③シリア風バクラヴァが並ぶ街
また、バクラヴァのツイートがバズりました。一体、どれだけの日本人が、バクラヴァに飢えているのでしょう!
かく言う私も、そんなバクラヴァに飢えていた一人ですが、今回のイスタンブールで満喫してまいりました。だって、どこの街角にもバクラヴァを販売している店があり、選びたい放題なんですから!
でも、そのほとんどは、当然ながらトルコ風のバクラヴァです。上のパイ生地がパリッとして、下の生地にシロップがたっぷりと浸けてある甘〜いタイプのものです。その中には、甘さの強弱、生地の違いや素材の違いなど、店の味は千差万別。しかし、とにかく甘いものなので、日本人だと2個も食べれば充分と感じてしまいがちです。しかし、このバクラヴァの甘さが地域によって違うことを昨年4月に発見してしまったのです!
昨年、ちょっと思い立って東京23区内でバクラヴァの食べ歩きをした時に、バクラヴァが地域によって味つけや素材の使い方が違うことを学びました。しかし、日本で主に手に入るものは、甘いトルコ風のもの。そのため一部の日本人には「ちょっと甘すぎて、苦手」という人がいます。でも、その人たちに言いたい!
「甘すぎるならば、アラブ風のバクラヴァを食べればいいじゃない!」
アラブ風のバクラヴァがそこまで甘くないのは、上記の東京23区篇を読むと分かるかと思いますが、今回、実際にイスタンブールで食べ比べした結果、やはりその通りだったことが判明しました。
実際にパレスチナ人やシリア人の店で聞いたところ、ピスタチオが多いことと、シロップに漬けこまないことが特徴だと言っていました。では、このアラブ風のバクラヴァは、どこに行けば食べられるのでしょうか?それが今回の本題となります。
こちらは、前回紹介したユスフパシャのトラムの駅から徒歩20分ほどの場所にある地下鉄のEmniyet-Fatih駅近くにある Akşemsettin通りです。ある記事によると近くにイスタンブール知事移民管理局があることから、2016年頃から多くのシリア人難民がここに店を構えるようになったとありました。特にダマスカス出身の方たちが多いそうです。
この通りの特徴は、前回書いた様々な国の移民が集まるユスフパシャと違い、シリア系の移民だけが集まっていることです。ですので「リトル・ダマスカス」と呼ばれたユスフパシャよりも、こちらのエリアの方が、その名にふさわしいと言えるかと思います。
10軒以上のスイーツの店があり、その半分以上がシリア風のバクラヴァを売りにしていました。店のショーウィンドーには、美しいスイーツが所狭しと並んでいます。今回、YouTubeチャンネル「Ethnic Neighborhoods」の取材では、この通りだけで一本の話を作る予定でいます。
そこでまず取材したスイーツの店が、このAbbas Oğlu。道路の交差点にあって見栄えが良かったのと、スタッフがとてもフレンドリーだったことから選びました。先ほど冒頭付近にアップした数種類のスイーツが皿に盛られた写真は、この店で食べたものです。
こちらのサイトによれば、店は25年の歴史があり8店舗展開されています。ダマスカスに元々あったのでしょうか?ダマスカス風のスイーツを提供し、イスタンブールに本店があると書かれています。
続いて、撮影したのは、こちらの「Nurettin tatlıları」と言う店。他の店に比べて、このシリアのハマの名物スイーツ「ハラーワートジュブン」を全面に出していたので、ここでそれを食べました。これは、各種チーズを織り交ぜたセモリナ粉の生地で、カイマックというクリームを巻いたものです。そこにお好みでシロップをかけて食べます。
座って食べる感じの店ではないので、お皿の盛り方はイマイチでしたが、味は間違いない美味しさ。アイスクリームも売りのようです。
実は、私この「ハラーワートジュブン」が大好物!最終日にも、1人で別のMuhtarという店で、昼食変わりに食べました。個人的には、こちらの方が洗練された感じで、生地と中のカイマックのバランスが絶妙でした。
最終日は、お土産を買いに1人でこの通りへやってきて、この上にあげたような店から5店ランダムに行ってバクラヴァを買いあさりました。それが、冒頭でアップしたTwitterのバクラヴァなのです。
日本に戻ってから、この食べ比べを翌日と翌々日にやりました。日本の猛暑で味が悪くなるのがやだったので、2日にわけて友人十数人を呼び、食べきりました。一番評判が良かったのは、甘さ控えめな「Zaitoune」。私は、この中では一番甘い「KarKar Sweets」のものが好みでした。(と言ってもトルコのものより遥かに甘くないです)
現地でも食べて見たのでわかりますが、出来立ての方が甘いです。お土産用ということや、出来てから時間がたったこともあり、甘さは現地で食べるより控えめに感じました。
そして、もちろんスイーツだけではありません。シリア料理の店や食材店、コーヒー豆販売店も、この通りの見どころです。その中でも、ダマスカスから移ってきた「Buuzecedi」という店がどうやらシリア人の間で有名だったようです。
この店は、通りすがりのシリア系米国人に教わりました。ダマスカスから逃げてきて、ここで同じ料理を提供しており、その米国人は、イスタンブールに来るとここの料理を食べるためにイスタンブールに来るんだと言っていました。故郷のシリア料理への思入れが伝わりました。
一方、私が選んだのは「Saruja」というその店に2、3軒隣にある店。バクラヴァの店で聞いた所、ここを勧められたのと、記事にも載っていたのでここにしました。
記事によれば、この店のオーナーは、祖母や母親の味を提供する食堂にしたとのこと。実際、この店は大当たりで、私が今まで食べた中東料理の中でも最高峰のものが出て来ました。
店は、人気店のため、撮影するなら朝方に来てほしいと言われたため、豪華な料理はなかったので、基本的なメゼ(中東全体で食べられる前菜)各種を注文しました。
こちらの動画は「ファッタ・ホンモス」と呼ばれる料理で、お店の人がオススメしてくれたものです。仕上げにかけているのは、ギーです。器の中には、スープ状のヨーグルトとフムスやひよこ豆が入っており、シリアの薄いパンを揚げたファッタというものが浸っています。これ一品でお腹いっぱいになり、朝食などに食べる料理のようです。私は、初めて食べましたが、感動する美味しさでした。
また、通りには、いくつもシリア人経営の食材店が並び、薄いアラブ風のパンを販売しています。こうしたパンは、最近シリアからの難民や移民が増えたことで、工場などがイスタンブール近郊に作られたようです。
2020年の公式なデータによると、トルコに360万人のシリア難民が住んでいるそうです。そのうちの多くが都市部に住み、イスタンブールには、1説には100万人が住んでいると言われています。東京に最も多い外国人が20万人くらいなのを考えると、如何にこの町にシリア人がいるかがわかります。
この通りで買い物や食事をすると、気分は確実にダマスカスになること間違いなし!シリアに行くのが難しい今、イスタンブールを訪れたら、この貴重なDamasceneのグルメを是非体験してほしいと思います。
カフェ・バグダッドさんが提案された「世界を知るための10皿」という企画に乗り、様々な国の料理を取り上げていきます。料理を通じて、移民の方々や、聞きなれない国に親しみをもってもらいたいと考えてます。今後はYouTube「世界のエスニックタウン」と連携した企画をアップしていきます。