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はしり書き。エトブン社の文。
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2015年3月の記事一覧

一連托生。

一連托生。

左くつ下にお月様が。足指は人差し指が親指より長いギリシャ型なもので、親指に穴があくのはなかなか珍しい。
室内履きしたあと、ありがとうとつぶやきつつ左右まとめてクルリと丸めてゴミ箱へ。
ふと、右くつ下は穴あきじゃないのにお気の毒だったなと。かといって、繕うか?右だけ履くのか?と言われるとグウの音も出るか出ないか。グウ。否ですよ。
なんとなく申し訳ない気分で、もう少し深爪でもいいのかななんて、

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啓蟄。

啓蟄。

 札幌の実家で仕事の電話を受けていたらフスマの敷居に八本足の小さな黒いモノが見えた。「ひやああああ」。電話の相手は驚いていたが、もう気もそぞろである。そいつはもう干からびているようだったけど、母を呼んで取ってもらった。いい年をして年老いた母にクモを取らせる。母強し。

 3月から4月上旬。札幌の街はドロドロになる。今夜も雨が降っているが雪解けはさらにすすむ。滑り止めの砂が道路脇にかたまり、水たまり

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生クリーム奇譚。

生クリーム奇譚。

 せいぜいここひと月かふた月の話なのだが、生クリームを使った飲み物を口にするとオナカがゆるむ。きゅるきゅると。もともとお通じは神経質な方なのでゆるむのは歓迎なのだが、生クリームというタイミングはほぼ外のカフェ。もしくはコーヒーショップだ。取材時もしくは打合せ、仕事の合間といったことも多い。ただでさえ散漫な集中力の大部分を下腹部に集めなければならなくて緊張する。

 最初は乳製品過敏か?と北海道生ま

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