関係を築けるのかがわからない。

ましてやいまのご時世経営者や管理職を取り巻く環境は厳しく、それこそ「契約と違う仕事をさせられた」とか「しつこく食事に誘われた(セクハラされた)」とか「ちょっと注意したら会社に来なくなった」とか「上司がFacebookで友だち申請してきてうざい」とか「おばさんはインスタに来るな」とか、何かと世知辛い世の中なのである。

そんな中、社員と休日にバーベキューをしているスタートアップの社長とかを見ると「いいなぁ…」と思ってしまうのだ。別にバーベキューがしたいのではなく、休日に社員を呼び出せるその「遠慮のなさ」が羨ましい

この話にとくにオチはなく、「人は育てられたようにしか育てられない」というのは本当なんだなぁ…としみじみ思った、という話でした。

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